第92話 何個ですか?

文字数 335文字

 思えば長い人生だけど、タクシーに乗ったことは少ない。節約家だし、タクシーでの運転手さんとの微妙な気まずさが嫌で、ひとりだと、バスがなければ歩いてしまう。

 旅行先で観光タクシーを頼んだことはある。
 新婚旅行のときの萩焼の思い出。

 運転手さんに連れて行ってもらった大きな店。土産に萩焼をいくつか買おうと思っていた。仲人さんには奮発しようと。

 ところが、萩焼は高かった。
 考えて考えて選んだ花瓶。貧困のバカ夫婦には高かったのだ。
 それを……
「これ、お願いします」
 と店員さんを呼んだら、
「何個ですか?」
と聞きやがった。
 何個かって?
 1個に決まってるでしょ。こんな高いもの。

 実に不愉快だった。
 運転手さんに文句を言いたかった。
 言わなかったけど。


【お題】 田舎町のタクシー
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