105話:エディールの涙!ヒルハイドタワー最上階の奇跡!!(後編)
文字数 4,152文字
前編のあらすじ。
クロスウッド、闇の象徴ヒルハイドタワーを
占領しているマイティーダークのリーダー、エディール。
禁忌スキル "禍闇" 、そして自分の体力を
酷使し過ぎた結果、最上階にて気絶。
そうした最中、彼の夢の中ではまだ皇帝と出会う前の
過去が映し出され、両親、特に父親のエシャールに
罵声を浴びせられながらも
常に笑顔を絶やさず、力強く生きる
エディールの姿が。しかし故郷であるエジェテールは
皇帝、オルームの登場により殲滅されてしまい
両親共々姿を無くしてしまう。
気絶から目覚めた後、自分が今まで
犯して来た罪を償う事を決意し、最上階の吹き抜けから
飛び降りて自決してしまう。
エディールは無事に光を見つけ出す事は出来るか?
****
1階――。
落下した時の衝撃を和らげる
防壁技 "オールドフレア" を敷き詰める
カインドフォースリーダー "エンディア"。
彼が企てたエディール救出作戦の遂行メンバー、グレイザーは
少しずつ落下速度が速くなって行く彼の身体を
しっかりと受け止める決意の元
10階にある手摺りの
上に乗っかり、待ち続けていると……
今だ、グレイザー!!!
エディールをキャッチするんだ。
エンディアの合図、
要するに決行のサイン。
10階にエディール到着。
グレイザーは彼を意地でも救いたい気持ちで
吹き抜けへと大ジャンプし、身体をギュッと抱きしめる。
俺だ。グレイザーだ!!!
聞こえるんだったら返事してくれ。
頭が痛いんです……
グレイザーさん、私はこのままで
良いんで貴方だけでも命を大切にして下さい。
何言ってるんだ!!!
ふざけるな。俺がどんな気持ちで
お前を助けてるのか分からないのか!?
とりあえずこの続きは後だ。
エンディアがお前の落下を防ぐ為に
炎の技を敷き詰めたんだ。
そこに突っ込むぞ。目を瞑ってろ!!!
エンディアの "轟炎" には2つの意味が込められている。
1つ目、攻撃。
悪を成敗する為に己の拳に炎を纏い
力を込めて様々な技が繰り出せる正義鉄槌の炎。
2つ目、防御。
スキル所持者の性格によって覚醒する。
守りたいモノが強い程、繰り出せる炎の防壁は分厚く
事と次第によっては全く熱さを感じる事無く
命を守る炎。
彼ももちろん、グレイザーと同じ信念で
エディールを助けている。"待ってたぞ!" と言った顔付きで
彼等は1階に敷き詰めた炎の技に飛び込む。
だ、大丈夫ですけど。別に貴方達の
助けを求めたつもりはありません……
何で、そこまでして私を助けるんですか……?
今まで苦しませた人は数十名、そして
クロスウッドの各地で悪事を働いたんですよ。
それにロクに友達も出来ないで
闇を味方にして、全てを犠牲にしたんです。
死んで当然な事を……、私は……。
だから、私を今すぐにでも殺して下さい。お願いします。それで命の灯火は消える。
ヒルハイドタワーに平和が戻るんですよ……
おい。エディール
俺がお前にビンタをした理由分かるか?
今までの恨みですよね。私は
貴方の両親を殺した張本人ですし、あんな事態が
無ければ妹のユズキさんと楽しい毎日が
訪れていた筈です。なんならもっと
ビンタして構いませんよ……
やっぱりそうですよね。
だったら私には生きる資格なんてない。
自決して全てを終わらせようとしたのに……
俺はエンディアを通して、お前から
笑顔を教わったんだぞ。もしかしたらブルや
ブリジス以上に大切にしてるんじゃないとな!!!
そうだぞ。エディール、お前と
初めて会った日を覚えてるだろ……。
あの時の笑顔は何処に消えたんだよ!!
一度、禍闇のスキルを手にすると
過去の記憶が全て消えてしまうんです。
だから、例え笑顔をした思い出があっても
今となってはもう……
エディールを改心させるなんて
俺達には無理だったのか?
う、うるさい!!!
エンディア、お前それでも良いのか?
良くないに決まってるだろ……。
だけど過去の記憶が無い時点で、俺達に
勝算なんてない。もうダメだよ。
何弱気になってるんだ!!!
俺は何が何でも善を取り戻すと誓ったんだ。
お前の協力が無ければこれまでの
努力が水の泡になってしまう……
しかし、どうすれば良いんだよ……。
もう、どうする事も出来ない。
完敗だ、グレイザー。
くっ。目の前で苦しんでるのに
何にも出来ないなんて……
と、その時
エディールの兄であるレイディアが
映し出されたデスクトップ型のパソコン、
そして関連器具を全て壊した事で
古城 "フィンディル" との通信、連絡を出来なくした
ハディーサ、ブル、ブリジスの3人が
1階に降りて来ると、エディールを
改心させる事が出来なく、失意に暮れている
グレイザーとエンディアの背中を目にする。
え、エディール……。
エンディア様、えっと、彼苦しんでるように
見えるけどどうなったんだ?
