第10章 十月十九日(土) -  3

文字数 746文字

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「どうしてわたしだけ、サンタみたいなワンピースなのよ? 二人はそんな素
 敵なの着てて、わたしだけ、みんなの笑いものにする気なの!?」

「いいじゃない、ぜんぜん素敵だって! これなら冬のパーティードレスで通
 るわよ! それにわたしたちのだって、あなたのに合わせて買ったんだか
 ら、派手ってところは変わらないわよ!」

 同期会の当日、

 美津子とゆかりはかなり早めに由子の家へ立ち寄っていた。 

 そしてそんな会話が交わされて、結果、由子は拒否できない。

 元はと言えばその六日前、直美の墓参りをした翌日のことだ。 

 その日、由子は完全なる二日酔いで、

 だらだらと昼近くまでベッド中から出れずにいたのだ。

 すると突然スマホが鳴って、出ればいつもの美津子の声だ。

「さあ早く、顔を洗って出てきてよ!」

「なに、どうしたの?」

「どうしたのじゃないわよ! ちゃっちゃっと着替えて出てきなさいよ」

 聞けば美津子は玄関前で、しっかり待ち構えているらしい。

「新宿まで出掛けるんだから、ちゃんと外行き着てきなさいよ!」

 必死に異議を唱えてみるが、所詮こうなった美津子には敵わない。

 それから一時間も経たないうちに、

 二人は最寄り駅から新宿行きに乗り込んでいた。

「まずは伊勢丹に丸井、それでダメなら、小田急百貨店に高島屋ね!」

 どこに行くのかと尋ねる由子に、

 美津子はそう言って愉快げな顔を見せるのだ。

 矢野直美についてのことは、由子のひと言から始まったこと。

 それがなければ久子の家に行くこともなかったし、

 直美の死どころか、その存在自体忘れ去ったままだったろう。

 だから由子にお礼がしたい。

 思い出させてくれて感謝していると告げて、

 同期会用のドレスを買わせて欲しいと言い出したのだ。
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