71話:熱血エンディアの陣!シルディートの猛攻を振り切れ!!(前編)
文字数 4,501文字
彼に扮しているシルディートは常にポケットに忍ばせているツールで
クロスウッドの何処かにいる何者かに何かを企んでいる素振りを見せながら、連絡を取っている。
【?????】
何ですか、クロスさん。いや……、シルディートと言った方が良いのかな?
思い入れがあるんじゃないですか?
あっ、扮しているんでしたよね。現在スタッフ含め女性達しかいません。
雇った警備員もエバスさんがやっつけてくれました。ただ、肝心な彼はもう……
全てはチーム「カインドフォース」のリーダー、エンディアの仕業です……!!
そして一時的に加わってるのはレサリア、そして貴方が探しているグレイスさんですよ。
ふふふ。探す手間が省けたんじゃないですか?
ただ、エンディアとハディーサの男性2名は別行動中です。
どうするおつもりですか?
大体は分かった。エバスはもう傘下ではない事。
そして俺が探しているグレイス、それとルディースは何も出来ない只の人間だ。
女と一緒にビアンラボに向かってる事、誰にだって分かる。
エンディアと言う奴に見つかる前にやればいいんだろ? 容易いぜ……!!
勝てる自信あるのか?
クロスピアでの一幕を恰もそこで見たかのように
何があったか一部始終を話し始める相手は少なからずエンディア達、
そしてエバスの事を良く知っている人物。ここに来てまた"スパイ"疑惑が浮上して来た……。
ただ、シルディート自身は協力者の性格から考えて、絶対にバレる事がないと自負しているけれど
まさかあんな形で変装が見極められてしまう事、さすがの彼も知る由もない…。
****
ここはヒルハイドタワー、屋外――。
ブルとブリジスが15階からナギを助ける為飛び降りて無事に改心させる事に成功。
落下して来た彼等をエバス宅に向かっていたエンディアがキャッチ、地面に衝突する事無く済む。
ブリジスからしたらエバスは元クロスピアの総指揮官で彼の上司みたいな関係。
改心した事を全く知らずにいた……。
今までのお詫びの印として、是非自宅でパーティーをしたいので
皆さんを連れて行きたいのですけど、他の皆さんは何処にいるんですか?
一時ヒルハイドタワーを退散しましょう。
緊張するとエディールさんに勝てませんよ……!
それにグレイザー達もパーティーに参加させてあげたいんだ!
我が儘言って済まん。けれどあいつ等の笑顔を見たがっているのは
ブリジスだけじゃないんだ。俺の一生のお願い、聞いてくれないか?
まだ浮遊のスキルを返却していないので、
まずはブルさんとブリジスさん、そしてナギさんを
元居た場所に戻しましょう。皆さんが心配していると思いますので……。
準備はいいですか?
幹部「マイティーダーク」、エディールと一緒に計画を実行している割には
自分の任務の事で手が付けられなかった為、
所有している禁忌スキルの措置に関して
無知の状態がずっと続いていた。
ナギさんの言う通りですね。せっかく御三方をヒルハイドタワーに戻したかったのに。
浮遊のスキルを使用していた時は割と便利でしたけど、いざという時は不便ですね……。
申し訳ない。ブル、ブリジス、そしてナギさん。どうしますか?
笑顔をする事がどんなに大切か?
彼はずっと苦しんでいるのかも知れない。
心の何処かにある綻びを正す事で、良心を取り戻すのも可能。
エンディアの熱い気持ちがエバスに届き、ブル達は新たな決意と共に
ヒルハイドタワーへと戻って行く……。
御三方に手を振って笑顔で別れを告げると同時に、かなりの重傷を負っている
ビアンラボのスタッフが近くにいたエンディア達に助けを求めに来た。まだ息はしている……
無慈悲に何の罪もないのに、次々に当スタッフ含め会議室に居る女性達を
次々に攻撃してるんだ。あんなのクロスさんじゃない!!
誰かが変装にしているに違いない。た、助けてくれないか?
ここはビアンラボ――。
クロスに扮しているシルディートが容赦なく総攻撃を繰り出している為
建物のあちらこちらに彼が壊したと思われる壁や窓ガラスの破片が散らばっている。
無情にも成す術なしに倒されていく姿を上から目線で見下すかのように罵倒しながら
会議室で女性達を守るルディース、そして怯えている兄グレイスの元に近付き始める。
信じているからこそ言える。
弟の事は何でも知っている。俺を見くびるな! と自信満々に誇らしく偽者に想いを吐き出すグレイスは
臆病者なんかじゃない。とエンディア達に言われた事を思い出し
自分も少し強気になろうと奮闘する。いつかクロスに胸張って言えるように……
ただ、変装スキルを所持している彼も黙っている訳ではない。
見抜かれてしまった以上、ずっと続けるのはリスクが高い。
彼の周りから突如として発生した煙はクロスを覆い隠し、顔立ち、服装は一変し
煙の中から出て来たのはシルディート本体。
これでいいかな。何処に居ても馬鹿ばっかだな!
何だよ、強い奴いないじゃん。生温いな。
グレイスって言ったよね、弱そうじゃん……!!
僕の目ジッと見てくれないんだね。どうしたの、怯えてるの?
強気になる事を決意するけれど、圧倒的に罵声を浴びせられてしまい、怖気付いてしまう中
彼の頑張りを応援するミントの目前でオルームに扮したシルディートは会議室の窓を素手で壊す……
次々にバリバリ と壊していく彼の目はまさに凶器そのもの。
抵抗した事により彼は彼女の首を掴み始める……
お前ミントって言うのか。泣いて済む話じゃねえーんだよ……!!
逆らった罰として首掴みの刑だ。もちろん痛いよな?
こうなると分かってやったんだろうな。哀れ過ぎるぜ。
そしていよいよ自分の強さを証明する為にオルーム扮するシルディートが
本当にビアンラボの崩壊に向けて動き出してしまう……