08話:デュードビレッジ・ダイアリー in チャートラス(part2)
文字数 4,682文字
ここは宿泊施設「スカピーノ」
皆が寝静まった頃、女性陣が泊まっている大部屋「グラマラス」に一人の男性が現れる。
物音を立てずにコッソリと部屋に入るグレイザー。
辺りは暗いけど電気なんて付けたらバレてしまう為、慎重にユズキの寝床に近づこうと忍び足で向かう。
窓の近くに敷かれているレシールの横にある布団でスヤスヤと寝ている光景を見る。
この方法しかないことを許してくれ…!
明日事が終わるまで、眠っていてくれ…!!!
やはりユズキはグレイザーの妹…。幹部とは言えども家族の為、危険な目に遭わせる事は出来ない。
彼はユズキの身体にそっと触れて目を瞑る。そして密かに呟く「ごめんな!」と…。
よし…、ディゼールの元に戻るか…。
じゃあな、ユズキ…!!
大部屋「グラマラス」を退出し、ルドスからブライドゼータ、そして
リリカルラビット、記憶の断片を奪う体力温存をしておく為、彼はディゼールの元へ向かい
睡眠を摂り始める。
****
その頃、男性陣の外泊施設「テント」をこっそりと抜け出したルドスは
トレーニング、そしてブライドゼータを振ったりして幹部二人の対策をしていた。
あの日差しが差し込む木漏れ日の森でさえ枯れた…。
グレイザーの枯渇を阻止しない限り、勝利は見えない…!
どんな攻撃を繰り出して来ても対応出来る為に、ひたすらトレーニングをするのみ!!
もちろんブルは飼い犬であるシャルドを連れてルドスと会話をしている。
やっぱり大切に飼われている為、相当懐いている様子。
シャルドはブルの事が好きなのか。相当懐いているな…!
ワンッ…!! ワンワン!!(訳:もちろんだよ…! 大切なご主人様だからねっ!)
ルドスも自宅で犬を飼っている為、ブルの気持ちが多いに伝わる。
触り方も素人とは違い、シャルドも気持ちよさそうな表情をしている。
ワン! ワンワンッ!!(訳:気持ちいいよー。ありがとねー!!)
さすがルドスくんだー!
ブライドゼータもそうだけど一筋縄じゃいかないねー。
ブル、ありがとな…! これからランニングするぞ!!
ブライドゼータを担ぎながらだからトレーニングの一環だ!! 付いて来れるか?
もちろんー!!
こう見えてシャルドはよく走るからねー。日々の散歩で足腰には自信があるんだー!
気付いたら今の時間帯、早朝5時位…。
少しずつデュードビレッジの木々が少しずつ輝きだしている。
森の小鳥たちが目を覚まし大空に飛び立つ。ここは本当に田舎のようにのどかな村のようだ。
****
そして場所は変わり、ここは以前にも登場した
クロスウッドにある何処か高い場所に設立されている施設。
ブリジスはなかなかデュードビレッジに行けなく少しイライラしている。
くそー! 忙しすぎて綺麗な夜空見過ごしちゃったー!
早くデュードビレッジに行きたいのになー!!
お、落ち着いて下さいっ、ブリジスさんっ!
あなたのスキルも禁忌…。皆怖がっています…。
何が怖いんです…?
僕のスキルが怖いのー? それとも…。
も、申し訳ございません…。以後言葉に気を付けます…。
あっ、えーっとブリジス様!
スターロードですよー! 家の前に星を眺められる道を作ってみたらどうですか?
スターロードっ!!
良いねっー!! 家の前にも星かー。
もっと近い距離で見られるなんて凄く嬉しいよー!
キルディー、その提案ありがとねっ!!
(な、何とかブリジスさん笑ってくれた…。とりあえず一安心…!)
****
時間は経ち、ここは宿泊施設「スカピーノ」、大部屋「グラマラス」
ユズキがなかなか起きなく、ティムやミントが慌てている様子。
兄であるグレイザーが妹に何かした事は分かっていない…。
確かに起きませんね。確か彼女はビアンラボのスタッフでしたよね…。
日々の仕事で疲れていると思いますよ…!
レシールさんが多分彼女の保護者に近い存在なので、面倒は彼女に任せた方がいいわ。
お願い出来るかしら?
あら。私がユズキの面倒?
分かったわ。起きたら教えるねっー。
女性陣はユズキとレシールの二人を部屋に残し、テントで過ごした男性陣と合流する。
おはよう! 外で寝るのは初めてだったけどグッスリ眠れたぜ!!
うう…。悪夢見たよー。
昨日露天風呂で会ったあのグレイザーという人に襲われる夢…。
(今確かグレイザーって言っていたような気がする…。気のせいかな?)
男性陣と女性陣が仲良く会話をしていると、遮るように訓練場のスタッフが横入りして来る。
お、確か君はライト君、そしてルドス君だよね…!
昨日は訓練場で熱いバトルしてくれてありがとな!!
君達は確か剣と拳で戦っていたけど、スキルって知っているかい?
一見拳で戦ったように見えたよね?
こう見えて僕はスキル「獣拳」を使って戦っていたんだ!
お、君はスキル所持者だったのか!
他にもスキルを使える人はいるのかい?
ここにいるリリカルラビットの4匹はスキルを使えるんだよー。
え、えっ…、マジか…!!
ウサギがスキルを使えるのは初めて聞くけど、なかなかやるなあー。
そうだなー。君達スキル診断やってみない?
