第184話 担当医

文字数 574文字

 先天性の心臓病で生まれた娘は生後5ヶ月で手術をした。
 全国から子供が集まってくる大学病院だった。大勢の子供が手術の順番を待っていた。

 担当の男性の助教授は優しかった。入院している間、いつもいた。
 朝も昼も、夜も夜中も。
 家に帰らないのだろうか? 独身なのか? 仮眠室で寝ているのだろうか? 
 心配してしまうほど働いていた。

 娘は無事に手術を終え、高校を卒業するまで、毎年検査に行った。その先生はずっと外来にいて、いつも⚪︎⚪︎ちゃん、と呼び診察してくれた。

 高校3年の終わりの頃の診察で、きっと進路を聞かれるだろうと思い、出来の悪い娘と打ち合わせをした。

 先生は聞いた。
「就職です」
「どこに?」
「……」
 卒業がやっとでした……

 あんなにお世話になって、心配かけておきながら、遊んでばかりですみません。
 今ではたくましい母になりました。
 

 妊娠した時に、やはり心配だから、大学病院で産んだほうががいいのでは? とネットで見てたら……先生は、部長になって、顔写真が載っていた。
 出世したんですね。

 結局、近くの産婦人科で、無事に出産したが。


 昨今、その大学病院の不祥事が耳に入ってくる。
 
 娘が手術前、心音を聞かせてほしい、と数人の医大生がやってきた。未来の女医さんたちは、真剣に聞いていた。
 活躍しているだろうか?



【お題】 あの人いつ寝てるんだろう
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