第6話 星空を見上げたら
文字数 312文字
母は無知だった。
銭湯の帰り、星空を見上げて
「あの星は、もうないのかもしれないのよ。何十万年も前に出た光を見ているのよ」
と私が言うと、母には理解できなかった。
「そんなバカなことがあるか」
と怒り出した。
その頃から私は母親を恥ずかしいと思うようになった。
そんな母を早くに亡くした。
母の歳を越そうとしている今、夫に聞いてみた。
「死ぬ前に食べたいものはなに?」
「……おふくろの、コロッケかな、でかかった。ホクホクで」
「再現できるかな? 今度作ってみるね」
「おまえは? おふくろの味は?」
「……私も、母の作ったもつ鍋。もつとこんにゃくだけ。手抜きよ。甘いだけ。料理下手だった。あれだけは……作れないの。聞いておけばよかった」
銭湯の帰り、星空を見上げて
「あの星は、もうないのかもしれないのよ。何十万年も前に出た光を見ているのよ」
と私が言うと、母には理解できなかった。
「そんなバカなことがあるか」
と怒り出した。
その頃から私は母親を恥ずかしいと思うようになった。
そんな母を早くに亡くした。
母の歳を越そうとしている今、夫に聞いてみた。
「死ぬ前に食べたいものはなに?」
「……おふくろの、コロッケかな、でかかった。ホクホクで」
「再現できるかな? 今度作ってみるね」
「おまえは? おふくろの味は?」
「……私も、母の作ったもつ鍋。もつとこんにゃくだけ。手抜きよ。甘いだけ。料理下手だった。あれだけは……作れないの。聞いておけばよかった」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)
(ログインが必要です)