第10話 違法でも

文字数 755文字

 私は違法なことに手を出したのかもしれない。きっとそうだ。
 でも、仕方ない。それしか方法がなかった。
 罪の意識は感じるけど、あのロッカーを開け、◯◯を取り出せば、無事終了。
 大丈夫。下見もしてある。ロッカーは引っ込んだ目立たない場所にあるし。
 
 相手からのメールは届いていた。
 コインロッカーのナンバーは0005。
 今どきのロッカーはナンバーと暗証番号がわかれば誰でも開けることができる。だから、可能なのだな。
 ここ、何十年もコインロッカーなど使っていない。
 不安はあるが。

 焦った。やはり開け方がわからない。
 焦れば焦るほどわからない。

 落ち着け。離れたところに操作する機械があった。
 タッチパネルで「取り出し」を押す。
 メールに届いていた暗証番号を押す。それから、ロッカーナンバーを。

 解除。

 ああ、こんなに手間取るなんて。

 開いた。当たり前だ。開かずのロッカーではないのだから。

 あった。
 中には◯◯と現金まで。

 大きな荷物を引きずり、駐車場へ向かう。これがまた大変だ。長い連絡通路を渡り、車を探す。
 大きなスーツケースを乗せ、発進させた。
 
 なにも起こらなかった。
 このまま無事に着きますように。

 現金は駐車料金ピッタリ入っていた。
 
 ︎

 久々の飛行機での旅行。
 羽田空港の駐車場は予約がいっぱいだった。 
 朝、早いのでバスも無理。タクシーしかないと思っていたところ、娘が教えてくれた……

 空港前で業者と待ち合わせして車を預ける。
 帰りは空港の駐車場に入れておいてくれ、空港のコインロッカーに車の鍵を入れておいてくれるというもの。
 これは違法?

「空港ターミナル前道路の駐停車禁止」プラス「空港内駐車場での車の受け渡し禁止」

 もう2度としません。
 もう2度と行けないだろうし。


お題 【開かずのロッカー】
 
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み