06話:グレイザーの恐怖!迫り来る魔の手!!
文字数 3,358文字
早くしろ、アルク!!
アルムを捕らえろと言ってるだろ!?
あ、あの…
な、何でアルムさんを捕らえるんですか…!?
アルムを捕らえろと言うグレイザーの発言により、事態は混乱。
ティムは誤って彼の事を「さん」ではなく、「ちゃん」と呼んでしまう。
「ちゃん」と呼ばれる時はこういう顔すればいいのか!?
グレイザー様…。
イメージダウンですよ、やめて下さい!
くそくだらねーよ。笑えない冗談だぜ…!!
ふざけやがって!!!
ティムと言ったな!
悪いが俺には迷いなどない…。
お前の可愛がっているアルムを抱き抱えてこっちに連れて来い!!!
ほう。お前俺に逆らうのか!
良い度胸しているな!! だったらこの俺が
こいつの好きな花"ビリジロード"と同じようにお前を枯らしてやろうか…。
あっー!
もしかして貴方がアルムさんの好きなビリジロードを枯らした
張本人なのですか!? 酷い事しますね…。
嫌い…。嫌い嫌い嫌い…。
くそっ!!! お前なんかこうしてやる!!!
グレイザーは「嫌い」の言葉に物凄く反応を示し、彼のスキル「枯渇」をティムに向けて発動してしまう。それをいち早く察知したアルクがティムを助け出す事に成功。
「枯渇」のスキルは近くの木に当たり、
一瞬にて根元から木のてっ辺まで腐りかけて、ズシーンと轟音を立てて倒れてしまう。
グレイザー様、気を確かに持ってください!!
我々はアルムをヒルハイドタワーにいる
ボスの元に連れて行くだけでいいんですよ。それと…
分かっている…!!
それと何故、今ティムを助けた!?
お前からしても敵だろ!?
それでも俺等の協力者じゃないのか…お前!! 何とか言ってみろ!!
彼女等はまだ子供です…。
ただ子供を傷つけるのはちょっと嫌ですので…。ただ、それだけです!
ふん! 弟の影響か…。
確かオルガだっけ? お前の弟の名前…。
そうですよ!
兄の権限として弟も協力者として働いて貰っています。
まあいいだろう…。それより
アルムの記憶の断片は何処だ?
さっきから探しているのだが、見つからないぞ…!!!
小屋内に枯れたビリジロードの花の中から出て来たアルムの探し物を探しているが、
何処にも見当たらない…。まさか…。
グレイザーさん、残念でした…!
アルムさんの探し物は私が持っていますよーだ。
さっきの可愛い顔ナイスでしたよ、グレイザーちゃん…!!
ティム、アルムを連れて逃げるよ!
この森さえ抜ければ誰かしら居るわ!!
そこまで猛ダッシュです!!!
なんと幹部の中で一番怒らせると怖いグレイザー様に挑発するティムとティーネ。
そして彼女等はアルム、そして探し物である記憶の断片を持って
必死にこの森から逃げ出す事を決意。
だけど、グレイザー様は一歩たりとも進もうとしない…。どうやら様子が可笑しい。
グレイザー様に挑発しちゃダメだ…!
何が起きるか分からんぞ…!!
って…居ない…。これはヤバい事に…。
もう許さん…。
一度ならず二度まで「ちゃん」呼ばわりするとは…。
グレイザーは彼女達の挑発のせいで、スキルを森全体に解き放ってしまう。
物凄い勢いで小屋は崩れ、そして生い茂っていた草花、樹木、そして表土…
急速に枯れ始めていく…。
****
必死に森の中を猛ダッシュしてグレイザーの魔の手から逃げているティム・ティーネも
森の異変に気付いて、辺りを見回しながら立ち止まった。もはやここは「木漏れ日の森」ではなく
植物達が枯れ果てた「死の森」…。
えー…。
ちょっとこの森薄気味悪くなっちゃいましたよー。
グレイザーさんのせいですよ、絶対…!!
もう最低な人ですねー!!
