第151話 馴れ初め

文字数 564文字

 若い頃、保険会社で事務をしていた。最初の2年は本社勤務。
 母が亡くなり、家事をしなければならなくなったので、近くの営業所に異動させてもらった。
 歩いて通える距離。
 
 クリスマスに営業所の外交員さんに、喫茶店で行われるパーティーに参加してくれ、と頼まれた。お得意さんの店なのだろう。
 最初は断った。前日も飲んで二日酔い……髪も洗わないで出勤したのだ。しかし、しつこく誘われて断れず……
 髪も服も気に入らない。おまけに帰りは雨になりそう。

 紹介された男は無口だった。何を言われてきたのだろう? こちらも頼まれて参加したのだろうか? 
 当たり障りのない会話。声だけは低音で素敵だった。出身は、秋田……

 そこから話が弾んでしまった。秋田は父の故郷。おまけに私は行ってきたばかり。女友達と恐山から十和田湖、奥入瀬、父の実家に泊めてもらい、田沢湖……
 酒が入れば話が弾む。結局、続けて二日酔い。
 帰りは私の折りたたみ傘で相合傘。
 送ったくれた彼に傘を貸し、電話番号を教えた。


 父は同郷の娘の彼氏を紹介され喜んだ。家に連れてくると故郷の話をする。酔って同じ話を何度も。
 そして、同郷の娘の彼氏の実家に付いてきた。そこで、彼の叔母が父の従兄弟と一緒になっていることがわかった。

 縁があった。結婚した。
 会々(たまたま)クリスマスパーティーにいったから。
 
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み