70話:ヒルハイドタワーの刺客達!ブル・ブリジスの友情物語!!(後編)
文字数 5,868文字
エディールの協力者であるスティード……、
襲い掛かる闇の魔の手から見事に彼を救出する事に成功。
彼は躊躇っていたのだろうか?
幹部「マイティーダーク」のボスであるエディールの協力者として暗躍していた為
ビアンラボでずっとスパイとして任務を実行していた時も
ボスの指示に背かないようにバレずに職務を全うとしていた。
もっと職員達と親身になって接する事も出来た。
職員達にあまり感情移入する事も無かった。ただ、彼の脳裏の片隅にあった誕生日の記憶。
祝われた事が無い彼からしたら至福の瞬間、どんなに嬉しかった事か。
もう迷わない。と決断したスティードは
再びビアンラボのスタッフとしてジハイド所長含めユズキ達に歓迎されていた。
またビアンラボに復帰出来るなんて、夢のようです。
今までの分、もっと皆さんと御近付きになれるように頑張ります!!
おう。ただ、まだビアンラボには戻れないぜ。
上の階に行かなければいけないんだ。ナギを改心させないと!!
彼もかつては俺等と一緒に過ごした仲間……、なんだろ?
だったら、仲間を救いに行くしかないだろ!?
オルームの善の力を見せ付けてやれば、ナギも改心して幹部の道諦めてくれる筈だ。
さあ、俺達もブリジス達と合流しようぜ。準備はいいか?
もう後には退けない……と言う事か。
分かった。エディール達の悪事を暴き終えるまで全てを見届けるとしよう。
オルーム、お前も記憶を取り戻す事が辛いかもしれない。
父親としての自覚なんだ。分かってくれるか?
ソルノーゼがオルームに託した
"キューツ"という力には時間制限がある事が判明。
彼の口からどのような効能があるのかは聞かされていないけれど、
それほど身体に負担を与える能力である事は間違いない。
ただ"善"である気持ちが強く反応する度に自動的に水色のオーラを発揮する事は可能と聞いた為
またリオルドの役に立てると微笑みを交わす。
そしてオルームは覚醒前の服装へと戻って行く……。
これがソルノーゼさんから頂いた"キューツ"の力ですか。
必ずモノにして見せます。そして今度はリオルドさんだけではなく
精鋭部隊の皆さんにも役に立ちたいです!
お、自信持って言えるまでになりましたか。
じゃあ、期待に応えても宜しいですか?
じゃあ、次はナギの出番だ。早く上目指して行こうぜ!!
****
10階での激闘を終えたジルバは無事にゼシアの兄兼暗殺者であるゼロシードを改心させる事に成功し
彼を仲間に迎え、15階にあるブライドゼータ、そしてグレイザーのスキル「枯渇」で枯れ果て
剥製化になったアルクを保管している部屋に向かおうとすると……
階段がある大広間の真ん中で堂々たる姿で立っているナギの姿が。
お願いだよ、ナギくんっ!
僕達は攻撃をしたくないんだ。一緒に冒険した仲間じゃん?
ふん。俺はエディールの闇に共感を覚えた。
いくら一緒に過ごしたと言えども、どうせ少しの期間だろ?
そんな事とっくに忘れたよ。
早く戦闘の準備をしなよ。何だ?
俺を攻撃出来ないのか!? ふん、笑わせるな。
だったら氷結の標的はブリジス、お前からだ……。逆らった罰だ!
ゼータのZ、クロスのXの形をしたナギの氷結技が
ドシッ と15階の大広間全体に響くような轟音を成しながらブリジスの元に襲い掛かる。
しかしながら、ブリジスのスキルはもう既にゼルシードに返却している為
彼が繰り出した攻撃を受ける事しか出来なく、見事にクリーンヒットしてしまい床に倒れ込む。
うっ……、まだ前回のダメージが残ってるのに。
このまま死んじゃうよ。スキルなんて返却しなければ良かったのかな?
そんな事ない。ブリジス、お前が下した判断は間違ってない。
エディールはその隙を見つけて闇を植え付けて来る事分かってる筈だろ?
ネガティブに考えたら奴の思う壺だぞ!
だけど、僕はどうしてもナギを助けたいんだ。
戦わずに彼を助けるには、一方的に攻撃を喰らうしか手が無い。
ブル、もうダメだよ。やっぱり僕には……
僕はブリジスさんを笑顔にさせる事しかしないよっー!
泣いたら皆を悲しませる事になるからねー。
本当ならナギくんにもこの笑顔を見せたいけど……
元幹部ブル、お前とサシで戦いたかったぞ。
さあ、来い。エディール様に逆らった罰としてまずお前を処理する。
本当ならここにいる全員を氷結で凍らす手筈だった。
標的が1人になった事、喜んでくれるよな?
ブル、お前1人で戦うのか?
捕縛だけじゃナギには勝てない。俺もサポートするぞ!
大丈夫だよ。ナギくんの気持ちは僕が一番分かってるからねー。
必ずナギを改心させて見せるんだー!
