17話:嘆きのカウントダウン!ルドスvsゼロシード!!
文字数 4,140文字
大陸「クロスウッド」の "とある場所" 。
ルドスは背中に背負ってたブライドゼータを手に持ち替え剣先はゼロシードの方を向いている。
彼の目は今にも殺しにかかってきそうな目をしている様子…
そうだ。それでいい…
さあ、俺をとことん楽しませてくれ…
まずはお前から来い!
俺もお前を全力でぶっ倒してやる…。
暗殺者か。お前こそ俺に相応しい相手だ…
どうせ、グレイザー様よりかは弱いと思うけどな!!!
ルドスは挑発をしながらダッシュし、彼の前に現れブライドゼータを一振りする。
必殺技ではないがお手並み拝見のような攻撃をまずは仕掛けていくが、
ゼロシードは彼の攻撃をビクともせず常に冷静かつ非情な目をしながら受け流して行く。
何だ…その初心者が出すような剣術…
お前、ブライドゼータを使いこなせているんじゃないのか?
もっと楽しませてくれないと…困るんだよ!!!
俺も本気になれないじゃないか…
なっ! こ、こいつ…。
俺の攻撃をまともに食らったのに…倒れない!
だったら次の技でお前を倒す…。
良いぜ。ブライドゼータの力を見せて見ろ!
そして俺を殺しに来るがいい…
三日月のような形をした斬撃が轟音を成しながらゼロシードの腹部にクリーンヒットするが
まるで何事もなかったかのようにただ血を吐いてマスクが赤くなっただけで、効いているのか
効いていないのか全く分からない。
こいつマジでヤバい…。
あのクレセンティアを普通に喰らっても倒れないなんて…
こいつ…、グレイザーと同じ位強い…!
一体何者なんだ…。
良い技じゃないか…
さあ、お前に苦痛を味わって貰うぞ!
俺はゼルシードという奴からスキル「黒鴉(くろがらす)」を戴いた…
ならそのスキルを使って俺を殺しに来てみろ…。
そしてブライドゼータを盗んでみろよ!!! おい!!!
そうか。お前、まだあの時の反省をしていないようだな!
ここまで俺に挑発したのはお前、ルドスが初めてだ…
何の事だ…!
あの時の反省…!?
お前頭大丈夫か…。血を吐いて可笑しくなったんじゃないのか…
俺の鴉は獰猛なんだ…
お前のような奴にはちょうどピッタリだ!
さあ、行くぞ、ルドス…。
ゼロシードは思い切り両手をバン! と叩き、力を込めて叩いた両手を前に押し出す。
物凄いパワーを誇る鴉を手から出し、弾幕のようなスピードでルドスの
腹部に見事にクリーンヒットする事に成功。
彼は今いる場所の壁に吹き飛ばされてしまい、地面に強く身体を
打ち付け大ダメージを負ってしまう。そして手元からブライドゼータが離れ
ゼロシードの元に飛ばされていく。
うぅ…。つ、強すぎる…。
こ、降参だ…!!
仕方ない、素直に負けを認める…
ただ、降参という言葉はゼロシードには全く聞こえていなく
強いオーラを出しながら壁の近くで仰向けで倒れているルドスの元に表情を何1つ変えることなく
近付き、彼の腹部を足で思い切り踏み付ける。
腹部を足で強く押され、今までに見た事がない量の血を吐いてしまうルドス。
彼の悲鳴は時に冷たく辺りを包み込む。
グハッ! い、痛い…!!!
お、お願いだからもうやめてくれ…。
し、死にたくない…。ここで俺は終わっちゃいけないんだ…。
やっぱり、痛いだろうな…
同じ苦痛を俺の弟も味わったことがある。
そう、お前にな…。本当に覚えがないのか?
そうか…残念だ。
グレイザー様、ルドスからブライドゼータを奪った…
後は貴方の指示に従う…!
ぐ、グレイザー…だと。
近くにいるんだな! 隠れてないで出て来い!!
あの時の仕返ししてやる…!!!
コツコツと足音を立てながら、まるで獲物がこっそりとこっちに近付いて来るような雰囲気を
醸し出しながらグレイザー、そしてディゼールの二人がやって来る。
どうやら彼等二人にもルドスと対峙している事はエディールから
連絡が入っていて、リオルドを捜索しながらも駆け付けていた。まさに最悪のシナリオ…
おやおや、ルドスさん…。
デュードビレッジの時はお世話になりました。
何ですか…その無様な格好。良い気味です…。ですよねグレイザー様?
よう、ルドス。
どうだ? スティードに裏切られた気分は…
そんな身体で俺を倒せると本気で思ってるのか…!?
くっ…! 何がどうなってる…。
俺が何かしたとでも言うのか!!
無我夢中であのファイナルバトルオーディションに参加しただけだぞ…。
あの挑戦者も弱かったし、途中で誰か乱入して来て邪魔だったから顔を踏ん…だ…。
ま、まさか…!!
ルドス、お前もう一回ゼロシードの顔を見て見ろ…。
瞳は違うけど、目の形…そして髪型は
大好きな弟と統一してるんだ…
ファイナルバトルオーディションで最後に戦った相手を遂に思い出す。
そしてルドスが忘れかけていた記憶の一部が蘇っていく…。
(よろしくね、ルドスさん…。
頑張って幹部入りしたいんだ…!! 勝たせて貰うよ…。)
そ、そうか…。
俺の挑戦者はゼシアだったのか…。当の今まで忘れてた…!!
