104話:エディールの涙!ヒルハイドタワー最上階の奇跡!!(前編)
文字数 4,075文字
…………。
きっと、私なんかより皆の方が多いですよね。
分かってるんですよ……。
しかし、友達と居ると居ないとじゃ
人間関係が変わるような気がします。是非誰か
友達になってくれませんか?
前回のあらすじ
禁忌のスキル "禍闇" の使い過ぎ、そして
フィンディルに佇む皇帝の黒い球体に入り込み
身体を酷使したせいか、ヒルハイドタワーに戻って来たと同時に
気絶してしまう。彼の夢の中で両親エシャール、シャノンとの
過去を思い出し、昔の出来事を手繰り寄せ
"友達を作る事がどんなに良いコトか"
"悪事を働いていた事がどんなに辛かったか"
"闇に陥って皆にどれだけ迷惑を掛けたか"
心の葛藤を再度確認し、これは汗なんかじゃない
少なからず彼の中にあったかもしれない、優しさの涙……。
ここはヒルハイドタワー。
わ、分かりました……。
エディール様、お願いです。起きてくれませんか?
エディール、もう良い……!!
今はお前だけが心配なんだ。
お願いだから起きてくれ!!!
気絶しているエディールに必死に声を
呼び続けているマイティーダークメンバー。
そんな中、ヒルハイドタワーに包まれている禍々しいオーラが
少しずつ調和されてる事に気付き、グレイザーの帰りを
待っていたエンディア達が非常階段を使って
最上階へとやって来た。
気絶しているとは知らずに……
グレイザー、遅いぞ!!!
一体何やってるんだ……、って……!
エンディア、済まない。
緊急事態……、エディールが気絶しているんだ。
グレイザー、ちょっと退いてくれないか?
俺が声を掛けてみる!!!
やっと最上階だー。ここに来るのも
久し振りな感じがするなあ。
お前もお世話になっただろ。
エディールが目を覚まさないんだ……
今はエンディアが見ているけど。
きっと感情の起伏が追い付かないんだよ……どれだけリーダーとしての威厳を守ったか。
ずっと辛かったと思う。
うん、そうだよな。
そこでお願いがある。ブリジス……
お前のスキルは心身を明るくさせる事が出来る筈。
掛けてあげてくれないか?
…………。
グレイザー様、すみません。
もう僕はスキルをゼルシードさんに
返却したので、もう所持者では無いです。
ブリジスにも迷惑掛けたからな。
こんな俺で済まない。でも今は
エディールを助ける事で精一杯。どうすれば……
塔内の階段を昇って最上階までやって来た
元幹部ブル、そして元スカラダークメンバー、ブリジス。
ブルはかつて飼っていた愛犬マーブルを殺され、
実験動物ニャタリウスに取って食われてしまう
残虐非道なやり方の他、沢山の捨て犬を
面倒見ていた故郷シャランアゾールまで失う。
暗い過去を味方に一時マイティーダークのメンバーとして
暗躍していた。
ブリジスは元スカラダークメンバー。
幼い頃、皇帝の汚い手法により
ルドス・ジルバの両親、そして自分の両親を殺してしまう。
後にエディールから彼の存在を知って、指揮を
執っていたエバスに選抜され、
チーム入りを果たす。
2人共、悪に君臨するエディールに恨みはある物
どんな瞬間でも、決して笑顔で接する事は忘れなかった。
もちろん、今も――。
その時、エディールが
気絶から目を覚まし始めようとしていた。
そうだ。だ、誰か……彼の口元、
ハンカチで吹いてくれないか? お願いだ。
目を瞑っているエディールが吐血していた
口元を丁寧に拭き取っていると
ゆっくりと目を開け始めて行く。
その場にいるグレイザー、エンディア達にも目も触れずに
まだ覚束ない足取りで
塔内にある吹き抜けへと無言で歩き出し
落下しない予防策として
設置されている手すりを跨ぎ
彼は数え切れない程犯した罪の報いをする為
飛び降り自殺を決意していた……。
お、おい。何する気だ!?
危ないだろ。さっさとそこから離れるんだ。
何言ってるんですか、グレイザーさん。
自決ですよ……。
や、止めるんだ!!!
何故そこまで……。俺の言葉分からないのか?
馬鹿な事言わないで下さい。
エンディアさん、私の数少ない友達の1人です……。
しかし、今回の一件で嫌いになった事でしょう。
そんな事、重々承知していますよ。
いや、そんな事はない!!
