96話:怒涛のヒルハイドタワー!マイティーダーク壊滅劇開始!!(part3)
文字数 4,255文字
おい、立てよルドス……。
俺はまだ本気になってないぞ!
所詮お前は剣を持ってないとダメな人間なのか?
ハハハ、ざまあねえな。
立ち上がれないと言う事は殺して欲しいって言う
合図として受け止めてやる。
小声で喋るな。聞こえない……
言葉を発する時はきちんと聞こえるように言え……。
アイツに教わらなかったか?
………そうだったな。
もう奴はお前等の味方になったんだよな?
ハハハ、笑えるぜ。妹のユズキも殺せなかった。マイティーダークにとって
ビアンラボのスタッフは全員始末に値する。要するにグレイザーは……
皇帝から発案された
計画を執行するチーム「マイティーダーク」の結成。
全てを投げ打ってボスのエディールに認めて貰う為、どんな手段も選ばずに
グレイザーを筆頭に色んな任務を行って来た。
しかし、彼は善を取り戻してしまった。
その結果……人員も戦力も少なくなり
今居るメンバーで遂行しなければならない。その為
悪に取り憑かれたノルドイド達は更に重みのある発言を交わすように必然的になっていた……
【前回のあらすじ】
決意のシャウトシグマ編・第2章も大詰め。
それぞれが全ての思いを乗せてヒルハイドタワーを根城にしている
マイティーダークの計画を阻止する同志が集結し始めていた……。
他大陸「グランバード」から駆け付けた警察機動隊「セクションゼット」。彼等も
現在のクロスウッドの状況を追い続けて来た為、目を瞑る事が出来ず
様々な情報を仕入れ、メンバーであるフォザードはヒルハイドタワー、
アッシュはエジェテールに出向く事に。
ただ、マイティーダークメンバーも黙って居られない。
邪魔する者は全員始末。と皇帝やエディールに釘を刺されているせいで
現在ルドス、ジルバ、そしてアルバートの3人を殺す勢いで迫って来ていた……
こ、こいつ……ふざけた事を!
アイツにとってユズキは大切な存在なんだ。
お前、それを嘲笑いやがって……。どんな根性してるんだ?
あ? 俺等は結果を出す事だけを考えてるんだ……
皇帝とエディール様の信念の元ここにいる。
だよな、ディゼール……ヴィルゼート!!
ルドスさん……、全ては実力が物を言うんです。
マイティーダークは強者。貴方達に勝ち目はありません。
今なら土下座で謝っても……
ディゼール、何を言ってる?
もうここまで来たんだぜ。生け捕りにして
エディール様に差し上げるって言うのはどうだ?
生け捕りの一件は命令されていません……
課せられた任務を執行するだけです。
長話して済まなかったな。
と言う事だ。ヒルハイドタワーに来た以上
俺等の計画を阻止しようとしてるんだろ? だったら……
ここから本気を見せてやる。
こうなった以上、お前に負けたら
降参を認めてヒルハイドタワーから落ちて死んでやる……。
何だ、アルバート?
お前の相手はヴィルゼートだろ?
俺と話すなんて余裕だな。邪魔をするな……!!
おい、早く奴を殺せ……
ノルドイドの威圧ある空気と会話に
何の有無も言えないルドスとのやり取りに挟まって来たのは
ヴィルゼートの猛攻を振り切りながら、一瞬のスキを突いて
足止めをしているアルバート。
彼はスキル無所持者ながらも、想像付かない実力者――。
そう、彼は身長188cm、体重95kgを誇るかなりの重量級キャラクターである。
食べる事、お酒を嗜む事。そしてクロスウッドでは
知らない人は居ない程の ウッドスナイパーを趣味している為
彼の背中には専用の弓矢を常に身に着けている。
*ウッドスナイパーとは……
森林地帯が豊富なクロスウッドだから出来る ″リアルシューティングゲーム″。
専用の弓矢を用いて、特定の木に掛かっている的を目掛け当てていく。
ただ、1つ1つコースがあり時間制が設けられている為
何処に的があるのか分からない。如何に早く見つけ出し
弓矢で正確な場所に射貫くことが出来るかが重要視されている――。
ぐっ……! う、動かないだと……。
重量級のアルバートならではの攻撃か!!
だったら、その強さに闇を植え付けさせてやる……
今更怖気付いたか? 何だよ、ヴィルゼート……
お前幹部面(づら)している割には一番弱いんじゃ……
聴こえなかったのか?
だったら何度でも言ってやる……
これは戦争――。
ボスであるエディールは常に ″勝つ″ そして ″成功″ の事しか考えていない。
それはもちろんマイティーダークのメンバーにも言い聞かせている。
彼の強さや性格に惹かれたメンバーこそこの3人。
もしかしたら出会っていなかったら、彼等も悪に染まる事は無かったかもしれない……
****
ここはヒルハイドタワーに向かう道中、
先頭にいるのは暗躍組織「アンドルディシア」のご意見番兼皇帝の父親のドルシード。
ビアンラボの女性陣、グレイスとルディースを連行していると
偶然にもその場所に向かっていたインバ、そしてシルヴィンに遭遇してしまう事に……
やっと見つけたぞ、インバ……シルヴィン。
よくフィンディルから脱出出来たな。
皇帝がお怒りだぞ……
何だ、言ってみろよ……
事と次第によってはこいつ等女性陣全員を
始末してもいいんだぞ……
だったら言ってやるよ!
