12話:ナギが見た夢!ブリジスとドロアの遊び!!
文字数 3,714文字
う…。拙者は寝てしまったようじゃ。
はて、ここは何処じゃ…。
……。
そうじゃ!思い出したぞ…
あの背格好は拙者じゃ。就活中だったなあ…
この世界では和服を着ていて「和」のイメージ、そしてレプリカの剣を持っているが
彼は現実世界からやって来た人間。言葉も拙者や、語尾に「~ぞ」「~じゃ」を付けて
色んな人と接しているが、それも趣味の一つに過ぎない…
そう本来の彼は就活中。そんな時に何かに導かれてこの大陸「クロスウッド」にやって来た。
****
ここは現実世界。彼は今日もスーツをビシッと決め
二、三軒梯子しながら元気に面接に向かう。その帰り道の出来事…
あっ、前受けた所からメールが来た。
でも、この辺だと誰かに見られる。何処か無いかな…。
人気【ひとけ】の無い路地裏っぽい場所に移動して、
携帯のメール受信箱に届いた1通のメールを見る。
(メールの内容)
この度は、××会社への御応募誠に有難うございます。
先日の採用面接の結果につきまして、厳正に審査をした結果、誠に残念ながら
今回は採用を見送らせて頂くことになりました。理由として、採用予定人数が若干名の中
多数の応募を頂いたので、御希望に沿う事が出来ませんでした。
何卒ご了承下さいますようお願い申し上げます。
もう嫌になってくる。
要するに認めて貰えていないという事…
自分の事をもっとよく分かってくれる人に出会いたい…
自分の不甲斐なさに涙を少しながら、
家に向かう途中にある公園内のベンチに座り、鞄の中に入っている飲み物をゴクリと飲み干す。
せっかくだったら、遠い場所に行って自分の好きな事やりたい…。
武将や歴史が好きだから、和装して…。
まあ、刀は怖いからレプリカで…。それで…
拙者とか其方って言っちゃったりして…
わ、私か…。悪い、今は名乗る事が出来ない。
"就活"というモノがよく分からないが、この世界は
そんなシステムはない。ただ一つ困っている事があって…
どんな困難にも立ち向かえる人を探している。君はどうかな? 悪とは戦えるかい?
就活しなくてもいい世界…
あっ、はい!拙者、あっ…自分はその世界を冒険してみたいです。お願い出来ますか?
突如として目の前に所狭しと煙が発生し、公園一帯を包み込む。
不思議な煙…、あの先に行けるんだよね…。
もう退屈な就活なんてしなくていい… でも良いのかな?
このまま帰れない可能性あってあるよね。
それは君次第じゃないかな。
この世界に来て、色んな人に出会って、色んな事を経験する…
そしてこの時代に戻って来た時にはそれが証となり、自分の糧になる。
そう考えたら一石二鳥じゃないかな。俺はそう思う…
公園内に発生した煙の中に、自信に満ち溢れた表情をして入って行く。
そして少しずつ彼の背中が奥へ奥へと消えて行く。
(君とは何処かで会えそうな気がする! 待ってるぞ…。)
****
シャランアゾール BAR「ラブリーデイ」
女性陣はちょっと無関心な為、違う施設を見て回っているが
男性陣は全員揃って何か飲んでいる様子。
ただオルガは未成年の為、酒は飲めずに店のママに可愛がられているが
酒を少量残した状態で寝ているナギの事も気にしている。
おーい、ナギー。
起きてよー。何かいい夢でも見てるのかな…
【ドロア】
もう酒の途中じゃないのん。
酒を残すなんて、もったいないのん…
ヒョードちゃん…、起こすからナギちゃんの首元を噛むのよ!
えーっ!!!
な、何で俺がナギの首元を噛まないと行けないの?
当店のルールよ。
酒を提供している以上、全部飲んでくれないと経営に困るのよん。
それにナギちゃん、お酒を全部飲まないで寝ているという事は、
何か辛い悩みがあるっていう事なのよん。
私の長年の勘っていう奴よん、信じなさい…
おいおい、首元を噛むなんて普通男同士でやるか?
確かにこの店あった場所、少し雰囲気が違ったような気がしたが…
この通りは特別なのよ!!
もう誰もやってくれないなら、ドロアがやるから見ているのよん…。
噛み付くっていうのは…。
ドロアママはまるで蜂が花の蜜を吸うかのようにナギの首元に狙いを定め、的確に噛み付き始める。
そしてウワッ! とほんの一声を出して飛び起きる。
彼の顔は今までに体験した事がないような表情をしていた。
噛まれたではないか…!