どうやら思い出したみたいだな。
そうだ! 俺の弟はゼシア…。
お前に腹部を思い切り踏まれて大量吐血したゼシアの兄なんだよ!!!!
様子見にあの会場に向かっている最中、
グレイザー様の娘さんに会ってゼシアを担がれているのを見た。
その直後、お前にも一回擦れ違ってるんだ…。
その様子だとやっぱり気付いていなかったか…
ゼロシード、お前の弟を傷付けた事は謝る…。申し訳ない!
暗殺者になった理由も俺が許せないと言う事も分かる。
だけど、お前それでゼシアが喜ぶと思うのか?
俺は弟が好きなんだ…
弟のためなら何だってする。そう決めた…
だけどな、ルドス。一番の犠牲者は俺じゃないぞ…グレイザー様にも謝れ…!!
弟のたった一人の友達だ。お前そんなグレイザー様の顔を踏んだ…
どういう事か分かってるんだろう?
ふん。俺の顔を踏んだ事はチャラにしてやる。
ただ、頬に傷を付けたのは許し難い行為だ!
さてと…。こんな所にブライドゼータがあるなんて好都合だ。貰っていくぞ!!!
ヒルハイドタワーから盗み、いや
取り返したブライドゼータはグレイザーの手に渡ってしまい、ルドスは戦う術を全部無くしてしまう…。
お前を暗殺する気力が失せた…。
ブライドゼータがグレイザー様に渡った以上、お前を暗殺する事はもうしない…
ただ1つだけ約束して欲しい…
さあ、リオルドの捜索続行致しましょう…。
ゼロシードさんは新しい幹部の二人に
挨拶しにヒルハイドタワーへ向かってくれませんか?
は? 新しい幹部だと…。教えろ!!!
だ、誰なんだ…!!!
やはり興味を示しましたね、ルドスさん。
貴方もよく知っている顔ですよ…。
ふん。ブライドゼータを頂いたからな特別に教えてやろう。
一人目はブル、二人目はナギだ…
お前が信じた仲間も今は俺等のメンバーだ。
………!!
ブルは予想していたけど、まさかナギまでもが…。
な、何でなんだ…。
スティードには裏切られる、ブルやナギにも
裏切られる…。ぐ、ぐ、おのれ、グレイザー!!! お、お前よくも…。
そうだ。俺は恨んでみろ…
その憎しみはいつか悪に変わる。
そのせいで俺は幹部になったんだ、お前に顔を踏まれたせいでな…!!
せ、せめて…ナギだけは解放してやってくれ…! 彼は現実世界の人間なんだ…。
お前を許さない…。俺もビアンラボの職員だ!
お前を阻止するまではこの身が朽ちようと追い続けてやる!!
ブライドゼータを突如として構えるグレイザーは
もう片方の手に自分のスキルを溜め始める。剣は突如として光を放ち、スキル「枯渇」と共鳴する。
思った通りですね、グレイザー様。
やはりルドスさんはブライドゼータを使いこなせていなかったようですね…
彼にこの剣の真の力を見せてあげて下さい…。
おい、ルドス。よく聞けよ…
ブライドゼータは "禁忌スキルと共鳴する剣" なんだ…
だからお前が持っていても無意味だ。悪いな…
そんな事はどうでもいい…!
俺はブライドゼータを真の所有者に返す。
ただそれだけの為にヒルハイドタワーに入って取り返した。
決して盗んだわけではない…! だから返せ!!
ルドスの「返せ」と同時に彼等の元にダッシュし始め
死ぬ気で取り返しに行く。それを剣を持って嘲笑うグレイザーは
自分の枯渇エネルギーを剣に注入し始め、更に強い光を増していく…
剣を一振りしただけで今彼等がいる場所の壁面がバキバキと音を立てて
崩れていき、ルドスは壁面に衝突した反動で瓦礫に押し潰されて
思い切り血を吐きながら倒れてしまう。そして気絶…
ただ…幹部であるグレイザー・ディゼール、そして暗殺者ゼロシードは
周辺が崩壊しても微動だにせずルドスを嘲笑っているだけ…。恐るべし…
お見事です、グレイザー様。
ようやくブライドゼータが手に入りました!
これでエディール様もお喜びになりますね…
ああ。これでルドスとの決着がついた…
さあ、リオルドの元に行くぞ!
ゼロシードはヒルハイドタワーに急げ。
圧倒的な力により、ルドスの制圧に成功…
更に勢力が増した幹部「マイティーダーク」は止まることを知らない。
****
数分後の出来事…
壁の崩れる音に気付いた通りすがりの人が、その場所へとやって来る。
あら、いやだ。確かルドスちゃんだったわねん…
血がいっぱい流れているわん。早く応急処置しないと…っ!
ルドスを瓦礫の山から助けたのは
シャランアゾールで働くBAR「ラブリーデイ」のママ、「ドロア」。
彼をおぶって急いで店内のソファに寝かす中
常連と思われる一人のお客が気絶しているルドスの元に近付く。
大変じゃないか…!
あちらこちらに痣もあるし、大量出血もしている…。
ちょっと悪いけど、ドロア…タオルを貸してくれないか?
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