第13話 憂鬱な冷やし中華

文字数 627文字

 店長は食通だった。絶対だった。
 普段は二人体制。スタッフ同士だと順番に休憩して、スタッフルームで(机がひとつあるだけ)茶を入れて弁当を食べる。
 それとかコンビニで、おにぎりふたつとおでんを柚子胡椒で。

 店長と一緒の時は外に行く。
 入った頃は順番に。
 ところが何年か経ち客も減ってくると、シャッターを閉めふたりで出ていくようになった。
 そんなことをしてはいけないが、強気の店長は社長から言われても、受話器が外れてました、とか平気で嘘をつく。社長もご存知だが、なにも言えない。

 歩いてラーメン屋で、あんかけの五目そば。定食屋でアジフライ。
 パスタ屋さんでは、パスタではなく海鮮丼。ごはんの上に海鮮と、サニーレタスが山盛り。あの味付けはオリーブオイルと酢となんだ? 真似できそうで真似できない。
 
 そして、夏になると冷やし中華。お客様に聞いたのが始まり。具沢山でおいしいと。
 歩いてふたりで行った店は汚くて、入って後悔。
 ベタベタのテーブル。あっちもこっちも片付いてない。
 服だけはきれいなおばさんがふたり。居心地悪く待たされたが、出てきたのは、最高の冷やし中華。
 ハムではなく焼き豚の千切りで、春雨ものっていた。
 ふたりとも、味には満足。
 また食べたいね。また行きたくはないけれど。

 それでどうしたかというと、電話して頼んで取りに行く。もちろん私が。
 歩いて7分くらいの商店街。トレイに冷やし中華をふたつのせ(結構重い)、炎天下、日傘もさせず、早歩きで……
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