第49話 卒業アルバム

文字数 938文字

 中学の卒業アルバムの、クラスの集合写真に、それが写っていた。
 あろうことか私の隣に。
 誰が最初に気づいたのだろう? 隣の私でさえ見過ごしたものを。

 それは、あっという間に広まった。
 ふたりの女子生徒の間に生気のない男子の顔が写っていた。

 気味が悪いけど、現像ミスに決まっている。

 

 高校に入り少しして、私の隣に写っていた女子が亡くなった。心筋梗塞だった。
 若い娘が心筋梗塞?
 まだ、そんな病名を知らなかった私は、高速道路での車の事故かと思った。
 告別式では、皆が私のほうを見て、ヒソヒソ喋っていた。
 次は私の番だと。

 
 呪いとは、呪われると考えるから、よからぬ事がおきるのだ。
 精神的に弱っている、または、もともと弱い、依存的性格の人が暗示にかかってしまう。
 心霊写真をみたからオマエは呪われる、と。

 気にしない。気にしない。

 何事もなく、私は卒業し就職した。
 地味な私もニュートラファッションギャル。
 そのころ、中学の同じクラスだったS君から電話がきた。まだ携帯などない時代。
 S君は、亡くなった女子生徒のことと、心霊写真のことを聞いてきた。
「オマエは大丈夫か?」

 強烈な心霊写真を見ると、その霊とリンクして
 呼び寄せてしまう可能性があるという。しかし、誰でもというわけではない。
 波長が合うとか、霊波動が同調しやすい特定の人に作用すると考えられるわけで、それが誰なのかはわからないので、あまり見ないほうがいいと。

「わかった。封印する」
 もう、押入れの奥だし。

 そらからしばらくして、S君の彼女から電話がきた。
 S君が亡くなった。心臓病らしい。


 もうひとり、霊を呼び寄せてしまった人がいた。
 母が亡くなった。心不全で。まだ40代だった。
 私の電話を聞いていて、見てしまったのだろう。

 霊は、私のところには来なかった。
 私にも死にたい時はあった。思い出して押入れの奥から取り出し開いてみた。

 まだ、それはいた。確かに私の隣に。生気のない顔で。
 その隣の女子はすでにいない。
 私は呼んだ。声に出した。
「出てきて。私を連れて行って」

 私は波長が合わないようだ。

 何年も後に、父にアルバムを見せた。
 ボケた父に、昔を懐かしがり、思い出話をした。


Yahooの知恵袋を参考にしました。
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