もう彼が苦しむ姿は見たくないんだもんっ!!
そのつもりだ。次はナギの笑顔を見る番。行くぞ、ナギ!!
じゃあ、お構いなしに俺からやらせて頂くぞ。
早くしないとエディール様に怒られてしまうからな!
現実世界からやって来たナギ、本名「白川凪(しらかわなぎ)」。
デュードビレッジでエディールに目を付けられてしまい彼も幹部の1人になった。
今まで何人ものたる手下が目の前で闇に墜ちていく姿を目撃している為
絶対に逆らう事は出来ない。それ以降、彼の闇深い性格に賛同する事になり
現在もエディールを支持する者へと変貌してしまい、今に至る。
彼の揺らぐ事ない意思と共に、
氷なのに赤く染まった如何にもやばそうな究極奥義みたいな技を繰り出す。
さすがにこれを喰らったら一溜まりもないと思い、
ブルも必死の抵抗をするべく捕縛の必殺技を繰り出す。
捕縛でナギの技を阻止するモノがなければ、この必殺技で意地でも取り戻してやる!!
円を描くように右手を回し始め、徐々にエネルギー弾のパワーを最大限に溜めて行き
徐々に迫って来ていた氷結技に向かって打ち放つ。
ナギの最終奥義 対 ブルの必殺技はぶつかり合いになって
大広間の真ん中で火花を散らしながら今にも爆発しても可笑しくない状況に陥っていた。
くっ……、もっと強く。ブルを始末!
そして皆を蹴散らす程に……!!
み、皆伏せてっ!
ば、爆発する。ジルバさんっ、皆さんを!!
お、おう!!
えっと、これだ……。ブラジェイドシールド!!!
爆発寸前だと言うのに、ジルバは急いでブルを中心にバリアを張り巡らせて
わざと技のぶつかり合いを免れようと必死に皆を守り始める。
ここにはリリカルラビット、そしてグレイザーの妹であるユズキもいる。
皆を守りたいゼシアの気持ちが一際光彩を放つかのように姿を成して行く…
その一瞬、ブルは見逃さなかった。
ナギの態度に異変を感じる事を――。
(やっぱりブルさんは強いですね。出来るならこんな事したくないんだ……)
(やっぱり、ナギさん……自分自身と戦っていたんだ。
分かるよ、その気持ち。僕もそうだったもん!)
2人のぶつかり合った技は小規模クラスの爆破を
ヒルハイドタワーの象徴的である周りに張り巡らされているガラスは
バリバリッ と音を成しながら全壊されてしまう。
その際に発生した爆風と共にナギは飛ばされてしまい、下の階が見える吹き抜けから落ちる寸前…。
しかしながら、何とか死にたくないと必死で柵にしがみ付き、
何とか柔軟な体型を活かして落ちるのを自分の力で阻止した。
ふぅ……、危なかった。
こ、これは俺のミスだ。こんな事になる筈じゃ無かったのに。
技のぶつかり合いとは言えども、ここは現在幹部「マイティーダーク」の根城、ヒルハイドタワー。
皇帝と共に企てた計画は何処にも隙が無い為、予定以外の事をされると気分が悪くなる。
今のナギとブルが繰り出した攻撃も予想外――。
爆破と同時に周りに張り巡らされているガラスが全壊された時の衝動が最上階に伝わって来る。
さすがにこの事態に関して避ける事は出来ない。
禍々しい煙がナギの付近に立ち込め、不協和音を奏でるように
最上階にいたエディールは嘲笑いながら彼等の前に現れる。
ナギさん、貴方一体何をやってるんだ!?
私達の計画に置いてヒルハイドタワーを壊すなんて、やってる事可笑しくないか?
す、すみません。つい始末するのに力加減が出来なくて。そ、それと……
俺はもう幹部は止める。
それに、ブルとブリジスが俺の心に訴えかけて来たんだ……。
エディール様、俺と一緒に悪の道を止めましょう。今ならまだ間に合いますって!
…………。
イヤです。何を腑抜けな事を言ってるんですか?
私に光などありません、もう後戻り出来ないんですよ。
ブルとブリジスの想いがナギの心に響き
幹部の道を辞める事を宣言する。しかしながら彼の想いはエディールに届く事など決してない。
もうナギには闇に墜ちるか、現実世界に帰れないまま死を迎えるだけに絞られていた――。
さすがに両方の選択肢に未来など無いと判断したジルバは
彼の猛攻を振り切ろうと切断の技を背中に当てたのはいいけれど、痛くも痒くもない……。
来ている洋服も破れる事なく、背中のツボを押してマッサージしているかのように心地良く感じている。
気持ち良いな……、なあ、ジルバ。
どうやら私を完全に怒らせたようだな。
リオルドの資料を盗んで置いて良かったぜ。おい、ナギ。
お前、現実世界で"就活"やってるんだよな!
