80話:クランチャードを守り抜け!鬼気迫る闇と蒼の襲撃者!!
文字数 5,582文字
【前回のあらすじ】
ここはクランチャード。
様々な "海" にまつわる仕事を事業内容としている海産業会社。
フロスト所長を始め、グリア、リュート……その他大勢の従業員や研究員で成している。
その中の1人、グリアはブリジスの弟。
彼もまた兄と同じようにキラキラしている物が大好き。
そして本日、この当社にクロスウッドで知らない物はいない程の凄腕ギタリストである
ノルドイドの弟、レックスが訪問して来た。
そして藪から棒に
ギターに纏わる問題を出題して来たけど、ブリジスも星空の下でギターを
よくグリアに聞かせていた事で、少なからずは基本から初心者向けの問題なら答えられる余裕があった。
どうだ? アンプの問題だ……
これがないとギターを弾く上で必要不可欠なモノだ。
お前の兄も少なからず使っていた筈だから、問題を出してみた。難しかったかな?
えっ、えっと……
レックスさんの所持しているギターはロックギター。それと……
GAINのつまみが最大……。
そしてイコライザーの中で低音域の出力であるBASS、
高音域の出力TREBLEが同じ位置。と言う事は、
少なからず音を歪ませて音作りをしている。
エフェクターも持っていると思うけど、使わないと言う事は
僕にも分かるような問題。それと何故かボリュームのつまみも……
(ふーん、こいつ見る目があるな。
さすがノルドイド兄さんから噂のブリジスの弟と言った所か。)
うんー! 答えはオーバードライブだねっ。でもズルいですよー!
直アンプは初心者がやる手法です。エフェクターがあるとないでは全く違いますって!!
正解だ、さすがだな。
じゃあ、せっかくだしエフェクターを繋いで演奏してやる。
やったー!
じゃあ、超ゴリゴリのロックとか弾いちゃってくれませんか?
フロスト所長もこう見えてレックスさんのファンなんですよー!!
もー、グリアさん! そういう事は言わないんですよ。
こう見えてレックスさんが出しているCD全部購入しているなんて…、あっ……!!
素直に嬉しいな。そうか俺のファンなら先日作曲したばかりの新曲
聞かせてやってもいいぜ。よし、準備オッケーだ。グリア、フロストの2人、準備は……
ギターを掻き鳴らし怒濤のテクニック満載の新曲をグリアとフロストの目の前で披露。
まさにその姿は一流。どんな技術も今まで過酷な練習を乗り越えて習得した賜物……
もちろん他の楽器にしてもそう。
一生懸命スクールや独学で決められた時間の中、どれだけの練習をするか。
レックスもまたその中の1人、現在幹部であるノルドイドが悪に陥る前に趣味としてやっていた
エレキギターを弟に勧めた結果、かなりの腕前まで上達した事で自分に自信が付き
元々描いてなかった夢の1つとなった……。
フルで演奏し終えた彼は気持ちよく髪の毛の掻き上げ清々しい気分に浸っていた。
曲の途中で先程グリアに見せた鮫みたいな魚「テラキリング」のデータを持ってきたリュートが
所長室の扉の近くで聞き、彼のギターの轟音に対して拍手を送り始める。
す、凄いです!!!
ボク、こんな激しいロック調の曲を聴くの久し振りです。
うちの兄さんも音楽聞くんですけど、いつもクラシックばっかりで……。
感動、そして大感激ですっー!
やっぱりレックスさんのギターは凄いです!
フロストさん、これが彼のロック魂ですよー!!
…………!!!
あのギター全ての弦からあんな轟音が出るなんて凄すぎる。
よっぽど練習したんだな。これは良いモノを見せて貰った……。
レックスさん、今日は演奏してくれてありがとうございました。
また聴きたい時、お願いしても宜しいでしょうか?
もちろんだ。確かクランチャードだったな……
連絡先教えてくれ。別にお金は取りやしないから安心してくれ!
俺はまだ先に行ける。ノルドイド兄さんをいつか、悪の道から改心させる為には
もっと技術を磨いて彼の心にズシン と響かせてやりたいんだ。
えっ、レックスさんの兄って
幹部「マイティ―ダーク」のメンバー、ノルドイドさん……なんですか?
ああ…、そうだ……。
このギターも兄さんのおさがりだ。
それとこの手紙が俺の机に置いてあった。そこにはこう書いてあったんだ……
【ノルドイド/置き手紙】
(直に帰る。俺の事は心配しなくていいから
お前は輝かしい未来を真っ直ぐに進め……。
それと帰って来た時でいいから極めたギターの音色を聴かせてくれ。じゃあな。)
兄さんはそんな強がりじゃないっ!!