お前、よく俺等のダチであるクロスを磔にしたな……!!
シルヴィンとインバは
古城フィンディルを抜け出した後からゼルシードが突如として
居なくなる前まで、常に彼等の耳にヒルハイドタワー、ビアンラボ、
そして古城フィンディルの様々な情報を逐一、誰よりも早く聞かされていた……
その為、その情報を全く知らなかったビアンラボの女性陣は驚きを隠せずにいた事も周知の事実。
えっ……、クロスさんが磔に!?
何でそこまでする必要があるの?
あまりにも酷過ぎるわ……
私はクロスさんに会った事はないけど、
磔は禁断よ。どうせ皇帝の判断で執行したんでしょ?
全く……、人として気が知れないわね。
うるせえよ……!!
皇帝の判断をバカにするな。
どれだけアイツがクロスウッドを……
おっと……そこから先は他言無用だ。
とりあえず私は指示に従うまで。インバ、シルヴィン……
ここで再会出来たのも運命だ。一緒にヒルハイドタワーに来い!!!
ふん、そうか……。
ただ逃げ出す事を考えない方が身の為だ……
そうだ。ティム、ティーネと言ったかな。
な、何ですか……?
私達、悪い事はやっていませんよー!
そう怯えるな。安心しろ……
お前、木漏れ日の森で遭遇した
リリカルラビット ″アルム″ は覚えているだろ?
うんっ! 私が手渡したクッキーを美味しく
食べてくれたんですよー。元気にしてるかなー?
…………!!!
成程な。おい、ティム……お前よくも余計な事やってくれたな。
リリカルラビット4匹と
″共に過ごしたお前等の思い出″ が鍵だ。
記憶の断片って覚えているか?
あっー、記憶の断片覚えていますよー!
確かユウマさんと一緒に蒼彩の洞窟で探したんですよっ!!
私もアルムと一緒に木漏れ日の森
探索したんだよねー。楽しかったなー!!
確かアルさんもそうでしたね……
旋律の館、少し一波乱はありましたけど
今となっては良い思い出でしたわ。
ユメも、確かルドスさんと共に
奮闘していたの今でも覚えているわ。
グライド研究所、今はもう無いですけど懐かしいですね……
ぐっ、こいつ等……!
このままだとヤバい。皇帝の計画が失敗で終わってしまう……
一体、記憶の断片って何なの?
ドルシードさん、教えてくれないかしら?
良いだろう。一字一句逃さずに教えてやる……!
記憶の断片とは……
あってはいけないモノだ……!!!このままだとリリカルラビットは消えるぞ……
****
場所は戻りヒルハイドタワー。
ヴィルゼートに「デブ!」と言われてしまったアルバートは
冷や汗を掻きながら戦意喪失をしてしまう。しかしながら彼もまだ諦めていない……
例え自分の容姿が太っていても、それがネガティブだと考えずに
強いハートを持っていればそれをプラスに変えられる術を知っている為、
罵声を浴びせられても、自分自身と戦いながら悪になる事を止まっている。
(ふぅ……。俺はデブなんかじゃない。
ぽっちゃり系。食べる事が好きなんだ……
確かにちょっと食べ過ぎる所があるけど……)
(でも以前ジハイド所長にトレーニング誘われた時は
凄く嬉しかったな。俺も変わり時か……。頑張れるかな?)
何故笑ってられるんだ?
お前の容姿がデブって物語っているんだ。
それを率直に言っただけだぞ……。
何だ、殺して欲しいのか?
その笑顔に包まれながら死んでいくなら本望だよな……。
だったらお望み通りに……!!!
その時、最上階に続く階段から
禍々しい線上の闇攻撃が
アルバートに向かって放たれてしまう。
それに一目散に気付いたのはルドスの兄、ジルバ――。
…………!!!
か、身体が言う事を効かない……
だ、誰か……助けて下さい!!!!
こ、これしか方法が無い……!
ルドス、聞いてくれ!!!!
刻一刻とアルバートの元に放たれた攻撃が迫って来ている中
彼を必死に庇ったジルバの腹部を貫通してしまう……。
バタンッ
身に着けていた洋服や、綺麗だったフロアが大量の血によって
染まって行くと同時にゆっくりと倒れていく彼の元に急ぎ早で駆け付け、
少し体を起こして生死を確認するルドス。
もう二度と目を開ける事は無いと知っていながらも
死んだ事を受け入れられないルドスは懸命に彼の身体を揺さぶるけれど、返事がない……。
嘲笑うかのように階段の途中から攻撃を繰り出したのは
マイティーダークのボスであるエディール。
ちっ、アルバートさんを始末するつもりが
ジルバさんを殺してしまいましたね……。
おい、ルドス……、必死に話し掛けても無駄。
もう彼は死んだ。しっかりと現実を見たらどうだ?
ルドスの必死な叫びはヒルハイドタワーの最上階に無情にも響き渡り
弟の腕の中でジルバは立派な最期を迎えてしまった……
次回へ続く――。
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