89話:激昂のエディール!友情崩壊へのカウントダウン!!
文字数 3,436文字
エディール……、俺達は友達だろ!
絶交なんて言う言葉じゃない事、お前も知ってるだろ?
ハハハ……、冗談だろ。
お前が絶交って言うなんて…、嘘だよな!?
貴方達の目の前で "絶交" と言ったんです……。
エバスを助け、ローウェンの闇を振り払った。予定外な事を
ちょこまかとやられては困ります……。課した宿題は何でしたっけ?
邪魔者を消すようにと伝えた筈ですよ……。ところで……
はぁ…、はぁ……。
こんな程度、苦しくなんてありません……
絶交は相手を不快にさせる言葉。
エンディアさん達の友情は勉強になりました。
それを踏み滲むような行為はさすがの私でも許しません。
よくそんな事言えるな、エバス……。
貴方には期待していたのに……、ガッカリです。
禁忌スキル「浮遊」、そしてブリジス、キルディーの2人を纏めていた
元スカラダークの首領。そんな上に立っていたお方が
このような豪邸に住んでいたなんて、愚の骨頂……。
やめろ、エディール……。
エバスをこれ以上傷付けないでくれ……!
もう、俺の声も聞こえないのか?
くっ……!!
え、エバスは自分自身と戦いながら気付いたんだぞ。
躊躇いながらも闇に打ち勝った。それを嘲笑うなんて……
だから、何だ……? 私が憎いなら殺せばいい……。
こっちも怒りを何処にぶつければいいのか分からないんだ。
ヒルハイドタワーで何があったんだ!?
俺等で良かったら教えてくれよ!!
…………。
仕方ないですね。ただ、あまり長く喋りたくないので
簡潔に要点だけを纏めて話させて頂きます……
エバス宅にてエディールのスパイとして雇われた
ローウェンと対峙している間に、ヒルハイドタワーでは様々な事が起きていた。
そう、少なからずマイティーダークの猛攻を
阻止しようとしているのはエンディア達だけじゃない。
ブリジス達やジハイド所長が厳選した
ビアンラボの精鋭部隊もまた彼等の悪事を暴き、改心させる事を決意していた……。
しかしながら、スティードやゼロシード……
元マイティーダークメンバーを次々に改心させられてしまい
焦っていると思いきや、全て ″闇″ に変換し、更に膨張化させていた。
そんな時にローウェンとも通信が途絶えてしまい
このままでは不味い! と思った彼は
非情な目をしながら一等地ヴィバールにと足を運び
現在の状況を一字一句伝える事に……
まずは1つ目。
ブルさん、そしてゼルシードの企みにより
アルクが蘇生されてしまった。どういう事か分かるよな?
た、確かアルクさんは……
マイティ―ダーク、グレイザー様の枯渇により
剥製になってしまったオルガさんのお兄様……
で、その後は何だ?
もし隠し事をしているようなら、きちんと
言った方が身の為だ。何しろローウェンの命が掛かっているからな……
良心取り戻したんだろ?
私はそこまで優しくないぞ……。
悪いけど、とっておきの結末を用意させて貰った……
だったら、これから言うエバスの話を耳を傾ける事だ。
所謂交換条件……、彼が言わないとどうか分かってるよな。
わ、分かりました……。
これ以上、ローウェンさんが傷付けられる姿を
見たくありません。包み隠さずアルクさんの蘇生について語らせて頂きます……
黙ってないで何か言ったらどうだ?
どうりですんなりと事が運んでいると思ったら、主犯はエバスお前か……。
聞くけど、いつから私を裏切っていたんだ?
エバス、答える必要は無い!
俺がアイツを意地でも止める……!!
行くぞ、エディール!!!
エンディア、来てみろ……!
誰も手出し無用だ。これは私とお前の……
エディールの感情は昂ぶる事を止まらない……
どんなに説得をしても、絶対に自分の意思を曲げず
闇でいる事、そして皇帝の為に計画を成功に導くリーダーでいる事を
胸に秘めて彼は今、エンディア達と対峙している。
そう、彼の口から語られたのは
ブル、ゼルシードを筆頭に動いていたアルクの蘇生を計画していた
主犯格がエバスであった事……。これは誰にも予想していなかった″裏切り″の1つ。
彼がいつから裏切っていたのか……、そこには
超意外過ぎる真実がある事、誰も知る由も無かった。
****
ここはヒルハイドタワーに向かって伸びている一本道。
古城フィンディルから無事に抜け出す事に成功したインバとシルヴィンは
スキル「譲渡」を持つゼルシードと共に、少しずつ目的地に近付こうとしていた……
インバさん、シルヴィンさん……
もうすぐ目的地であるヒルハイドタワーに到着します。
あそこにはご存じの通り、現在幹部「マイティーダーク」の巣窟と化し、
彼等は常に容赦ない攻撃を仕掛けて来ます。覚悟は出来てますか?