そんな事、俺が一番分かっている……。
大体察しが付いたよ……。
レックスさんとボクは同じ立場だと言いたいんだよね?
【????】
やはり、そうか……。
お前等を見張って置いて正解だった。
だ、誰だ……!?
侵入者なら摘み出すぞ。まずは名前を名乗ってくれないか?
そしたらきちんと話を聞かせて頂きます。
【ブラスト】
そんな雄著な事言ってられるか……と言いたい所だけど
礼儀作法は重んじているから安心しろ。俺はブラスト。
この中でスキル所持者はいるか?
あーっ、それ僕だよー!
えっと、ブラストさんだよねっ。スキル当ててみてー!!
悪い、時間がない……。
グリアと言ったな。教えてくれないなら連行するぞ……
ちょっと、ブラストさん!
彼はこれからヒルハイドタワーにいるブリジスさんの元に向かうんです。
貴方に付き合っている暇はありません。グリア、後は俺達に任せて行ってくれ……!
こんな鼻から怪しいマスク付けている人にスキルなんて教えなくて結構です。
そうだ。突然クランチャードに押しかけて
目的も言わずにグリアの連行だと……。ふざけるのも大概にしろよな!
本当に信じられないんだけど。
ブラストさん、貴方ね……。何処の骨の奴か分からないのに
本当にスキルを教えると思ってるの? グリアはボク達と同じ当職員よ……。
ここは会社。第三者に個人情報の譲渡は禁止されています。
何処の職場も一緒です。常識はきちんと弁えて下さい!!
さっきの言葉お忘れですか?
礼儀作法は重んじてると言ったばかりですよね?
俺達の方から話す事は以上です。どうぞ、お引き取り下さい……
そうか……。ただ、1つだけ言わせてくれ。
俺は古城にいるタナトスを助けたいだけだ。お前等に言った所で
何の代わりもしないなら今言った事は忘れてくれ。邪魔したな!
ギター演奏終了後、
研究室のリーダー「リュート」が現われた事で
レックスの口から自分の兄がノルドイド、そして彼の兄がヴィルゼート。
共通点は2人とも幹部「マイティ―ダーク」のメンバーの身内である事……。
そんな中、突然クランチャードに無言で何処か暗い雰囲気を持つ謎の青年 "ブラスト"がやって来る。
グリアが持つスキルを必要以上に聞きたがっているけれど、これは此処にとっての"個人情報"。
当職員はフロストによる徹底研修により第三者への譲渡はもちろん
現実世界の会社と同じように禁止するようにと注意を促している。それが普通。
何の情報も仕入れる事が出来なかった彼は
不意に見せた残念そうな顔でクランチャードを後にする。
アイツ、タナトスを助けたいって言っていたけど一体誰だ?
知っている奴は……、いなさそうだけど少し気になるな。
済みません。ここは本当に"海"に関係している事しか扱っていないので……
こういう事は本来なら "ヒルハイドタワー"、あるいは "ビアンラボ" の役目なんです。
ただ、現在その2カ所は不用意に近付く事が出来ません。
知ってるよ。俺とリュートの兄がヒルハイドタワーで悪事を働いているんだろ?
先日ニュースで知った。その上クロスウッド全域に指名手配されてしまった。それと……
確か、クリストビレッジが何者かに襲撃され
近くにあった山岳地帯が突然のように消え失せた。
そしてそこから姿を現したのが……
小町でありもう既に誰かの手により
崩壊させられた『エジェテール』です……。確かあのニュースには
奥の方に何か建物が見えました。城のような……。ん、城?
あっ、城だ。と言う事よりあんな山岳地帯を囲むように
小町があった方が驚きを隠せない。それに倒壊されているし……
どのようにすれば、あんな風になるのかが知りたい。
次から次へと……。今度は一体誰ですか?
困るんですよ。セキュリティをもっと強化しなければいけませんね。
た、確か貴方は暗殺者ゼロシードさんの弟、名前は……
【ゼシア】
そうだ。俺はゼロシードの弟、ゼシアだ。
良いねえ。ここには利用できる奴が沢山いる……
まずは研究員グラスの弟、お前だろ、フロスト?
呼ばれたならきちんと挨拶ぐらい出来るよな。常識なんだろ?
確かにそうだが。ただ、グリア、リュートにだけは
指1本とも触れないで上げてくれ……。俺からのお願いだ……
それにレックスはクロスウッドで有名なギタリスト、この場所には全く関係ない。
さっき言った事もう忘れたの?
俺に目を付けられた時点で保障なんて出来ない……。
共通点がある事、分かってるくせに言わないなんて喧嘩売ってるの?
