69話:ヒルハイドタワーの刺客達!ブル・ブリジスの友情物語!!(前編)
文字数 3,818文字
ねえー、ブリジスっ!
前編と後編でナギと1階で戦っているスティードの決着が付くみたいだよー。
どっちを応援するのか聞かせてよー。
でもさー、両方苦しんでるの分かるんだ。
僕が幹部だった事実は変えられないからね…
スティードは皆に任せて、僕達はナギさんを助ける事出来ないかな?
そうだよねっ。僕とブルの笑顔があれば
ナギもきっと元の姿に戻ってくれるよねー!
じゃあ、僕達の大活躍見ててねー。また本編で会おうー!!
【前回のあらすじ】
1階で闘争本能剥き出し状態のスティードの鎖が
次々にビアンラボの精鋭部隊を追い詰めていく。
切り札であるアルバートやシドルフでさえも凌駕する攻撃を繰り出されてしまい、戦闘不能…。
更に罵声まで浴びさせられてしまい、オルームを攻撃しようとする中
リオルドが必死に庇い、大量吐血をしてしまう…。
オルームに扮装したシルディートがクオーツリミテッドを襲撃して以来、
ずっと彼は身体を張って来ている為、もうそろそろ悲鳴を上げているせいか身体があまり動かない。
僕には何にも出来ないの?
リオルドさんを助けたい!
ゼルシードが連れてきたソルノーゼにその思いが伝わり、この大陸では見慣れない"キューツ"と言う
能力のお陰でオルームは善に満ち溢れた真の姿となり、いよいよスティードとの最終決着を迎える…。
オルーム…、ふん。善の姿になった所でどうせ以前のままなんだろ。悪だったらエジェテールを襲ったように非情になれるのにな…!
お前が襲ったんだ…。ははは、過去は変えられないんだよ!!
後ろを振り返らないだと。それこそふざけてる…。
何だと。何笑ってるんだよ…。何処が可笑しい! ふざけてるのか!!!
馬鹿にしやがって、もう許さないからな。これでも喰らえ…
スティードの両手から物差しで測れない程の物凄い長い鎖を出し、上手にコントロールしながら
上空に放り投げそのままオルームの身体の元に迫って来る。
ただ、オルームは一歩も微動だにしない。
多少のダメージは喰らったけれど、投げ付けてきた鎖を見事にキャッチする。
未だに両手に持っている事から察して、スキル使用時、鎖と両手は連動している事を察したオルームは
自分の技を鎖に流し込む事で、動きを止められるのではと策を練っていた。
何だと。無傷で居るなんて…有り得ない…!
この俺のスキルが敵わないのか!? くそっ、鎖が…。
こんな所で終わっちゃいけないんだ!!
スティード…。オルームに与えたキューツを見くびらない方が身の為だぞ…
お前もここまでのようだな。
おい。お前も戦うんじゃないのか?
さっき言った事と話が違うぞ…。
本気にしてたんですね。戦うと言っても俺はサポートです。
人を傷付けて何が楽しいんですか、スティードさん…!?
リオルドとオルームを見習うべきですよ。
オルーム…、お前の力皆に認めて貰いたいんだろ?
見せてやるんだ。善のパワーをこいつの鎖に注ぎ込んでやれ…!
オルームの両手に彼の想いが募った"善"の気持ちが鎖を伝わり、
スティードは何もできないまま攻撃を真面に喰らってしまい、何かに取り憑かれたかのように
動きがピタッと止まってしまう。
****
ここは真っ暗な世界。佇むスティードの前に
彼がスパイとして暗躍していたビアンラボの光景が映し出される。
何だ、ここは…。ん? ビアンラボじゃないか…。それがどうした?
何でここが映し出されるんだ。俺はエディール様に選ばれた協力者だぞ。
ヒルハイドタワーを出せよ。場違いだ…!!
あ、あの後ろ姿は俺だ。これは一体何の記憶だ!?
彼の脳裏にこびり付いている今から数カ月前の記憶――。
(さてと…。早くエディール様の為に
資料を送信しないとな。えっと、そう言えば
今日ユズキ達見ないけど何処に行ったかな?)
ユズキは嬉しそうな表情でスティードに歩み寄り、背後から彼の目を両手で覆う。
(スティードさんっ、ちょっとの間目を瞑って下さいねー!
今日は特別な日なんですよ。忘れちゃったんですかっ?)
(あれ、そうだったかな…。
すっかり忘れていたけど、誰の特別な日なんだ?)
(えーっ! 誰って…。
とりあえず付いて来て下さいよー。案内しますっ!)
幹部であるグレイザーの妹兼ビアンラボの職員でもあるユズキの誘導により
スティードは会議室に入ると同時にクラッカーが鳴り出す。
(ビアンラボの職員一同)
スティードさん、ハッピーバースデー!!!