クロスウッドには様々なスキルが発見されてるんだよ。
もちろんライトくんが持っている「獣拳」も初めて聞くが立派なスキル。
普通はこの大陸を冒険する者が所持するんだけど、ごくたまに例外もあるんだー。
もし君達がスキルを持ったらどのような物が与えられるか、ちょっとした診断テストさ!
お。良いぜ。その話乗った!
俺はもちろんこれさえあれば充分だけど、
どのようなスキルを持てるのか興味はあるぞ!! お前等、もちろんやるだろ!?
訓練場・チャートラスのスタッフに連れられ
横にある木材で出来た丸太小屋に入っていく。割と中は広く、このデュードフォレストを歩き疲れて
休憩している者もいれば情報交換をしている者達もいる。
シャランアゾールのギルドとは大違いだな…。
僕がここに来る前、凄い奴に声掛けられたの思い出した…!
えっ、君はシャランアゾールのギルドに行った事があるんだね…。
どうだった…、ヤバかったでしょ?
はい…。
男性なのに僕の事が好きって言われて頬すりすりさせられた…。
ああいう種族は初めてです…。正直鳥肌立ちました…!!
(ホモセクシュアル…要するに同性愛者…。
この世界にも居るのじゃな。この事はライト殿には黙っておこう…。)
よし準備完了したぞ!
この部屋に入って真ん中の装置に手を当ててくれい!! 全員一斉に頼むぞ。
そうすれば君達に適応したスキルが分かるだけじゃなく…
実は30分だけ試しに使える仕掛けになっているんだ。
それは真か…。30分では短く感じるが仕方ないのう…。
では皆の衆、あの部屋に入りましょう!
適応したスキルが分かるだけでなく、30分の試用時間がある事に男性陣・女性陣は
感極まって急ぎ足に部屋に入り、装置に触り始める。
だけど…このスキル診断にはどうやら裏があるみたい。
****
ここは大陸「クロスウッド」にある何処かの施設。
デュードビレッジの訓練場「チャートラス」から
男性陣・女性陣の個人データがその施設のパソコンに送られてきている様子。
そこにはもちろん現実世界から来たナギの詳細も。そして…。
やはりナギさんは…、これが本名ですね…。
それとビアンラボで取調中のグラスさん、
そしてミフィールさんのデータも手に入れなければいけませんね…。
ほくそ笑みながらナギの詳細をガン見する謎の人物。
この方がリリカルラビット4匹、そして幹部「マイティ―ダーク」やエディール、
そしてブリジスにスキルを渡した者? それ以外の可能性も少なからずある。謎は深まるばかり…。
****
無事にスキル診断を終わり、部屋を退出して
結果が出るのを待機室で待っている。談話しながら待っていると、カウンターで呼ばれる声が
聞こえ、早くスキルを使いたいと好奇心を剥き出しにしてやってきた。
おーい、君達ー。お待たせー!
スキル診断ご苦労様ー。診断報告が出たよ!!
ティム/跳躍(ジャンプ)
ティーネ/想像(イマジネーション)
ミント/水(ウォーター)
オルガ/風(ウインド)
ナギ/氷(アイス)
ヒョード/泥(マッド)
ティアラ/金(ゴールド)
セイラ/妖艶(ビウイッチ)
あれ…。ちょっと待って!
氷と風は禁忌スキルだけど大丈夫なのか? でもこれはスキル診断だから一時的…。
そういえば、君のが表示されていないね…。
もしかしてスキル持ってるんじゃないかな?
あれっ、おかしいなー。
僕スキル持っていたっけー。分からないよー。
(機械は嘘をつけないかー。
それとこのスタッフ、もしかして…。確かめてみる必要がある!)
よし! これで君達は今から30分間
スキルの試し打ちが出来る! 充分に楽しんで来て下さい!!
おーい。僕このスタッフさんとお話する事あるから
先に外でスキル試し打ちやっていて構わないよー。
スキルの試し打ちがしたくてしょうがない女性陣・男性陣は
外に出て、村から少し離れた場所で発動し始める。
****
その一方、訓練場・チャートラス内ではー。
えっ…!!
な、何ですか急に…、機械不良じゃないですって!
他の皆さんにはちゃんとスキル行き渡ったじゃないですか!
チャートラスのスタッフがブルのスキル表示がない事に気付き、謝罪をするが
他の人にはスキルが行き渡った為、どうも納得が出来なくてスキル診断をした部屋に
無理矢理に入れられるスタッフと何か企んでいるブル。
****
ここは先程、スキル診断をした部屋。
バレてしまっては仕方ないですね…。5人目の…。おっと申し訳ございません。ブル…様!!!
彼には今、違う所で眠って貰っていますよ…。
もう少しで例の時間です…!!
見物ですよ…ブル様!!
もしかしてブルはゼルシードの事を良く知っている人物?
意外な人物が到底思えないようなキャラと繋がりを見せる中、
遂にグレイザーとディゼールがルドスの前に現れてしまった。
来たな! 待ってたぞ…
グレイザー、そしてディゼール…!!
よう。ルドスと…ナギ…そしてリリカルラビット共!!
ここに来た理由はただ1つ!!!
言ってみろ、ディゼール…。
ルドスの持つブライドゼータ、ナギをボスの元に連れていく、
そしてリリカルラビットの捕獲…、記憶の断片の奪取。
ですよね、グレイザー様?
そうだ!
だがお前等聞いた所によるとスキルの試用時間中だろ!?
良いだろう…。30分間待ってやる!!!
思い尽くす事なく楽しめ!!! 俺って優しいだろ、ルドス…!!
遂にグレイザー、ディゼールとのバトルが始まろうとしている。
勝つのは幹部、あるいはルドス…。
ただ、その決着は思わぬ方向へと
動く事など誰も知る由もない。
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