第105話 朝帰り

文字数 564文字

 たぶん、終電を逃した、とか嘘をついて、


 越えてはいけない一線を越えてしまった……
 
と、後悔するわけでもなく、

 早朝の横浜で、まだ月が少し残る夜明けの空で、

 2度と戻れない 境界を越えた……
 ああ、この胸は疼いてる。

 なんて、余韻に浸っている。

 妻がいるのに……
 いけないことだとはわかっていても、
 一緒に居たい。
 妻とは違う女性に虜になってしまっている。


 しかたないね。
 妻だけを一生愛せたら悩みもしないだろうに。

 でも、それじゃあ、名曲は生まれない。


 一緒にいたい、でも僕には家族がいる。

 いけない関係なので、一緒に歩けない。
 たった一人で朝の空を眺めながら、家族の待つ家に帰っていく。

 本当は一緒にいたい。逢えないことでつらくて涙を流すが、悟られないように隠す。
 そんな日曜日の朝。

 妻と寝ていても、何も感じない。すでに隣には君じゃないと興奮しなくなってしまった。そのさみしさから眠らずに過ごす僕。



 そのうち、事業がうまくいくと、糟糠の妻をないがしろにして、愛人に金を使う。
 妻は負けじと宝石を買う。服は、すでにサイズが合わなくなった。ますます太るからますます旦那は遠ざかる。

 ある日、そんな旦那が脳梗塞で倒れた。

 さあ、妻はどうする?

 
 必死に介護するのでした。
 ブティックで暇を潰していたのに。



【お題】 終電を逃した…
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み