(えっ、あ、そうか…。今日は俺の誕生日か…
こんな大袈裟にパーティーなんかしなくても良いのに。お前等、今勤務中だぞ。
こんな事してジハイド所長に怒られないのか?)
(良いんですよ。それにビアンラボはスタッフ1人1人の
誕生日をきちんと祝って交流を深めるのも立派な社内イベントもあるんですよ!
スティードさん、改めてお誕生日おめでとうございます。)
(今日だけは仕事を忘れて、皆さんと楽しんで下さい!)
今日はビアンラボに来て間もないスティードの誕生日。
ここは職員を大切にする場所でもあり、1人1人を大切にする教訓を3カ条の1つとして掲げている。
ジハイド所長が今日の為に色んな食事を用意したり
出来るだけ顔馴染みがある職員を出席させたりして、この数日色々と動いていた。
交流があるユズキやルドス、クロスにそして、アルバートやゲイミの姿も確認される。
(よう、スティード。今日はめでたい日だな…!
年に1回しかないんだから、とことん楽しめ。誕生日おめでとな!!)
(あら。来たばかりのスティードちゃんを祝えるなんて光栄だわ。
逞しい子は好きよ…、今後も宜しく。
改めて誕生日おめてとう。)
(スティードさん…、誕生日おめでとうございます。
沢山の料理に囲まれるなんて、大食いの自分にとってパラダイス…。
けれど今日は貴方の料理ですね! たらふく食べて下さいっ!!)
(よう、スティード。
最初はどうせ甘ちゃんと思ったけど、出来る奴と聞いてホッとしたぜ…!
素直におめでとうと言ってやる。思い切り楽しんでくれよ!!)
時間帯で言うと、まだルドスがヒルハイドタワーにあるブライドゼータを奪取する前の出来事――。
この頃のスティードはまだエディールに目を付けられビアンラボでのスパイ活動を躊躇っていた時期。
ほんの数週間しか経っていない彼を迎えてくれた大切な職員達。
それに彼もエディール同様、あまり両親に慕われていなく、友達もいない。
誕生日も誰にも祝われた事が無く、素直に嬉しいと彼は涙を流していた。
(あ、あれー…スティードさん。ど、どうしたんですか?
ちょっと泣いてますよっ! 泣かないで下さいよー。
せっかくの楽しい場ですよー!!)
(いや、素直に嬉しいんだ…。
誰にも祝われた事が無くてね。皆さん、本当にありがとうございます!!)
ビアンラボで迎えた誕生日の事を走馬灯のように思い出し、
突如としてスティードは汗を掻きながら苦しみ始める…。
くっ、苦しい…。これがオルームの"善"の力か…!!
俺はもう後戻り出来ないんだ。それに、もうお前等にも顔向けなんか…
全員を敵に回したんだぞ。どうせ許してもくれないんだ…!!!
スティードさん、諦めるにはまだ早いです。
だって貴方を一度でも迎え入れてくれた大切なビアンラボの職員達ですよ…。
皆さんももう1回、貴方と触れ合いたいと絶対に思っていますよ…。
それを大切にしてあげて下さい。
俺にも…、出来るのか?
もう1回やり直せるんだったら、やり直したいんだ…!!
大丈夫です。仲間がいるじゃないですか!
これ以上にもっとサポートしてくれますよ…。
まずは皆に謝罪です。話はそれからでも遅くはありません!!
そうか…。皆、色々と迷惑をかけた。済まなかったな…
スティードが久し振りに見せた
"笑顔"、そしてオルームの
"善"の心が強く共鳴する。
彼の周りに突如として発生した煙は彼がエディールに禍闇のスキルを発動した前の服装になり
本来の姿を取り戻していく。
これが本当のスティードの姿…
ふう。エディールに逆らう事が無くなるなんて夢みたいです。
ジハイド所長、迷惑掛けて本当にすみませんでした…。あの…
おかえりなさい、スティードさん。
大体察しは付いてますよ。もう1回、ビアンラボに復帰していいか…ですよね。
もちろん、大歓迎です!
ってか、スティードさんの居場所はビアンラボですよ!
決まってるじゃないですか。皆でもう1回やり直しましょう!!
そして、ソルノーゼ直々にまだ見知らぬ能力"キューツ"を与えたオルームは
スティードを元の姿に戻した報告をしにリオルドの元に帰って来る。
おいで、オルーム。さすが俺の息子だ…。
愛してるぞ…!!!
リオルドは家族の証としてオルームを強く抱きしめる。
頑張ったな! と彼の頭を優しく撫で、
この瞬間を待ち遠しにしていたリオルドは嬉しそうな表情をしてオルームを家族に迎え入れる。
ただ、これで勝ったとは言えない…。
更に上の階では幹部であるナギと既に到着しているブル・ブリジス組と遂に対峙しようとしている事
ビアンラボの精鋭部隊は知る由も無かった。
後編へ続く。
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