91話:古城フィンディルでの邂逅!エディールと黒い皇帝の猛追!!(前編)
文字数 3,513文字
ここはヒルハイドタワー。
最上階が悪の巣窟と化したマイティ―ダークの根城……
成功の2文字しか考えていないノルドイド、ディゼール、ヴィルゼート。
ただ、彼等にも予想していなかったのはグレイザー様の裏切り。
身体付きも筋肉質、メンバーの中で絶対的な強さを誇っていたけれど
妹ユズキに対する想いが人一倍強く、惜しい存在を無くしたと嘆いていてばかり……
ちっ。グレイザー様が遠くに行ってしまった……
もう奴は俺達の仲間じゃない。もちろん始末するんだよな!?
もちろんです……。
見て下さい、あのモニターに映っている彼を。
私達を放置して、ただ純粋に皆さんと心ゆくまで楽しんでいるじゃないですか……
いや、何でもありません。
ちょっと弟の事を思い出しただけですよ……
確か名前はデルシアだったよな。
さっき歯向かった愚かな奴。やはり
彼も皆と同じように、俺等の計画の阻止を望む者。
そういう奴はどうするんだったかな?
始末です。今更何を言ってるんですか?
そう言えば、ノルドイドさん……ちゃんと機械の数値見ていますか?
見ていないとエディール様に怒られますよ。
きちんと見てるから安心しろ。まだ40%だ……。
後はモニター越しにいるリリカルラビット4匹をカプセルに入れるだけなんだろ?
そうだ。リオルドがあらかじめ
様々なデータをシステムに組み込んで置いてくれたせいか
こんな楽に事を進められるなんて、時代の進歩が伺えるぜ……
そうですね。現在エディール様は
皇帝に呼ばれて古城「フィンディル」に居ます。
どうやら私達の知らない所で何かが動いているようで、
あまり考えたくありませんね……
****
ここは小町「エジェテール」。
産まれた故郷の崩壊っぷりを久々に拝見しながら、古城フィンディルを訪れ
大広間の柱に磔状態にされているクロス、玉座に座っている皇帝、そして
この計画を支持しているドルシード含む暗躍組織「アンドルディシア」の姿が見受けられる……
よく来てくれましたね、エディールさん。
故郷の崩壊ざまはどうでしたか?
やはりいつ見ても素晴らしいです。
これもオルームさん、そして皇帝に感謝しないといけません……
そう言ってくれるだけでも、感謝です……
せっかくお兄様のレイディアさんと久し振りに再会したんです。
お互いに喜びを共有するのも宜しいかと。
皇帝……、そんな事は後回しで大丈夫だ。
忘れたのか? エディールが率いるマイティーダークのメンバーや傘下……
次々に良心を取り戻してるって……。
どうやら躾がなっていないようだな、エディール。
言って置くけど、私達はアンドルディシアとしての仕事で忙しいんだ。
お前に構っている時間など……
大丈夫です、兄上……
貴方の手を煩わせはしないので、安心して下さい。
何人かはマイティ―ダーク辞めましたけど、残った人数で何とか
皇帝の計画を成功させるように頑張らせて頂きます……。
現時点でエディールが闇に染めて来た人物は数知れない……
しかし、彼は凄絶な過去を生き抜いて来た為
我慢強く、そして屈強な心は持っていたと自分では信じ込んでいた。けれど
さすがに自分には嘘を付けない。
"沢山の友達と出会いたかった"
"泥だらけになるまで遊びたかった"
子供と言う者、大人になるまでが勉強、そして遊びが仕事のような物。
色んな事を学び、知ったり、沢山の友達と触れ合う。
当たり前の生活を送る事が出来なかった為
現在、このような道を辿ってしまったのかもしれない……
様々な事を思い出しながら、エディールは全ての想いを吐き出してしまう。
すみません。本当は……
一度幹部になったメンバーともずっと一緒に居たかったのに
全員良心を取り戻してしまい、私にはもうどうする事も出来ません……
いっその事、もう全てを……
止めろ、エディール……
もう手遅れなんだ。後戻りは出来ない事、重々と承知してるだろ?
