94話:怒涛のヒルハイドタワー!マイティーダーク壊滅劇開始!!(part1)
文字数 3,987文字
ここは、ヒルハイドタワー15階専用実験室――。
突如として光放った剥製化したアルク。
足元から順々に元の姿に戻って行く……
もうこの地に足を付ける事が出来ないと思っていた。
弟のオルガ、妹のリフィーに会えない事も分かっていた。
ただ、今は蘇らせてくれたブルやゼルシードに感謝し切れない。
どうした、オルガ?
こうやって再会するのも癪だけど、嬉しいもんだな!
お、お兄ちゃん、大丈夫……なの?
さっきまで剥製だったのに、元通りになるなんて夢のようだよ!
夢か……。今までの記憶は完全に無いけど
お前の記憶はずっと心の中に大切にしていたんだ。
オルガ、長い間会えなくて済まなかったな。もう自分は大丈夫だから安心してくれ!
お兄ちゃんが帰って来た!!
この日をどんなに待ち望んでいたか。
もう絶対に離さないからな、覚悟しといてくれたら嬉しいぜ。
お? 言うようになったね!
これでこそ自分の自慢の弟だ……!!
アルクが木漏れ日の森で
ティム・ティーネ、そしてリリカルラビットのアルムと出会って何日が経っただろうか?
あの日、幹部「マイティーダーク」のメンバー、
グレイザーのスキル「枯渇」により協力者とは言えども
皆を助けた犠牲として諸に攻撃を喰らってしまい、枯れ果てて剥製の姿に。
時間はかなり経ったかもしれない。しかしながら彼の中では
あの日より以前の記憶は全く残っていない状態で
ほんの数日しか経っていない……
もちろん。一緒に木漏れ日の森を探索したじゃないですか!
嫌だなあ……、確かに一部の記憶はないけれど
共に過ごした思い出は消えませんよ。
あのお方の攻撃を喰らって、
もう助からないと思いましたよ。でも……
アルクさんが蘇って来てくれて嬉しいなー。
また何処か一緒に冒険出来たら良いですねっ!
そうだね、アルムくん。
ちゃんと名前、憶えていますよ……
えっと…、名前、名前っと……。
す、すみません。覚えていないです……
それにここヒルハイドタワーですよね。何故ここに自分がいるんですか?
そうか。お前、自分が悪事を働いてた事も忘れてしまったのか……
ただ、それが正解かもしれないな。
良いぜ。俺の名はグレイザー……
マイティー……、いや元「マイティーダーク」のメンバーだ!
アルクは自分自身がかつて
エディールの元でリリカルラビットを使って悪事を働こうとしていた事、そして
グレイザーの事も覚えていないとなると、蘇生を果たした際に
自分の悪に纏わる過去を全て失ってしまった様子。
そう、これがエバスを筆頭に策略を練っていた蘇生計画――。
必要なモノは……
①ブライドゼータ(悪に共鳴する剣)
②ゼルシードのスキル「譲渡」のパワー
そう、時は数時間前の出来事……
ヒルハイドタワーの至る場所に仕掛けられている監視カメラの目も気にせず
ブル、ブライドゼータの所持者ビラン、研究者リオルド、そして
スキル「譲渡」を持つゼルシードを筆頭にアルクの蘇生を
期待していたかのように始動させる……。
話は聞かせて貰ったよ。
それにしてもこのシステムを触るのも久し振りだな……
リオルドさんっ、どうかなー?
必要なモノは全部集まっているんだけどー!
えっと、悪の剣ブライドゼータと……
ゼルシードさんが持つスキル「譲渡」のエネルギーだよね。
いや、そういうつもりで言った訳じゃないんだ……。
そこを理解してくれると助かる!
分かっていますよ! どんな剣にしても
ルドスさんが果敢にヒルハイドタワーへ潜入して
取り戻してくれたんです。その勇気を称えないといけません……
ふん。俺からしたらどうって事無かったけど、
ここに辿り着くまで色んな事があったな……
あのー、いつエディール達にバレるか分からないから
早くアルクくんの蘇生したほうが良いんじゃないかなー?
目の前にあるのはパソコンや、数々の機械……
久々にそういった類の物を触るけど、研究者の性と言うモノ
アルクの蘇生を行うには自分自ら先導しなくてはいけない。
リオルドは上着を脱ぎ、研究服に着替え始める――。
この服に着替えたのも久し振りだ。
さてと、時間がないぞ。アルクの蘇生を始める。
ブル、これだけ最終確認させてくれ。この計画は誰を筆頭に動いてるんだ?
あ、それ聞いちゃうんだねー。
ブリジスくんもよーく知っている人だよ!
元スカラダークの首領って言ったら分かるよね?
そうなんだよねー!
元々はエバスさんとゼルシードさんの2人が
水面下で動いていた計画だったんだけど
無理を聞いて貰って入ったんだよー。だって……
愛犬のマーブルがエディール様に殺されたり
シャランアゾールの街も跡形に吹き飛ばしたから
ボクの元には大好きな犬が1匹すらいない事、絶対に許さないんだ……
エディール様か……。
マイティーダークの計画を止める為にも
成功しなければいけないんだ。君達にも手伝って貰いたい。良いかな?
