65話:黒鴉のジャッジメント!ゼロシードvsジルバ!!
文字数 5,693文字
【前回のあらすじ】
ヒルハイドタワー…、エディールを筆頭に悪の巣窟となっている。
1階で精鋭部隊を始末する衝動に駆られているスティードは
リオルドとオルームに罵詈雑言を浴びせてしまい、オルームは再びあの時の自分に
逆戻りしてしまうかと闇のオーラを露わにするけれど、ようやく到着した精鋭部隊メンバー、
アルバートの手によって何とか阻止する事に成功。
そんな中、ルディースを乗せたクロスピアが
光層空間を抜け、再びクロスウッドの地に戻り海に不時着。
その際、岩礁に引きずられて進水した為、沈没するまでのカウントダウンが始まっていた。
****
ヒルハイドタワー、最上階。
常に行動を監視しているエディール、ジルバ達が9階に辿り着いたのを確認し
10階で待機しているゼロシードに連絡をしていた。
ゼロシードさん、彼等が9階に到着しました…。
黒鴉の準備は出来ていますか?
ああ…。いつでも準備は出来てるぞ…
新しいマスクにしたからな。それで俺は誰とバトればいいんだ?
全員殺っていいのか…!?
ダメです…。私の楽しみが無くなります…
そうですね。ジルバさんなんてどうでしょうか?
彼は貴方の弟ゼシアさんを傷付けたルドスの兄です…。
どういう事かもちろん分かりますよね。
ルドスの兄、ジルバ…か!!
いいだろう…。弟の前でやられる姿を見せられるなんて気持ち良いな…!
エディール様の為にここでジルバを始末させて貰う。
これでゼシアにも顔向けが出来る…。
貴方の強さで彼等に残酷を見せ付けて来て下さい…。
期待して待っています。それでは失礼します…
****
場所は変わり、ここは小町『エジェテール』の郊外――。
無事に古城を脱出したインバとシルヴィンの2人は
一本道の先の立ち止まり区域に何かしらあると思い周りを捜索し始める。
周りにある自然の物と言えば…
山岳地帯、生い茂っている草木、生えている草花、立派に育っている木々…、それと小さな池。
さすがにこれは謎を解く要素が全く見つからない。と思った瞬間
インバが何か閃くように周りを見渡せる位高い木々を頂上まで登る。
そして彼は遂に小町『エジェテール』に隠された"とんでもない真実"を知ってしまう…。
おーい、俺の声聞こえるか?
もし何かあったら教えてくれ!!
****
ヒルハイドタワー、ここは10階――。
周りに張り巡らされているこの塔の象徴的とも言える窓のシャッターが完全に閉め切っている。
明るい日差しが差し込む事なく、フロアは暗く、張り詰めた空気の中で戦う雰囲気を醸し出していた。
このフロアにいるのは暗殺者、ゼロシード。
幹部「マイティーダーク」、そしてボスのエディールを倒して悪事を暴く事はもちろん
更にブライドゼータの力を使って"アルクの蘇生"もしなければいけない…。
こんな所で負けていられない…!
ゼロシードに勝利して次の階へ行くんだ…!
ジルバ達は意を決して、ゼロシードとの対決に挑む。
ようやく来たな…。待ちくたびれたぞ、ルドス…!
グレイザー様の猛攻を受けたのにも関わらず…、意外とタフなんだな。
…………!!
本当に済まなかった。まだゼシアに会えてないから言えてないんだ…
早く言えよ…!
おい、ジルバ。お前こいつの兄だろ…。
教育がなってないんじゃないのか!!!
弟に代わって俺からも言わせてくれ…。
ルドスがゼシアを傷付けた事、本人も深く反省してるんだ。許してくれないか!?
本当に深く反省してるんだったら、何で早く謝罪しないんだ!?
何処にいるか分からない…っていう戯言は聞かないからな。残念だけど…
交渉決裂だ…!!!ルドスがゼシアを傷付けたように
ジルバ、お前に罰を与える。戦闘の準備をしろ!
仕方ない…。やるしかないのか…。
ルドス、お前は下がっていてくれ…!
ゼシアを思う気持ち…、それだけがゼロシードの生きる糧。
いくら自分がどんな立場であり、暗殺者だとしても弟だけは決して忘れる事は出来ない…
誰にも見えなくジルバだけにしか見えてない複数の刃が
ゼロシードの腹部に次々と当たり、彼を翻弄させていく。
せっかく新調したばかりのマスクも再び赤く染まり出し、外す羽目になってしまう…。
くっ…。ジルバ、なかなかやるな…!
こんな血に染まったマスクなど、もういらん!!
じゃあ、早く捨てなよ。とっておきの技があるんだ。
ってかこれで終わらすのも早いんだけどな…!!
さあ、ゼロシードの番だ。俺はまだ体力有り余ってるぜ…
そうか。じゃあ期待に応えないとな…。
ちょっと待ってろ…!
