第86話 体感温度

文字数 570文字

 おはよう、寒いね、と皆が言う。ロッカーで着替えながら。
 私は半袖のポロシャツのままエレベーターに乗る。
 寒くないの? と聞かれる。皆、半袖の下に長袖のヒートテック。上着も着ている。
 
 もう、十年くらい寒さを感じない。ホットフラッシュは治ったけど、暑い。

 家に帰れば、南向きのマンションなのに暖房が付いている。
 夫婦で感じる温度が違う。

 姉のところは逆だ。姉は寒さで指先が紫色になる。義兄は靴下も履かず窓を少し開けている。だから、一緒に食事はできない。時間をずらす。

 同居していく上で最も重要なことは体感温度。

 どう締めくくろうか?

 お題から、昔読んだ本を思い出した。検索に時間がかかりましたが、ウイリアム・アイリッシュの『聖アンセルムス913号室』

 サスペンスの名手C・ウールリッチ(W・アイリッシュ)の短編集。ホテル<聖アンセルムス913号室>の宿泊者には自殺が多いことから<自殺室>と呼ばれるようになり、ホテルの雇われ探偵が調査を始めた。
 謎の913号室は<殺人室>との確信をもち、犯人を追いつめていく物語。
 名作『幻の女』が発表される前の品。
 
 連続殺人なんですけど…‥(ネタバレ)
 結婚したばかりの幸せそうに見えた裕福な男だけは自殺だった。
「向こうは涼しいから」
という書き置きが。

 奥さんと体感温度が……?


【お題】 寒い朝のこと
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