****
研究室がある同じ15階、大広間――。
これから蘇生を目論むブル達を護衛する為に
スキル所持者、そしてビアンラボの精鋭部隊の元に
残りのマイティーダークメンバー「ディゼール」「ノルドイド」「ヴィルゼート」が
嘲笑の表情を零しながら、最上階に繋がる階段からコツコツ と音を立ててやって来た。
いけねえな……、オイ。
ヒルハイドタワーに邪魔な鼠共が入ってきたと思ったら
次はアルクの蘇生か? 勝手な事されたら困るんだよ……!!
見ろよ、あれが泣く子も黙るマイティーダークのメンバー……
痺れを切らして来たようだけど、もう既に
君達が信じた元幹部達が動いてるんだぜ!
グレイザーやブル、惜しい存在を無くしたな。
もう彼等はこっちのモンだ。どうせもうすぐ壊滅するんだからな……
こっちはジハイド所長の元、選ばれたメンバー。悪に飢えた化物を退治するのが役目。
アルバートの挑発発言が苛立ちを抑え切れず
ディゼールは階段を下りながらスキル「破壊」の技を一瞬で右目に溜めて連射するけれど……
俺達を忘れちゃ困る。
こんな技、俺の「切断」で阻止してやる!!!
悪いな、ディゼール……
スパッ と野菜や果物を切るかのように
鮮やかで軽やかな身のこなしをしながら、
ディゼールの攻撃を切って阻止するジルバ。
ふん。これで勝ったとでも?
今出した攻撃は手厚い私なりの歓迎……
本気じゃないと思ったら大間違いだ。なあ、ヴィルゼート?
そうだ。俺達はエディール様の元動いているんだ……
グレイザーやブルは残念だけど、まだ負けちゃいけない。
どうせ、お前等が勝てると思ってるんだろ?
その言葉帳消しにしてやる。
ディゼール、ヴィルゼート……
そこを退け……、俺が処理する。
ルドス……、これでも喰らえ。ディストレイダー……!!!
武器は所持していないけれど、
それ以外にも体力にも定評がある為
その実力を見せようといつの間にかマイティーダークが屯っている
フロアの天井で彼等が到着するのを待ちつつ、現れた瞬間攻撃を仕掛ける準備をしていた。
ジルバの発言により、ルドスの気配を
上空に感じ取ったノルドイドはルドス目掛け両目を閉じ、目標補足(ターゲット・ロックオン)と言いつつ
自分の瞳を青く光らせ、ルドスに向かって開眼し気分をガクッ と下げる攻撃を繰り出すけれどスピードはルドスの方が上。
初めて彼の顔にパンチを入れる事に成功。ただ、どんな攻撃もビクともせず彼が発したのは……
痛てぇじゃねえか……。
よくも俺の顔に傷を付けたな。
良いだろう。俺達の全力パワーでお前等を捻り潰してやる!!!
おい、ディゼールとヴィルゼート。誰を葬る?
私はジルバさんを始末します……。
兄弟揃って殺れる事が出来るなんて素敵じゃないですか。
そんでもって俺がアルバートだ……。
どうせジハイド所長が厳選したビアンラボの精鋭部隊も
所詮出来る事が少ない。特にお前はスキル持って無いからな……
だったら俺の方が上だ。その力見せ付けてやるぜ!!!
良く聞くんだ……。ここが君達の腕の見せ所だ。
この3人さえ倒す……いや、良心を取り戻しさえすれば、
残りはエディール様だけだ。立ち向かう準備は出来たか?
【ルドス】
ああ。宜しくな……
えっと、俺の相手は……、ノルドイドか。
目にモノ見せてやるから覚悟しとくんだな!!!
【ノルドイド】
ふん。ホントだったらグレイザーがお前を葬るつもりだったけど
出来なかったからな。今度は俺が葬る番だ……
何処からでも掛かって来い!
【ジルバ】
仕方ないな。戦闘の準備をしな、ディゼール……
勝っても負けても恨みっこなしだ。どうだ?
【ディゼール】
良いでしょう……。
ただ、マイティーダークには不可能はありません。
勝つのは私です。それでも果敢に挑むのなら何処からでもどうぞ……
【アルバート】
俺の相手はヴィルゼートか。
挑発するような目付きをするな……
正々堂々と悔いの無いバトルをさせて貰う。準備はいいか?
【ヴィルゼート】
良いぜ。俺のスキルは「凝視」……
どうだ、怖いか? ふん。マイティーダークに立ち向かった事後悔させてやる。
最上階にはエディール様がいるんだ。ボスの顔を立てる為
負ける訳には行かないからな!!
さあ、始めるぞ……。
お前等、覚悟は出来たか?
マイティーダーク全員の底力を見せ付けてやる……
【ルドス/ジルバ/アルバート】
望むどころだ……!!!
いよいよマイティーダーク壊滅に向けて
命を懸けた全面戦争開始――。
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