101話:エジェテールとエディール!遠き日々の過去!!(前編)
文字数 3,484文字
もしかしたらアイツ……
エディールに会いに行ったんじゃないのか?
可能性はあるな……。
奴等を束ねるボスだけど、グレイザーにとって
大切な友達な筈だ。放って置く事なんて出来ないよな……!!
だったら、グレイザーに賭けてみようぜ。
闇から救い出せる事が出来れば、残りの敵は
アンドルディシア、それと皇帝だけだ……。
【前回のあらすじ】
暗躍組織「アンドルディシア」の
御意見番ドルシードがビアンラボにいた者達。
そして、機動警察隊「セクションゼット」メンバー、フォザードが
エンディア達をそれぞれヒルハイドタワーに連れて行こうとしていた。
決意のシャウトシグマ編――。
マイティーダークの根城 ″ヒルハイドタワー″。
クロスウッドの環境を守るシンボル的な塔。所長はライオット。
彼を地下1階である牢屋に閉じ込め、奴等は今まで色んな悪事を行って来た。
彼等を纏めているのは ″エディール″。
闇のオーラを全身に纏い、絶対的な強さを誇っている。
ただ、チーム「カインドフォース」のメンバー達は彼と同じ故郷 ″エジェテール″ 出身。
再会した事で、少しずつ彼に心の変化が訪れていた。
″もしかしたら間違っていたかもしれない……″
″もっと早く″善″ を取り戻したかった……″
体力の限界、あるいはスキル「禍闇」の使い過ぎのせいで
大量の血液を吐いてしまい、気付いたら涙を流しながら最上階で倒れていた。
エディール、何で起きないんだ!
死んじまうのか? そんな事俺が許さないからな!!!
グレイザー、エディール様は
本当は何を望んでいたんですか?
アイツは……、友達を沢山作る事を願っていたんだ!
だけど彼は ″やり方″ を間違った。
本当は腹の底から皆と笑顔をしながら
遊びたがっていた……。
お前等だって大切な兄弟いるだろ。
考え方は一緒だ。エディールは何も出来なかったんだぞ!!!
ノルドイド、ディゼール……どうだ?
お、俺は夢を諦めてレックスを突き放した……。
ギターのテクはアイツの方が上だ。なのに俺は
それを棚に上げて言い寄った。兄なんか失格だ……!!
私は……、弟にキツい一言を言われた……。
バトルトーナメントオーディションの前日、どうせ弱くて
出来ないバトルに無理矢理参加するなら、ヤメろと。
それ以来、弟と会話がパッと消えて行ったんだ。
そんな事で、お前等は
マイティーダークに入ってエディールの悪事に賛同していたのか?
友達が出来ない辛さにずっと直面していたんだぞ!
それに挙句の果てに両親にまで突き放されて……
なりたくて闇に近付いた訳じゃない事、少し位
分かってあげたらどうなんだ。 誰にだって理由はある。
それに立ち向かわなかったディゼール、ノルドイド……。
俺は絶対に見過ごさないからな!!!
済まん。エディールがそこまで辛い思いをしてる事
気付かずに俺等が負担を掛けてたのか……。
申し訳ない事をしたな。
エディール、もう止めにして起きたら皆で帰ろうぜ。
そん時は、お前の大好きな笑顔で迎えてやる。
だから、起きてくれ!!!
****
ここは気絶して倒れているエディールの夢の中。
何処までも澱み、暗い世界にただ1人佇んでいる……。
辺りを見回すけれど、何も無い……。それもその筈。
禍闇の発動、そして皇帝が繰り出した黒い球体の餌食となってしまい、
大量の血液を吐いて気絶した事、彼は知らない。
考える余地もないまま、エディールの目の前に
モクモクと過去が映し出された煙のビジョンが
発生していく――。
(何で友達が出来ないんだろう?
辛いな……。でも頑張らないと両親に何言われるか……。)
ぐっ……辛い記憶……
や、やめて下さい。友達は幹部達だけで……
本当なら、迷惑を掛けた皆さんに謝罪をしたいんです……。
だけど、もう引き下がれない。来る所まで
来てしまいました。どうする事も出来ない……
…………。
エシャール、シャノン……。
本当に私で良かったのでしょうか?
