第84話 高価すぎて

文字数 615文字

 小学校高学年くらいだと思う。皆、同じ鉛筆を使っていたのにある日、変化が起きた。
 いちばん先に持ってきて自慢したのは誰だろう?
 産婦人科医院の息子か、薬屋の娘か、工場の娘。
 1本10円の鉛筆から、50円の高価なものに変わりすぎ。

 クラスで2割くらいが持つようになった。皆見せびらかす。50円の部類だと。子ども心に感じた貧富の差。
 子ども心にわかった。ねだれるものではない、と。

 だから、成績は負けたくなかった。10円の鉛筆でも。
 進学教室に通っている子にも。



 1958年、東京タワー竣工と同じ10月に、国産最高級鉛筆uniが発売された。商品名uniは、「ただ一つの」を意味するuniqueから名づけられ、鉛筆1本10円が一般的だった当時、1本50円という高価格だったが、予想を上回るヒット商品となった。
 輸入品の鉛筆と同じ1本50円で発売
 当時、普通の鉛筆1本が5~20円。大卒初任給は約13,500円。
 はがき1枚5円、かけそば1杯25円、週刊誌1冊30円、コーヒー1杯が約50円という時代だった。
 世界で最高のなめらかさを持つただ一つの鉛筆−uni
「Bの黒さでHの硬さ」という最高の品質と共に、軸色に、通称“uni色”と呼ばれる、日本の伝統色であるえび茶色と高級感のあるワインレッドを掛け合わせた、世界中のどこの国のどの鉛筆にもかつて見ることのできなかった色彩に決定した。(uniの歴史より)


【お題】 みんな持ってるから買って
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