第140話 読めな〜い

文字数 756文字

【お題】 消えたプリン。

 2歳の孫がプリンが好きだから、来るときは作っておく。
 牛乳と卵と砂糖だけで。
 プリン型なんてないので、茶碗蒸しの器や小さな小鉢等でたくさん作る。
 40センチ掛ける20センチの天板だからたくさん焼ける。
 それでも翌日には冷蔵庫から消えている……

 消えたプリン……
 消えた、消えたプリン、消えた……おじさん、消えた……娘、消えた初恋、等々。

 消えた、という文字をずっと見ていたら、
 え? 消えるって、こんな漢字だった? とおかしな感覚が。
 何度か経験したことがある。
 子どもの頃、教科書を読んでいたときかな、文字が読めなくなった。

 これを、文字の「ゲシュタルト崩壊」という、らしい。
 たとえば同じ漢字を長時間注視していると、その漢字の各部分がバラバラに見え、その漢字が何という文字であったかわからなくなる現象である。

 ひとつの文字をじっと見ていると、その文字全体でなく、それを構成する各部分に意識が向かってしまい、全体としてとらえることができなくなってしまう。
 この状態が「ゲシュタルト崩壊」である。
 
 ああ、私がおかしいわけではなかったんだ。
 
 そういえば、ピアノを弾いていた頃、発表会のために夏の間、よく練習していた。
 発表会当日、順番前、その見慣れた楽譜が、崩壊していた。まるで初めて見た楽譜のよう。

 読めな〜い。

 あれもゲシュタルト崩壊?

 すごく不思議だった。あんなに練習したのに……
 ピアニストはそんなことないのかしら? その前に暗譜しちゃうのか……

 私が本番前に上がっていただけなのか? 


 消えた王子様、というのがあった。
 マリー・アントワネットの次男。
 ルイ17世。
 悲劇の王妃は『ベルバラ』で知っているけど、可哀想すぎる王子様。
 Wikipedia読んだだけで、心が崩壊……
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