第148話 魔法の手

文字数 342文字

 おまえは冷蔵庫にあるもので料理をした。ろくなものはない。ラーメンくらいしか作らないのだから。
 玉ねぎを刻み長い時間炒めていた。炒めながらオレに米をとがせた。とぎ方を教えた。
 オレが炊いたご飯があんなにうまいなんて。
 硬くなったパンと、古い粉チーズで作ったオニオンスープ。
 オムレツに、キャベツとにんじんだけのサラダ。ドレッシングなんて買ってない。
 おまえは魔法のように味付けをした。
 古い昆布茶と酢と、健康のために飲んでるオリーブオイルで。
 褒めるとおまえは照れた。

 毎週休みの朝早くおまえは部屋に来る。
 焼きたてパンを買ってくる。合鍵でドアを開け、オレは寝ているフリをする。
 コーヒーを挽く音でおまえは起こす。  
 パンが冷めるわ……

 パンより食べたい……


【お題】 ささやかな魔法
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み