じゃあ、1人ずつ言ってやる。まずはレックス……、お前はノルドイドの弟。
何だよ。やるのか……
悪いけど昔ちょっとやり合った事あるんだ。
腕っ節なら強い。やるからには手加減しないぞ……
無意味な争いはしない……
もし攻撃してお前のギターに当たったら申し訳が付かないだろ?
さてと次は、ヴィルゼートの弟、確か名はリュートだったよな。
ふん。フロスト所長に手出しするなら容赦はしませんよ。
兄さんのように強くはないけど阻止する位だったらボクにでも出来ます!!
へえー、言うね。でも構っている暇はないんだ。
こっちも色々遭って、切羽詰まっている状態だ。
さて、さっさと用事を済ませるぞ。ラストはブリジスの弟、グリアだな。
何ですかー、もうっ!
ここは海好きが集まる会社クランチャードですよ。
何の目的も無しに来るなんて論外。さっさと立ち去って下さいっ!!
ふーん。ちゃんと目的はあるんだぜ。
ここは平和を守るビアンラボと同じような会社だろ?
グライド研究所は倒壊、ビアンラボは半壊。次はここも壊さないとな……
いくら海を守る職場だろうが、皇帝の計画を成功させるんだったら完璧に消去しないと。
ゼシアと言ったな……。
こんな事してゼロシードが悲しまないと思ってるのか?
兄を裏切るような行為なんだぞ。それを分かった上での行為なら間違っている……!
もうとっくに裏切ってるよ。
何しろ、あのバトルトーナメントオーディション以来2人の人物が悪の道に染まった。
グレイザー、そして俺の兄ゼロシード。お前、この意味分かるか?
そうだ。ルドスと言う奴には一幕買って貰ったんだ。
幹部を決めるバトルトーナメントオーディション……、わざと負けるように仕向けた。
言いくるめるの簡単だったな。兄は強い事知っていたし、トレーニングジムで
会った筋肉馬鹿のグレイザーも身体だけはいっちょ前だったからな。
皇帝の計画の支持者には優秀な逸材だったぜ。さてと、長話はここまで……
そう……、期待を裏切るかのように現れたのは
皇帝側の人間であった暗殺者ゼロシードの弟であるゼシア。
ビアンラボに協力者として潜入したスティードのお陰で、
皇帝、そして幹部、更には関係者まで色んなクロスウッドの大陸状況や、
住民の個人情報を譲渡する事に成功してしまった……。
そのせいで、隙が無いように試行錯誤しながら計画を成功に導く為、
入念に策を練った結果、今に至ってしまった。
しかしグリアはヒルハイドタワーにいるブリジスの元に行かなければならない。
かなり強引だけれど、彼を抱え窓をバリンッ と割って近くの海に落下させた。
申し訳ない気持ちでいっぱい……。
この場を掻い潜るにはこの方法しかない……。
フロスト所長は苦渋の判断をしたのかもしれない。
痛かったかな……。済まない…、グリア……。
お願いだから無事にヒルハイドタワーに向かってくれ。
ゼシアさん、ここからは俺が相手です。
どこからでも来て下さい。貴方の気持ち受け止めてあげます……
ここはクランチャード、従業員を守る指名がある。
仕方無いな……。ただ、此処を壊す指名があるんだ。
スキル持って無い同士、悔いのない戦いをやろうぜ。
お前が負けたらドルシードを呼んで彼の握爆でここを破壊する。覚悟は出来たか?
海産業会社クランチャードに迫る崩壊のカウントダウン……。
勝利はどちらに微笑むのか、それはほんの少し先のお話。
やはり皇帝の計画は大陸「クロスウッド」を地に墜とすようなモノ。
どのような感情で誕生したのか、如何わしいけれど
リリカルラビットの冒険譚はここから怒涛の展開を迎えます……。
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ここはクランチャードから少し離れた場所――。
マスクを身に着けているせいか全く感情を読めないブラスト。どうやら何かを思い込んでいる……
何で、誰も助けてくれないんだよ……!!
これで10件目。声を掛けた奴には必ず断られてしまう……
マスクを外し、自分が持つスキルの効果で徐々に覆い隠された口元より上の
闇で染まっている表情が徐々に晴れていく。
しかしながら、クランチャードに来たブラストは焦り気味。
その上、鋭い口調且つ言葉に棘が垣間見えるような発言をフロスト所長にしてしまった為
反感を買ってしまい、見事に追い返される……
タナトス……、必ず助け出すから待っててくれ!!
えっと、次は11件目。場所は……、元スカラダークの首領、エバスさん宅……。
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