第40話 またもや転生?

文字数 596文字

 1998年夕方、急な坂をジョギングしていたら、坂の頂上にピンクのスーツを着た、髪の長い女が後ろ向きに立っていた。

 ああ、待っていたのか、俺を?

 近づくと、突然女の首が180度後ろに倒れ、体は前を向いたまま、俺を目掛けて走ってきた。

 あれは……都市伝説の坂道の女!

 坂の上から、スーツを着た女が何人も追いかけてくる。凄いスピードだ。
 
 だんだんせまってくる。
 俺は恐ろしくなって一目散に逃げた。坂道を転がり落ちた。 
 

 声が聞こえてきた。

「かつて、あんたはいい身なりで、ホームレスに金を投げつけていた。
 言われただろ?
 今に痛い目みるぞ、って」

 振り向くと、スーツ姿の女たちは消えていた。
 俺の住んでいた街も消えていた。
 豪華なマンションも。
 
「良い学校を卒業したんだってね、でもわかっただろ、あんたはおだてられていただけさ。
 路上での生き方なんて誰からも教わらなかったが、あんたは今、その生活に慣れなくちゃいけない」

 そこは、古い町並み。スマホもつながらない。車も走ってない。
 季節も違った。
 寒い。寒い。木枯らしが舞う。

 俺は歩いた。食べ物を求めて。
 道行くものは軽蔑した目で俺を見た。
 かつて俺がそうしたように。小銭を投げつけてきた。見たこともない硬貨だ。

 やがて教会が見えた。
 俺はようやく古びたコートと、粗末な食糧にありつけた。

【お題】 セレブ生活に明け暮れた俺が、転生したら超貧乏
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み