第113話 お付き合い

文字数 528文字

 部下の親が梨園をやっているからと、毎年頼まれ買っていた。人のいい夫は、皆に配るから3箱も。
 結構高い。りっぱな梨だ。スーパーで買う方が安い。送料も負担。重いから高い。

 なんで、毎年毎年、お付き合いしなきゃならないの? 送料くらい無料にしたら? 大きな出費なんですが。
 
 ある年の夏は暑かった。不在票が入っていたが、夜遅かったので、届けてもらったのは翌日の夜。
 暑かった。暑かった。宅配会社はどこに置いていたのやら。
 全部の梨の、芯のところに液体が溜まっていた。切ると黒ずんでいて柔らかい。一晩でこんなになってしまうのか?

 いったいどうしてこんなことに? 梨が悪いのか? 保存が悪いのか? 留守にしていた私が悪いのか? 
 もったいないがほとんど捨てた。梨代、着払い代……ああ、悔しい。もったいない。

 人のいい夫は苦情も言えず、毎年梨を買い続けた。
 不在票が入っていたときは、時間が遅くても届けてもらった。以前、こんなことがあったから、と理由を言って。

 何年続いただろう? あのとき以外は、おいしくいただいたのだが、その梨園も閉めることになり、買うことはなくなった。
 正直、ホッとした。
 送料だけでも、かなりかかったから。



【お題】 着払いで届いたものとは…?
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み