第119話 しぶとい黒豆

文字数 543文字

  友人に黒豆をもらった。
 毎年会津の実家から送られてくるのだそうだ。
 食べきれないから、去年のをくれた。
 いや、もっと前のかも。だって……

 レシピを見て、豆を戻した。煮はじめたのは夕飯の後。3時間煮ても寝る前には終わるはず。

 ところが、煮ても煮ても柔らかくならない。
 レシピ通りだ。砂糖はまだ入れてない。
 なぜ? どうして?

 きっと、古い豆なんだ。
 普通、友達には、新しい方を寄こさないか?
 煮ても煮ても柔らかくならない。しぶとい黒豆。

 失敗だ。もう、捨ててしまおうか。
 でも、それももったいないし……

 時間は過ぎる。もう、火にかけたまま風呂に入った。
 出てきて食べてもまだ固い。
 もう付き合っていられない。怒りで眠ることもできない。
 友達にこんな豆、寄こすなんて。
 
 もう、砂糖を入れた。
 砂糖を入れると、柔らかくはならないかも。
 
 もう、ダメなら捨ててやる。

 煮初めて6時間も過ぎたころ、食べてびっくり。柔らかいような、固いような。ねっとりとした感触。

 ああ、黒豆だ。あの歯ごたえ。
 今まで食べた中であれほどおいしかった黒豆はない。
 山ほど煮たけど皆食べた。市販のだと少量でも残るのに。
 
 その後、褒めに褒めたけど、2度と豆をもらうことはなかった。



【お題】  眠れぬ夜、豆を煮る
 
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み