マスクをゆっくりと外すゼロシード…
不利な状態に置かれていても、焦らずゆっくり任務を遂行する。
さあ、バトル再開だ。
今度は俺の番…。さっきのは痛かったからな…
とどめを刺す位の強力な黒鴉を用意してやる。さあ行くぞ!!!
避けられるもんなら避けてみな!
三角の形に両手を前に出し、そこから獰猛な闇のオーラを纏った鴉が1発放たれてしまう。
そう…、この技こそゼロシードが持つ"黒鴉"スキルの中で最も強い技。
決して標的(ターゲット)を逃さない鴉は物凄い破壊力を持つ爆弾。
もしこんな物を喰らったらさすがのヒルハイドタワーでも窓が全て破壊されてしまい、
上から徐々にフロアが抜けていき、最上階にいるエディールもさすがにキレるに違いない…。
アイツはとっても賢いんだぜ…
どんなシチュエーションにも対応出来る鴉なんて俺だけにしか扱えない…。
さあ、ジルバ…。これが"とっておき"だ。
何だ、その攻撃!?
やる気あるのか、ゼロシード。
急旋回、急上昇、急降下ばかりしてるじゃないか…。
それで"とっておき"だなんて笑わせる。
ふん。何度でも言えばいい…!
俺はルドスの目の前でお前が亡くなればそれで構わない…。
これはエディール様に下された命令。ゼシアにもう2度と会えない覚悟で
俺は暗殺者になった。これが本当の"サヨナラ"だ…。
何だと…。お前今自分が何言ったのか分かってるのか!?
お前等、伏せろ…。あの黒鴉を喰い止める…!
うるせえ!!! やってみないと分からないだろ!!これで皆を守って、お前を必ずゼシアに合わせてやる!!
ゼシアの
"皆を救う気持ち"が黒鴉の脅威を治める。
"シェイルグラシード"
ゼロシード、ライト達に見えないバリアが周りを包み込み
黒鴉は標的を見失ってしまい、爆破はせずにそのまま獰猛な闇のオーラと共に鎮まって行った。
くっ…。あの黒鴉を食い止めるなんて…予想外だ。
何でだ…何でだよ! 俺は間違っていない…。何で邪魔をするんだ!!
お前、ゼシアが好きなんだろ…?
家族を好きになるって言う事は素晴らしい事だ。
だけどな、相手が他人でも弟を大切にしてるんだったら
その気持ちを受け止めてあげるのが筋だ。もちろん弟を傷付けたのは許し難い。
だけどルドスは本当に深く反省してるんだぞ…。一つ言いたい事があるとすれば…
弟は親や兄の背中を見て立派に育つんだ…。同じ弟を持つ同士、もっと頑張ってみないか?
…………。
俺にも出来る…のか?
暗殺者として名を馳せてしまった。弟に会わせる顔が無いんだ…
そんな時何をすればいいのか教えてやるぜ…。
そうだな…。この中だったらブリジス、ブルが得意じゃないかな…。
お手本見せてあげてくれないか!?
そうだねっ! ゼロシードさんっー。
こんな時は"笑顔"だよ!
ねっ、ブリジスさんー!?
うんっ! 仲直りをするコツは
"笑顔"だよー!
ゼシアさんに見せてあげて下さい!
必ず笑ってくれますよー!
暗殺者としてこの数年間生きていた為、いつの間にか笑顔のやり方を忘れてしまっていた。
あれ、笑顔…ってどうすればいいんだっけ?
笑顔って素晴らしい事なのにな…。
もっとゼシアと笑っていたかったな…。
ここに来てゼロシードは走馬灯を見ているかのように自分の過去を遡る。
ただ、ジルバの発言によりゼロシードは自分の行為に対して躊躇っている為
改心させるなら今の内。最上階にいるエディールが勘付き
このフロアにやって来る事も可能性は高い。
その時、何気ないユズキの発言がゼロシードの心を動かす…
じゃあ、ゼロシードさんっ!
提案ですけど、弟のゼシアさんの好きな所3つ褒めて見て下さいー!
えっ、ゼシアの好きな所か…。
そうだな…。周りを温かくしてくれる…それが1つ目。
次に何よりも負けず嫌い、2つ目。他には…あっ!!!
"誰に対しても笑顔で振舞う"。
これ、俺が教えたんだぜ…。ゼシアも立派に成長してくれて嬉しいんだ。
そうか。やっぱり俺には見捨てる事が出来なさそうだな。
やったー。ゼロシードさんが笑ってくれたー!
笑顔、素敵ですっー!!
やっぱりこうだよねっー。
うんうんっ!
クロスウッドの皆がもっと笑顔で溢れる大陸になってほしいんだー!
その為にはエディールさんや、皇帝の悪事を暴かないとね。
絶対2人共、笑顔素敵だと思うんだっ!
皆で頑張ろうねー!
