第129話 ひとつですよ

文字数 552文字

 2ユニットの間にスタッフルームがある。小腹が空いたときに食べるお菓子が置いてある。
 職員よりもパートが持ってくる。
 なぜ、給料の少ないパートが? なんて、ケチな私は思うのだけど、超勤の多い若い子に食べさせてあげたいのだろう。優しい。

 高卒のO君がいたときは、私も持ってきたなあ。あの子に食べさせたくて。
 O君にだけは、そっと2個あげたり。
 O君もときどき、おばあちゃんちに成ってたみかんです、とかお返しをくれた。
 5年頑張ったけど、辞めていった。ほかの職に就くから、と。

 若いH君は夜勤明けに、私のユニフォームのポケットにチョコを入れてくれた。
 なんて、いい子なの……
 結婚しました。別居婚。彼女のが稼ぐらしい。 
 H君は、窓口に異動になった。頑張って。
 
 異動の多い介護職。頻繁に菓子折りが置いてある。お世話になります。お世話になりました。
 2時間勤務の私はなかなか手が出せない。食べて、とも言われないし。
 
 でも、時々は私も旅行の土産を買ってくる。たまにだから奮発する。人数プラス多めに買うのだけど、親しいパートさんからメールが来る。
「私、もらってない」
 毎日出勤じゃないからね。余っているから2個食べた人がいる。名前書くわけじゃなし。
 問い詰めるわけにもいかないでしょ?
 

【お題】 おやつどろぼう
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み