エシャール、シャノンは
長男レイディア、次男ルディース、三男エディールの
両親に当たる。この5人で故郷 ″エジェテール″ の一軒家で過ごして居た。
ただ、エディールだけは特に父親から
強く叱られていたり、暴力を振舞っていた。
要するに彼だけ家庭内暴力の経験がある。それなのにも
関わらず ″家族=大切な存在″ である事を胸に秘めて
常に笑顔、そしてどんな時も
思いやりを持つ事を維持しつつ
共に暮らしていた……。
****
これは彼の分岐点になった過去の
とある雨の日の出来事――。
傘も持たずに服がビショビショ状態で、ガラッ と玄関の扉を開けると
そこに立っていたのは父親のエシャール。
【エシャール】
おかえり、エディール。
今日はどうだった?
バチンッ と息子であるエディールの頬を1発叩く。
けれどもそれは彼自身からしたら日常茶飯事なモノ。
本当だったらとっくに友達が出来て遊んでいる年頃だと父親も
同じ年を経験した立派な大人なのにも関わらず、″何でだ!″ と
強く八つ当たりに近い感じで常に彼を責め立てている。
ただ、エシャールはそれだけではなかった……
次は服を脱ぐんだ。他の家と違って裕福じゃない事
お前だって分かるだろ? さあ、早く……!!
父親の目の前で脱衣するエディール。
心の中では ″ヤメてほしい″ と思い続けている。
しかし自分が叶えたい夢がいつになっても達成出来ない為、
事実上諦めかけていたのも事実。
気付いたら彼の目から少量の涙が零れ始めていた……。
何でぶったんですか……?
ちゃんと父さんの言う通り、服脱いだのに……
服を脱ぐだけで笑顔になるな!
お前はいつもそうだ。私をからかっているのか!?
尻を出すんだ。ほら、早く……!!
バチンッ バチンッ
頬の次は尻を連続で叩き始める。
容赦ない圧により言い返す事も出来ない。
日に日に息子に向かって罵詈雑言浴びせ、必要以上に追い立てて
息子のエディールにまるで躾が出来ない動物のように
父親ならではの方法でちゃんと叱っていた……。
ただ、それは家庭内暴力に過ぎない。
それでも彼は何も言わない。自分を産んでくれた両親を感謝をしたい。
今はダメでも先がある。それを信念に掲げ
友達を意地でも作る事だけを考えていた……
その時、玄関のドアを再び開ける音が聞こえ
帰宅して来たのはレイディア、それとルディースの2人。
おい、ルディース。
そいつは誰だ? 初めて見る顔だぞ……。
彼はエンディア。私達の友達です……。
さっきまでレイディア兄さんと一緒に遊んでいました。
【エンディア】
初めまして、エシャールさん……。
俺はエンディア。宜しくお願いします!!
結構破天荒に見えるけど、礼儀は良いんだな……。
友達を作るのはこういう事言うんだ。ほら、エディール……。あ、あれ?
アイツなら俺が帰ってきたと同時に
靴も履かずにシャツ姿で何処かに行ったぞ。
そうですね。私も見ましたけど……
何かあったんですか?
……ったく! アイツはすぐ逃げる。
エンディアと言ったな。見苦しい所を見せてしまった事を許してくれ。
別に大丈夫です……。
俺が友達になってあげても良いんだけど……
友達は1人でも多い方が嬉しいしな!!
心から頼れる仲間が欲しいのは俺も同じだからな……
子供のくせに立派じゃないか……。
なら、エンディア。お願いだ、エディールと友達になってあげてくれ!!
本当にエディールが嫌だったらこんなに強く接していないからな……
私は立派に成長を遂げて欲しいだけだ。
宜しく頼むぞ!!!
やっぱり父親は隠れた所で息子の成長を見守っていた……。
エシャールも、もちろん笑顔がきちんと出来る大人。
3人の事を考えた時に自分が経験した事を強気に発する悪い癖がある。
そう言うのも、彼もまた友達がなかなか出来なかった過去がある為。
その分、自分みたいにならないように遠回りになるけど
密かに息子の事を期待していた。それが彼なりの ″父親としての自覚″。
自宅の玄関先でそう言った会話を聞く事なく、エディールは雨が降りしきる
エジェテールの森の奥深くへと姿を消して行く。
まさか、そこで ″とある人物″ に会うとは知らずに……
中編へ続く。
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