73話:熱血エンディアの陣!シルディートの猛攻を振り切れ!!(後編)
文字数 4,820文字
【前回までのあらすじ】
ビアンラボを襲撃している殿方は
皇帝のお膝元である暗躍組織「アンドルディシア」のメンバー、シルディート。
かつてシャランアゾールを崩壊に導いたオルームや弟クロスに扮していたのは
彼が持つスキル「変装」のお陰……。
皇帝、そして幹部「マイティーダーク」の理想を貫き通す為、"邪魔者は常に排除"を心得ている
彼はスカラダークが成し遂げなかったビアンラボの襲撃と崩壊を目論む。
クロスの変装を見破られてしまった彼は急いで、オルームに変装し"殲滅衝動"に駆られ
会議室にいる女性陣を次々と追い詰め、遂にグレイスも戦闘不能に陥る中、
チーム「カインドフォース」の男性陣、そしてエバスが到着し
激怒しているリーダー、エンディアは彼を屋外に呼び
今、エンディア 対 シルディートのバトルが幕を開ける――。
夏を司る神「炎帝(えんてい)」のように神々しさをキープした状態で彼にタックルを決める。
彼が通った道に生えていた草花は燃え始めていく。
小町『テディシア』の宿泊施設で記帳ノートに書かれた文字から
火が込み上げ燃えてしまったのも全ては彼が持つスキルのせい……
彼は微動だにしていない以上に、避ける事もしない。
わざとエンディアの攻撃を一方的に喰らっているように見える。
まるで一発逆転を狙っているかの如く、ひたすらシルディートは彼に挑発を次々に仕掛けて行く……
集中的に凄まじく燃え上がる炎を纏い、宇宙から飛来してくる隕石のように
シルディートの元に墜落し、その場から物凄い爆風を上げた為
彼の周りは突如として焼け野原となり、彼は結構なダメージを喰らい、上空を見上げながら倒れて行く。
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ここはビアンラボの後ろにある大木――。
オルームに扮装したシルディートのせいで傷を負いながら
倒れていたグレイスを治療する為、エンディアの仲間であるハディーサが手当てをしていた。
結構タフな一面を持つグレイス。肉体派の弟を持つだけの事はある! と実感した
ハディーサは彼が無事で居てくれた事が何よりも嬉しく、彼の頑張りを評価してあげた。
その時、何かがドカーン と落下した轟音を聞き取った2人は
エンディアの身に何があったのでは! と思い少しずつ心配になって来ていた……。
窓ガラスや色んな破片が散らばっているビアンラボ、3階会議室――。
シルディートの攻撃により腕を負傷させられてしまったティーネは涙ぐみながらも
チーム「カインドフォース」のメンバーであるユリシールとシスティアの
治療と優しい対応により助けて貰った事を感謝している。
ただ、彼の凍り付くような目付きを覚えてしまった為、彼女は足を震わせながら怯えている……
治癒/麻痺や混乱、眠りなど。外敵やモンスターから攻撃を受けた時に貰う状態異常を回復するスキル。
快癒/主に人間対象で、病気や怪我を治療するスキル。
ティーネは一呼吸を整えて、ユリシールから親切な対応で傷を負った腕の手当て、
そして足の身震いを腕の良い看護婦のように一つ一つ丁寧に治していく。
ユリシールさんとシスティアさんのお仲間が戦ってるんですよね?
それにもしリフィーちゃんが外に出ていたら、巻き添えになった可能性も……
2人とも大丈夫か、心配ですよ……グスン。
女性陣の中で唯一のビアンラボ職員であるセイラと共に
半壊した部屋をくまなく捜索するけれど、彼女の姿は何処にもいない。
それと同時に外から何かが墜落した衝撃音を耳にした為、彼女の行方と共にユリシールとシスティアの
仲間であるエンディアの無事も祈る事しか出来なかった。
ただ、その衝撃音がエンディアが放った「メテオフレイム」の技が墜落した音とは知らずにいた――。
ビアンラボから少し離れた草原――。
ハディーサとグレイス、そして女性陣の証言通り
彼等が聞いた音はエンディアが放った必殺技。
上空を見上げながら倒れているシルディートの周辺は焼け野原と化してしまう。
ただ彼は攻撃を喰らいながらも、「私は選ばれた人間なんだ!」と自負しながら
地面を強く叩きながら悔しがっている。
わ、私は…、こんな所で負けちゃいけないんだ。
何でだよ。お前の方が一枚上手(うわて)だと。ふざけるな……!
ここまでの人間なのか? これじゃ、皇帝に顔立てが出来ないんだよ……!!
だったら残る一手はこれだけしかない……。
嘲笑うかのように皇帝が現れる――。
ヒルハイドタワーに暗躍しているボス、エディールが
幹部「マイティーダーク」のメンバーを仲間だと信じているように皇帝もまた
暗躍組織「アンドルディシア」のメンバー1人1人を大切にしている。
誰一人欠如する事なく計画成功。
それだけを闇に隠れた何処か奥の方にある心に潜めている。
リリカルラビットを使った計画はもちろん彼等からしたら悪事そのもの。
シルディートのピンチに駆け付けてきた理由は連れ戻しに来た……、ただ、それだけ。
エンディアが炎に包まれながら、突如として皇帝の元へ猛ダッシュし始める。
その直後、片手だけで突進して来たエンディアを喰い止めてしまい
そのままパワーを溜めるかのように拳を握り、地面へと叩き付け大きな穴を開けてしまう。
想像を超えた皇帝の力にねじ伏せられてしまい、彼は久し振りに吐血をしてしまい
戦闘不能には陥っていないけれど、少し苦しそうな表情をしている。
いくら戦闘で必殺技を2発繰り出しても、結局は改心させる事が出来なかった。
嘲笑を込めた表情でバイバイ と手を振りながら彼の元から
居なくなって行く皇帝とシルディート。
もしかしたら苦しんでいたかもしれない……!
助けられないのが悔しい……!
膝を地面に付け、「くそっ!」と何度も言い放つ彼の表情から涙が零れていた……。
それと同時に仲間である彼のピンチに駆け付けたのはグレイスとハディーサ。
どんな時でも後押ししてくれて、辛い時や哀しい時でも
絶対に弱気にはならないで慰め合う姿は決してそう簡単には出来ない。
強い信頼関係が無いと生まれない。エディールを助けたいと言う強い気持ちが彼等を更に強くさせる。
さっきまで悔し泣きしていた彼の表情が、笑顔へと包まれて行く……
その時、さっきビアンラボから姿を消した少し焦り気味のリフィーが彼等の元へと駆け付ける。