こんな美しくて清々しくいられる森をこんな風にするなんてっ!! 許せない!!
立ち止まっていると油断しているティム・ティーネに向かって「枯渇」のスキルを飛ばしてきた
グレイザー。このままでは危ない!と咄嗟に判断したアルクは…
アルクは死ぬ気で彼女等をグレイザーの魔の手から助け出そうと、自ら彼のスキル「枯渇」に飛び込みティム・ティーネを助け出すことに成功…。だが、彼の足に当たってしまい
足からどんどん上半身、顔に向かって枯れていこうとしていた…。
あ、アルクさん…。
でも、足が…足が…!
早くなんとかしないと…。
アルクさん…。私たちの敵ですよね…!?
何で助けてくれたんですか…。
そうだなあ。強いて言うなら弟の影響かな…。
常に笑顔でどんな困難にも立ち向かう、俺の自慢の弟だ!
君達がグレイザー様に挑発した時、果敢に立ち向かった。
その後ろ姿はどんな困難にも負けないオルガそっくりだった…。
君達にはまだ無限の可能性がある!
だから俺は君達を救ったのだ…。
悔しいなあ。せめてもう一回弟の顔見たかったよ…。
でも叶わないなあ、夢なんて…。このまま足が枯れて、上半身も枯れて
最終的には顔も枯れて…死を迎えるのか…。
ネガティブに考えないでくださいっ!!
きっと何とかなりますよ!! もっと明るく考えて下さいよ…!!
いや、良いんだ。いずれ自分の失態がボスにバレて殺される運命なら今ここで
死を選んだ方が楽になれるよ…。あの日に戻れたらなあ…。
足音を立てながら、ティム・ティーネ、そして死にゆくアルクの元へとグレイザーがやって来る。
これ以上喋るな、アルク…。お前またこいつ等を庇ったな!
俺様の邪魔をしたのだ、これぐらいの制裁はしないと…。
アルクの足に当たったスキルは急加速で上半身に伝わり、顔手前まで枯れ果ててしまった。
全く身動きも取れず、後は死を迎えるだけに…。
ここまでだな、俺は…。
ティム・ティーネ、俺に構ってくれてありがとうな!
弟をよろしく頼みます…。
最後にアルクはまるで弟のオルガに見せるかのような笑顔で、グレイザーのスキル「枯渇」が
顔に転移し、そのまま死を迎えてしまう…。
アルクの死という現実を目の当たりにするティムとティーネは泣き崩れてしまう。
アルクさん!!!!
弟を置いて何で死んじゃったの!?
悲しんでるよ、絶対!!!
ティムとティーネの悲痛な叫びが木漏れ日…いや死の森に無情にも鳴り響く。
そして必死にグレイザーの手から逃げていた最中にティムの腕の中で
眠りから覚めたアルムも、隠れながらアルクが死んでいく姿を見てしまった。
あ、アルクさん…。
死んじゃったのですか? 自分こそ迷惑かけたのに…。
ふう…。さてと、アルム…、
お前の探し物である"記憶の断片"を持って
こっちに来るんだ。余計な真似だけはするなよ…!
もうやめて下さい!!!
自分、グレイザーさんの言う事何でも聞きますから
ティムさん、ティーネさんに手を出さないで下さい!! お願いします。
"様"は付いてないけど、まあいいか。分かった!!
じゃあ、記憶の断片を渡せ!
アルムさん…。貴方の判断なので…
私達はどうする事も出来ません。はい、これがアルムの記憶の断片です…。
ティーネは丁重にアルムの探し物であった「記憶の断片」を渡す。
あ、あの…グレイザー…様。
アルムをどうするおつもりですか!?
気になるので、一緒に付いていくのはダメですよね…。
アルムの保護者…と言った所か!
それ位なら良いだろう…!!
(来た所でどうする事も出来ないと思うけどな…!!)
えっと、グレイザー…様。このお方はどなたですか!?
あのグレイザーも黙る程の存在となれば数は限られてくるが、一体どのような人なのかと
ティムとティーネはずっと疑問視している。
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