何で……、何で皆さんそこまでして
私に構うんですか。別に友達なんて要らないです。
誰からも見送られる事なく、そのまま
死んだって別に良いじゃないですか。
"苦しい" "辛い" 思い出を
ずっと過ごして来た。マイティーダークの
リーダーを務めて来たからこそ、闇の象徴として
頂点に君臨しなければならないとずっと全力を注いで来た。
そう、皇帝の思うがままに……。
そんな時、
ヒルハイドタワーの屋外に辿り着いていた
ビアンラボからやって来た女性陣と共に
彼の次男であるルディースが塔内に
入って来て、ようやく三男との再会を果たす。
ルディース、家族である私の
こんな姿を貴方だけに見せたくなかったのに、何故……
何言ってるんですか?
もちろんエディールを助ける為ですよ!
どんな姿になっても私のかけがえのない家族です。
お前の弟がさっきから頭抱えたり
苦しんだりしてるんだ。それに心を開いてくれない……
もう、俺等には何もしてあげられない。
あ、そうだ。これを見せれば
落ち着いてくれるかもしれない。
これ、カインドフォースの皆さんが
崩壊されたエジェテールの私の家の瓦礫の中から
捜索して見つけてくれたモノです。
もちろん覚えてますよね?
そうだったな。そうだ!
それを見せてあげたらどうだ?
それは、以前
エディールが提案し、家族と一緒に撮影した記念写真。
カメラレンズの向こう側では皆、素直になれる一時の為
滅多に笑わない父、エシャールも良い笑顔をしている。
"ほら、笑ってる"。
ね、エディール。言った通りでしょ。
君の笑顔で皆が救われる。周りを見てみなよ。
こんなに愛に満ちた表情出来るなんて
最高の友達と思わない?
もう苦しまなくて良いんだぜ。
これを機にいっぱい友達を作れば良いんだ。
言っただろ、俺達は旧友でもありこれから先も
信頼を交わすダチ。約束してやる!!!
もっとエディールさんと仲深めて
クロスウッドを堪能したいなー。もう友達だもんね!
うんうんっ。オークステリアで
初めて会った時にマーブルをなでなでしてくれた。
同じペット仲間ー。だから友達っ!!
"どうして?"
そんな理由必要?
エディールも少しずつ気付いている友達との価値観。
今までの事を考えると、いざ前に出る後1歩の勇気が踏み出せないでいる。
エジェテールが崩壊する前に彼にしてあげたハグ。
それで彼の善の心を取り戻せるのかと
エンディアは熱い抱擁を交わし始める。
お前とハグするのも久し振りだな。
俺もあれから一生懸命トレーニングして
どんな人でも守れる身体になったんだ。どうだ?
だろ。エディールさ、俺だって
こう見えて臆病だし、脆い部分があるんだぜ。
それは他の人だってそうだ。お前だけじゃない。
俺もエンディア様に迷惑掛ける時あるけど
そんな時、熱心に叱ってくれるんだ。そんな彼が
お前をほっとく事なんて出来ると思うか?
よっぽど大好きって言う証だぜ。
もちろん、
僕だってエディール大好きだもんっ!
リーダーって皆から愛されている証拠。
それに笑顔って人を明るくする事だけじゃなく
周りの皆を幸せにしてくれる特別な魔法だよー。
エディールさんの笑顔には
皆を明るくしてくれる光が見えるんだー。
だから、もうマイティーダークの
リーダーも悪事もおしまい! 新しい時代の幕開けだよ!!
ブルとブリジス、そしてハディーサ。
3人の想いは一緒。これ以上の友達になる事。
彼等もエンディアと同じようにエディールをハグし始める。
そして、最後に……
グレイザーさん。そして皆さん……
何でそこまでしてくれるんですか?
"ここに居る奴等は全員、お前の友達だからだ!!!"
その時、エディールの身体から
彼の身体に纏わり付いていた闇の気配が
煙と化し、塔内に包み込まれていた禍々しい
空気と共に最上階まで上り詰め、少しずつ消え始めて行き
ヒルハイドタワーに新たな光が差し込む。
そう、これが本当のヒルハイドタワーの姿。
決意のシャウトシグマ編、第2部のクライマックス――。
そして、エディールも禁忌スキル "禍闇" が
使えなくなり、左頬に付いていた傷も消え、彼は元の姿を取り戻していた。
おい、エディール!!!
皆もお前の笑顔が見たがってるぞ。
【エンディア/ハディーサ/グレイザー/ブル/ブリジス】
エディール、おかえりー!!!
"ほら、笑った。"
おかえり、エディール。
106話へ続く――。
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