俺はエディールの永遠の友達だ。
あの時だって、一緒にハグを交わしたじゃないか。
憶えてないのか!?
もう良いんです……。
後は私が死ねば、皆さんは楽しい人生を過ごせる。
辛い記憶ともサヨナラ出来る。疲れました……
そして遂に、意を決して
自ら
身を投げ出し、吹き抜けから飛び降りてしまう。
エンディア、お願いがある!!
俺をお前の轟炎で包み込んでくれ。
エディールを何としても助け出す!!!
グレイザー、アイツを助け出したいのは
お前だけじゃない。此処にいる皆なんだ!!!
僕達だって彼の友達だよー。
だよね、ディゼールさん、ノルドイドさんっ!!
ブルさん、私達もエディール様に
お世話になったんです。ご協力させて下さい!
グレイザー様、俺達はいつでも準備オッケーだ。
さあ、彼の救出に向けて
お前等行くぞ!!!!
彼の落下速度より速いスピードで1階に降り、
フロア全体にダメージを負わない炎を広げて行く。
よし! これで落下した際の衝撃が和らげる。
グレイザー、俺の炎はどうだ?
温かいな。いや、もしかしたら
スキルなんかじゃなく、お前の心かもしれないな。
ふん。褒めても何も出ないぞ。
お前が一番エディールと付き合う時間が
長かったんだ。助けてくれるよな?
15階――。
此処はビアンラボの精鋭部隊や
リオルド、ライト達が待つフロア。最上階から急ぎ早で
降りて来た現マイティーダークメンバーじゃない、
友達として今後仲良くして行きたい
ディゼールとノルドイドの2人……。
助けたい意志が強く、これが禁忌スキルを使う
ラストチャンスと思い、彼の落下を防ぐ為に
グレイザーが企てた作戦を遂行し始める。
な、何するんだ!!
お前等、かつての仲間……いやリーダーを
殺めるつもりか!?
いや、ライト。違う……
もしかしたら2人はエディールを
助けようとしてるんじゃないのか?
リオルド、久し振りだな……。
ただ、今は一刻の猶予も無いんだ。
エディール……、マイティーダークのリーダー。色んな悪事を働いても、メンバーに愛されていたんだな。
何言ってるんだ、ライト。
俺、エディールみたいな奴、好きだぜ。
その時、更に速度を上げ
16階、15階……と吹き抜けを
通り抜けてしまう所をディゼールが偶然見てしまい、焦り始める。
ぐ、グレイザー様。
済みません。見逃してしまいました……
後は宜しくお願いします。
ノルドイドは10階でスタンバイしている
グレイザーに聞こえるように大声で謝罪し、後は
彼と1階で待機しているエンディアに全てを託す。
エディール、お前をしっかり受け止めるからな!!
待ってろ!!!
無事にグレイザーは空中で
エディールを救助して、彼の心を取り戻せる事が出来るか?
****
その頃、最上階では
ブルとブリジスに見守られながら
ハディーサのスキル "手戟" で
設置されているパソコン、周辺機器を壊そうとしていた。
最上階に緊張が走る……
いざ壊そうとした瞬間、設置されているパソコン上に
砂嵐が起き、その間からアンドルディシアメンバー
"レイディア" が映し出されて行く。
ああ。ブリジスか……
久しいな。ただ、今は
そんな雄著な事言ってられない。
これから言う事をきちんと聞いて欲しい……
良いか。1回しか言わないからな。
"今すぐリリカルラビットを手放せ!!" それと……
ザーッ
再び砂嵐が起き、彼の声は全く聞こえなくなってしまう。
気付いたらパソコンの電源も落ちてしまい
連絡が途絶えて、何の情報も得られない状況に。
****
ここはフィンディル、
誰にも気付かれないように、使われなくなった部屋に侵入し
隠れてヒルハイドタワーにいる皆に連絡するレイディア。
ただ、彼の側にはもう1人、
皇帝じゃなく別の存在が……。
ご苦労だったな、レイディア……
さてと、リリカルラビットを "元の鞘" に戻さないとな。
とぼけるな。ただ、お前等のお陰で
必要なモノは全部揃った。要するに用済みなんだ……
だから、レイディアには最後の仕上げをして貰うぞ。
全ての思惑は更に思わぬ方向へと動き出す――。
それはクロスウッド全土に響き渡る
"最悪の鐘の音" の前兆に過ぎなかった。
皇帝、アンドルディシアを裏で動かしている
影がいよいよ動き出そうとしていた。
第105話(後編)へ続く……。
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