(辛い……だなんて言えません。
皆さんに認められるリーダーにならないと……)
ブルやナギもかつてはマイティ―ダークのメンバー……、
彼からしたら2人共大切な友達。
初めてブルにオークステリアで会った際、愛犬のマーブルと触れ合った事や
ナギは現実世界の人間。そこまでの文化がクロスウッドに無い為、色んな事を教えて貰った事。
もっと色んな事を知りたいと思ったのは決して闇ではない。
少なからず、皆とどのように接すれば良いのか
彼の心の中に残っているのかもしれない……
後は自分自身がどのように断ち切るか。それがエディールの重要な課題……
****
場所は変わり、ここは海洋産業会社クランチャード。
海好きの正社員、研究員を筆頭にクロスウッド近海に纏わる様々な事を調査している。
現在は落ち着いているけれど、つい先程までゼシアと言う
暗殺者ゼルシードの弟で、小町「エジェテール」に聳える古城「フィンディル」で
謎の計画を施工しようとしている皇帝、ドルシードが放ったスパイによって襲撃されていた……
君達、大丈夫か? それにしても突然何だったんだ……!?
やるだけ攻撃して、捨て台詞だけ残して
帰って行きましたけど……何でしたっけ?
はぁ……、ギターケースが汚れた。
せっかく手入れしたばっかりなのに……
ただ、そんな事言っていた事覚えてる。
少し焦り気味だったな。リュート……、少なからずこの一件に
俺達の兄が関わっている事は間違いなさそうだ。
そうだね。ただ此処を離れる訳には行かない……
私は海の非常事態時に、クランチャードが所有する船の
出動部隊のリーダーも務めている。レックスさん、私達は……
兄さんが無事に帰って来る事を願いませんか?
絶対大丈夫です! 頼れるスタッフ、グリアさんがお仲間と一緒に
ヒルハイドタワーに潜む悪意を掃ってくれる事、私は信じています。どうですか?
そうだな。俺は1度も笑った事がない
兄の笑顔を見るまでは諦めない……、そう決めた。
とりあえず君達が無事で良かった。
この様子だと怪我とかは負ってなさそうだな!
はい。しかし、ゼシアさんの発言気になりますね……
皇帝をバカにするなって、一体どのような意味が込められてるのでしょうか?
ふん。逆上しただけだろ?
俺やリュートの兄を悪の道に招き入れた張本人なのに
同情しろとでも言いたいのか。ふざけるのも大概にしろ……!!
まあまあ、落ち着いてくれ。
とりあえず俺達が首を突っ込むのはここまでにしよう!
えっ……!?
フロスト所長……、兄さんはどうなるんですか?
安心して大丈夫です!
もうすぐクロスウッドに到着する筈です……
****
舞台は戻り、古城「フィンディル」――。
つい先程までマイティーダークのメンバー減少に置ける対策を施そうと
割とあらゆる処置や対策を考案していると、少しの間席を外していた皇帝が玉座の間に
戻って来て、王座近くにある新たに用意されたワイングラスを片手に持ちゴクリ と飲み干す。
一体何を考えているのか分からない為、ドルシードやアンドルディシアに少し
重苦しい空間の中、緊張感が走っている……。
(あの仮面の裏の表情、考えただけでも悍ましい……)
静寂の中、王座の間近くにある台に
ワイングラスを置く音がカンッ と響き渡り、更に雰囲気は悪化して行き
遂に皇帝がその重い口を開く時間に……
グレイザーの件だ。何故報告しない?
マイティーダークを辞めた事……。私が知らないとでも思ったんですか?
おい、エディール……!
どういう事だ。あれ程強く言って置いたのに。何やってるんだよ!!!
王座の間に深々と座り込む皇帝の風格はラスボスそのもの。
汗を垂らしながら近付くエディールの目から少し涙が出ていた。
その涙が意味するモノとは…、一体何なのかは後のお話。
ただ少なからずエディールの感情に少しずつ何かが動き始めようとしていた……。
そんな中、嘲笑うかのように
皇帝の両手から大きめの黒い球体を出す。
この黒い球体は、今まで私が経験して来た痛みや苦しみが詰め込まれている。
同じ過去を共感できるのは、エディールさん貴方しか居ません……
さあ、中へ入るんだ……
皇帝の言う事は絶対服従……。絶対に避ける事が出来ない為、エディールは少しずつ黒い球体に身体を入れて行く……
ぐっ……!
こ、これ位の痛み、私からしたら痛くも痒くも……
今まで味わった事が無い痛みを経験している為、かなり苦しんでいる……
はぁ……、はぁ……。
ぐっ。う”ぐっ。こ、これが……
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