お前等、ありがとな!!!
これからは味方だ。暗殺者は今日で終わりだな。
君達の笑顔を見てたら安心した…。
その時、ゼシアに纏わり付いていた闇のオーラがスッと消えていき
彼が着ていたダークな洋服やマント一式も消えて行く。
皇帝から"暗殺者"としての任務を与えられ
エディールから"ダークな衣装/闇の力"を無理矢理に植え付けされ
ゼルシードから"黒鴉"のスキルを頂いたゼロシードの過去は決して拭う事は出来ないけれど
皆の揺るぎない笑顔に対しての思いが
彼を再び善の心に呼び戻した。もう安心…!
何だ、この不思議な感じ…。
お、俺の私服…あの時のままと言う事か…。
どうやら元に戻れたみたいだ。やっぱりこっちの方が身軽だな!
可愛いじゃん。もっとダークな洋服が好みだと思ったけど
そんな事ないんだな。どっちかと言ったら"可愛い系"!?
もう過ぎた事じゃん。忘れようぜ…!
最上階に行くんだろ。ここから先は案内してやる。
俺も仲間なんだろ!? 良い所見せないとな…。
【朗報】ゼロシード、暗殺者の道を抜けブル達の味方に。
****
ここは同じくヒルハイドタワー、最上階――。
幹部との談話を終えたエディールはゼロシードがいる10階に設置されている監視カメラの
モニターを確認する。ただ、彼はもう悪の道を止め…
ブル達の味方になっていた事を全く知らなかった為
驚きを隠せずにいた。
ゼロシードさん…、脱落ですか。
残念ですね…。彼は暗殺者として優秀な逸材だったのですけど…
正直、惜しい存在を無くしました。
大丈夫です。
実は弟のゼシアさんは…。
おっと…。残念ながらここから先はお話する事が出来ないんです…
皇帝から口止めされていますので。申し訳ございません…
いざと言う時は俺を呼んでくれ!!!皇帝、そしてエディール様の邪魔をする輩は片っ端から枯らしてやる…。
ここに来てゼロシードの弟ゼシアに関して
意味深な発言をエディールがしてしまったせいで、彼の立ち位置が更に混沌と化す。
****
ここは北西の海――。
見渡す限りの大海原を見ているチーム『カインドフォース』。
森の中で休憩している最中、上空を飛来していたクロスピアが不時着をし浸水が始まっているせいか
今にも沈没しそうな光景を目の当たりにする。
お前等、クロスピアが浸水始めてるぞ…!
いつ沈没しても可笑しくない…!!
ただ、少し距離離れているけれど、どうする!?
どうするって…、泳いで向かうしかないだろ。
ユリシールとシスティア、水着がないなら
この辺りで調達出来る物で作ってみたらどうだ?
そうだな…。貝殻とか浜辺に打ち上げられている海藻、葉っぱで何とかならないか!?
あら…、提案してくれてありがとう。
だけど平気よ。私達はこの洋服を脱げば
いつでも泳げるようなファッションをしているわ。
そうだ。あそこに大岩があるわね…。
ちょっと着替えてくるから絶対に覗かないように!!
特にエンディアさんっ、大岩壊さないで下さいねー!!
着替え終わったわ。さてとクロスピアに向かいましょう!
じゃあ、点呼をさせて頂くからそれぞれ意気込みを言って貰おうかしら。
【システィア】
うんっ! 皆のサポートしつつ、無事にルディースさんを見つけられるように頑張るー!
【レサリア】
はい。クロスピアの構造は私にしか分かりません。
皆さんを無事にルディースさんの元に導きますので、宜しくお願いします!!
【グレイス】
はい! 微力ですけど
お邪魔にならないようにご尽力します。きっと俺にも出来る事がある筈だ…。
期待してるわ。さて、ここから趣向を変えようかしら…。
じゃあ、モダンカウボーイ…宜しく。
【モダンカウボーイ】
お、その名前で呼んでくれるなんて光栄だな…。
いいねえ。俺の熱のこもった拳(フィスト)でルディースを救出してやるぜ。
あ、分かってるとは思うけど俺の名はエンディアだ。宜しくな!!!
今日も大胸筋逞しいわ。じゃあ、最後にシティーボーイズ…お願い出来るかしら!?
【シティーボーイズ】
エンディア様と共に鍛えて来た甲斐があったな。
勘違いしないでくれよ…、俺はハディーサだ。
皆を護衛するのはこの俺だ、宜しくな!!
よし点呼終わったな…。
レサリア、グレイスの2人も着替えは完了している…。
さあ、お前等クロスピアに乗り込むぞ!!
必ずルディースを見つけ出す…、準備は良いか?
岸辺から少し離れてある場所に不時着したクロスピアの操縦室で身動きが取れなくなっている
ルディースを助ける為、いざ進めチーム『カインドフォース』…。
クロスピア沈没まで、残り5時間――。
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