あっ、さっきのは夢だったのか…。
なかなか起きなかったからヒョードが心配していたんだぞ…。
まあまあー。落ち着いてっ!
せっかくドロアママさんに会えたんだから
もっと飲んでいこうよー。ママー、ミルキーウェイっていうお酒あるかなー?
あらー。ブリジスちゃん、よくそのお酒を知っているわねん。
先日入荷したばっかりだからまだあるわよん。
えっ、ブリジスさんってお酒飲めるんですね!
一瞬、未成年に見えましたけど、おいくつですか?
僕は24歳だよー。
このような顔立ちしているから未成年によく間違われるんだよー。
ここにいる男性陣の年齢を低い順から並べると
オルガ/16歳
ライト/20歳
ルドス/21歳
ナギ/22歳
ヒョード/23歳
キルディー/23歳
ブリジス/24歳
こんな感じになる。顔立ちやルックスからしたら
意外なキャラクターが年上、あるいは年下に見られるが、男性陣で一番驚きを隠せなかったのは
ナギの年齢だったようで、もっと年上だと思っていた様子。
ってか、ナギさんの年齢って22だったんですね!!
失礼ですけど、30以上だと…。
えっ、拙者が30以上に見えたのですか? ちょっと心外です…。
でもこのような頭髪しているから、そういうイメージがあるのか…
もうっ、ちょっとドロアママっ…
ペタペタ触らないで下さいよ。体中から汗が止まらないよ…
あら。私可愛い子が好きなのよん。
ブリジスちゃん、私とキスしない?
ちょっ、ちょっと…ブリジスさん。
いくら貴方と言えども、私達の目の前でキスをするのは如何なものかと…
大丈夫だよっ、キルディー。このような方は大抵、
キスとボディタッチで交流するって何かの資料で見たことあるんだー。だから…
ブリジスはドロアママに近付き、皆の前で堂々と口にキスをする。
未成年のオルガの目元をライトが手で隠す。
さすがにまだキスの光景を見るのは早いと察した様子…
これもコミュニケーションの1つと思えば良いんだよっ!
どう、ドロアママ、満足出来たかなー?
満足よ♡
良い匂いだったわ、ブリジスちゃん。
ありがとね♡
ドロアママは、BAR「ラブリーデイ」に置かれた柱時計の時刻を見る。
現在の時刻、20時45分。酒を飲んだり、ドロアママとの交流で
外が暗くなっている事も忘れる位過ごしていた様子。
あらん。もうこんな時間だったのねん。
まだ営業はするけど、貴方達の時間はおしまいよん。
ここからはもっとディープな
"大人の時間" よ…。
貴方達と交流できた事、忘れないわん。
また会えたら店に来て欲しいよん。
楽しかったねー!!
ドロアママ、今日はありがとねっ!!
未成年のオルガくんもいらっしゃるので、早く店を出ましょう。
BAR「ラブリーデイ」を後にして、シャランアゾールの中心に位置する噴水で
女性陣がずっと待っていた光景を見つけ、無事に合流する。
もーう! 何時だと思ってるの!?
ずっと待ってたんだからねっ!!
ここに到着した時に遭遇した方と、過ごしていたんですよね…
拝見した瞬間、鳥肌が立ちましたわ…。
お酒に釣られるなんて…
ティアラさん、男ってそういうモノよ…、諦めなさい。
あーっ、そういえば
レシールちゃんとブルくん、まだ合流出来てないよねー?
どうしたんだろー?
ミントさん…、
あの子達も森の異変に気付いて、私達と違う方向に逃げた可能性が高いわ。
それにこの町に住んでいるんでしたよね。
だったらまた会えるわよ。友達なら信じないとね…!
男性陣、女性陣は
ブルが幹部「マイティーダーク」の一人、レシールがノルドイドとディゼールの手によって
山岳地帯の麓町「オークステリア」に連行されている事など知る由もない。
****
ここはBAR「ラブリーデイ」
男性陣が飲み干したグラスの片付けや、これから来るお客に出すお酒等を用意していると
ドロアママがナギが座っていた椅子の下で何かを見つけて拾う。
あらん。
何かしら、これ。
この世界の文字じゃないから、読めないわ♡
ちょっと、貴方ね…。
店に入る時はノックぐらいしな…
ドロアママはBARカウンターの向こうでゆっくりと倒れこみ、持っていた物を無理矢理に奪い始める。
そしてそれに書かれていた、この世界では絶対読むことが出来ない文字。
そこにはこう書いてあった…
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