何社も受けてダメなんだろ。所詮お前を必要としてくれる場所なんて無いんですよ……。
グレイザーの両親抹殺、そしてファーニブルを崩壊に導いた時の表情になるまでナギを追い詰める。
エディールに関わった人はこのように深淵の闇に包まれて姿を消して行ったり、
そのまま死を迎える人が多い。もう彼の目には
逆らったナギをどのように始末するかだけしか映っていない。
隙など見つけなくても、この状態の彼には十分に注ぎ込む事が可能。
その為、ナギの様子も漂ってはいけない闇のオーラが充満し始めていた――。
…………!
何で俺の事見てくれないんだよ、一生懸命やって何が悪いんだ。
毎日スーツ着ているのが無駄だって言うのかよ。
やっぱり俺にはダメだったんですね……。
だ、ダメだ。エディール様の口車に乗ると戻って来れなくなる!
ナギ、君にだって長所あるんでしょ。それをもっと大切にしないと……く、苦しい……。
はぁ、はぁ……、苦しいだけだ。
もう俺は現実世界へ帰れない。ならいっそ、此処で死んだ方が楽になるのかな。
就活なんて俺には無理だったんだ。じゃあな、ブルにブリジス……、そして皆。
そうだ、落ちるんだ……。
これで息の根は止まる、哀れな最期を迎えて残念だな。
…………。
貴方達は始末するのがもったいないので、もう少し生かして置きましょう。
ただ私に勝てる人なんて誰一人居ない事忠告して置きます。
ちゃんと無礼がないよう、では失礼します。
15階の大広間に漂う煙の中へ消えて行くエディールを見計らい、
ブルとブリジスはとある決意を固める。
そうだねー。必ずナギさんを助けるから皆待っててねー!
必死の思いでナギを何としても助け出そうと
さっきの爆破で割れた窓から飛び降りる。
ただ、ここは15階。気流のせいで上手く滞空を維持するコントロールが出来ずにいる。
もう少し、あと少し……の所で
ようやくナギの腕を掴み、苦しみながらも
上手くバランスが取れていない彼の表情を目の当たりにする。
うわああああああっ!!
や、止めろ。ふ、触れるな……、どうせ俺なんて!
お願いだ、ナギさんっ!
元に戻ってよー。もう楽になっていいんだよー!!
だったら、ここでナギくんにとびっきりの笑顔をしてあげませんか?
もしかしたら彼の闇が浄化出来るかもしれませんよー。
もう苦しまなくて良いんだよー。大切な友達だもんっ!!
これが僕のとびっきりの笑顔だよー。どう、ナギくん!?
可愛いでしょー。やっぱり笑顔で居ないとねっ!
その時、ナギの禍々しい闇のオーラと憑依したような目付きが
彼等の笑顔によって浄化されて行き、エディールが彼に与えた禍闇の効果が切れて
滞空時と言うのにも関わらず煙に包まれ、この世界にやって来た時と同じ"和服"に戻って行く。
ブルさん、ブリジスさん。
ようやく其方達の言葉がしかと聞こえました。
そう言う風に思ってくれているなんて、少し照れますね。
2人の友情が拙者を助けてくれたんですね。本当に感謝です!!
ナギさん、今はそんな事よりこの状況を打破出来る術を見つけて下さいよー。
えっと、ここは……。
はっ、上空ですか!? 拙者は氷結だから何も出来んぞ。
えっ、ちょっと……! ど、どうするんだよー。
じ、地面に衝突しちゃうよー!!
地面に衝突する寸前、
ドドドッ と地響きを立てながら
ヒルハイドタワーの近くを偶然にも通り掛かった何者かが
ナギとブル、そしてブリジスをダンベルを軽々しく持っているかのように
両手を大きく広げてキャッチをする。服装から見える逞しい広背筋がキラリと光り出す。
よっしゃあ、キャッチしたぞ!!
お前等、大丈夫か? 空から落ちてくるからビックリしたぜ。
助けてくれてありがとー!
お初にお目に掛かるねー。僕はブルって言うんだー。
うわあ。凄い筋肉してるねー。宜しくねっ!! ちなみに君の名前は何て言うのー?
【エンディア】
俺はエンディアだ、宜しくな。何かお前を見てると笑顔がしたくなるぜ!!
俺達は笑顔をするのが大好きなんだ。なあ、ハディーサ?
【ハディーサ】
ハディーサだ、宜しくな。
あっ、笑顔代表のブリジスだ! 噂は聞いてるぜ。
常にどんな時もスマイルをキープする姿勢、見習わないとな。ですよね、エバスさん?
えっ、エバス様!? 何でここにいるんだ。
エンディアさん、ハディーサさん……逃げて!!
なに人聞きの悪い事おっしゃってるんですか?
久し振りですね、ブリジスさん。
私はもう大丈夫ですよ、もうエディールの傘下ではありません。
ほら、見て下さい。服装が違います。
現在清々しい気持ちに浸っております。
あっ、そうだ。皆さんも自宅でパーティーをするので
是非お越し下さい。今までの詫びも込めて歓迎しますね。
そういう事だ。俺等は護衛をしてるんだぜ……!
そうか。お前等はエバスさんの知り合いだったか。
だったら俺等が守ってやるぜ!!
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