おう。もちろんだ!
だって、アンドルディシアの猛攻を振り切って
古城から脱出したんだ。その勢いでマイティーダークも……
その考えはダメな気がする……。
今度の相手はあのグレイザー様がいるマイティーダークだ。
一歩間違えれば、確実に殺される。もっと緊張感を持った方が……
インバ、そんな雄著な事言ってられるか!
相手はあのエディールだろ?
奴等は計画を成功に導く為にどんな手段も使って来る……。
冷静でなんかいられるかよ!!!
シルヴィンさん、落ち着いて下さい。
確かに現段階で彼等の勢いは止まる事を知りません……
特にエディール様は禍闇の所持者。
彼に隙を見せたら最後、一瞬で闇と化しそこから先は……
止めろ……!!
泣き言は聞きたくない。何でそんなに弱気なんだ!?
もう手遅れだって言いたいのか?もうこれ以上言うなら……
来いよ、インバ。
お前の根性を叩き直してやる……!!
じゃあ、まず俺からだ……
や、止めて下さい……。
喧嘩は絶対にやっちゃいけない事……
やってはいけない事だって分かっている……。
インバの性格、分かっているのにな……。
シルヴィンの強気な性格が、友達関係でいる事に亀裂が生じ始めていた。
スキルを持って居なくても、自分には戦える拳がある。
ただ、インバの弱気で冷静さでいる性格が彼とは全く真逆の性格の為
いつの間にか刃を彼に向けて解き放とうと
インバに拳を入れようとすると……
お前等、止めろ……!
こんな非常事態に喧嘩などするな!!
止めないでくれ、ゼルシードさん……。
俺はただ注意喚起をしたかっただけなんだ。それが不意に拳として……
おい、シルヴィン……
やって良い事と、悪い事があるのはお前も
重々承知しているんじゃないのか……!?
くっ……!
でも、ゼルシードさんも色んな御方にスキルを譲渡している悪役。
皇帝に指示されてやっているんだろ? 辛くないのか?
辛い……。だからお前等の気持ちはわかる。
しかし、俺は自分にこう言い聞かせている……
″拳で語る喧嘩なんてない。友達で居る以上、それだけで仲間意識は強くなるんだ!″
君達はまだ仲直り出来るチャンスがある。
どうだ、笑顔で握手してみないか?
そうですね。シルヴィンさん……
俺……もっと自分に自信を付ける為、精進します。
でも、焦りは禁物。その意思だけは曲げません……
色々と迷惑かけてすみませんでした。
インバ、俺こそ済まなかったな!
お前の気持ちも分からずに、攻撃的になった事許してくれないか?
ありがとな!!
じゃあ、気を引き締めてヒルハイドタワーへ行こうぜ。
ここに来る途中まで、沢山笑い合って話していたインバとシルヴィン、そしてゼルシード。
微笑ましい光景、そして喜怒哀楽ある会話……
友達だから出来る手繋ぎ、一緒に明るく歌ったり
本当に信頼し合える仲間だから出来る事。
2人の些細な喧嘩もいつの間にか、彼を通して仲直りをしていた。
(仲直りして良かった……。
さてと、俺も ″弟″ の為に頑張らないとな!)
その時、ゼルシードの背後に禍々しい煙が突如として発生し、
その中から右手が出て来て、肩をポンッ と優しく触ると……
あっ、そうでした。
ゼルシードさんに1つ聞きたい事があるんですけど……
話聞いて貰っても宜しいでしょうか?
全く彼の応答、そして気配が無いと気付き
2人が後ろを振り向くと……
そこにはもう……、ゼルシードの姿は……ない。
草原に吹き抜ける風、大地に咲く無数の花、力強く根付いている木々達が
もしかしたら彼の行方を知っているのかもしれない。
次回へ続く。
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