68話:真オルーム始動!ビアンラボ精鋭部隊危機一髪!!
文字数 5,052文字
【前回のあらすじ】
ミフィールを連れたエバス、チーム「カインドフォース」の2組が
いよいよ北西の海に不時着したクロスピアへと潜入し、
コントロールルームにいるルディースを求め動き出す。
先に見つけたのはエンディア達、二番目にエバスとミフィール。
ただルディースはヒルハイドタワーで暗躍しているエディールを止めたいと願っている。
その為には必要以上に要求してくるエバスを改心させる事と判断し、
身内である彼女は父親を抱きしめ想いを吐き出す。
エディールに逆らうと闇に墜ちる、あるいは殺されてしまう。
それは自分だけで十分とクロスピアの沈没と共に自決する事を誓って
当館諸共海底へと沈んで行くが、何とかルディースの見知らぬ力によって助け出される事に成功。
****
ここはヒルハイドタワー最上階。
エディールは続け様にゼロシード、エバス…2人の闇のオーラが消えた事をいち早く察知して
自分の手下が少しずつリタイアして行く寂しさに駆られていた。
…………。
続け様にゼロシードさん、エバスさんお二方の闇のオーラが消えて行きます。
私はただ一緒に計画を成功させたかっただけのに…残念です。
俺達がいるだろ?安心してくれ…、エディール様の為に計画を
邪魔する奴は徹底的に排除させて頂く。だよな、ディゼール!?
もちろんです。私はエディール様を気に入って
必死に頭脳を駆使してバトルトーナメントオーディションを通過したんだ…
あの時はまだ無所持だったスキル、今はある。目に物を言わせてあげますよ…、フフフ。
俺はヘマした分、認められる為だったら何でもやる…。
名誉挽回するんだ。ミスをしたらエディール様に
始末させられる恐ろしさを知ったからな…
もう決めた事は絶対に曲げない...。 ノルドイド、お前はどうなんだ!?
決まってるじゃん。奴等…次はナギが相手になるんだろ?
まだ新入りだけど氷結持ってるんだ。
同じ幹部のメンバーを信じないなんて俺には出来ない…!
悪を誓った仲間だろ?
【男A】
(えっ!? 男なのに私って言うの…? キモっ…!)
【男B】
(うわあー。ねえ知ってる? エディールと遊ばない方が良いんだよ。
僕にも不幸が回って来ちゃうよ! ねえ、向こう行ってくれない?)
【男C】
(おーい。ボール貰ってきたから蹴って遊ぼうぜ…!!
げっ、エディール。お前は誘ってあげないからな。行こうぜ…!)
立ち去る3人の子供を見て、涙ぐむエディール。
彼の子供時代は悲惨。家にいても両親からの虐待、スクールにいても
友達は全く出来ずにただ勉強に打ち込むだけの日々。ただ、彼の凄絶過ぎる過去はこれだけじゃない…
(また、ダメか…。
いずれ友達になってくれる人…現れるよね。
な、何だろう。涙が…止まらないよ。笑ってるのに…)
でも、いいんです。
グレイザーさん達も立派な私の友達。
それは、ナギさんもまた然り。邪魔者の排除、宜しくお願いしますね。
こっちはいくらでも手があるんです…。ですよね、ナギさん。いや…
****
ヒルハイドタワー…、1階――。
闇に墜ちたスティードに捕虜されていたリオルドとオルームも黙っている事が出来ずに
対策を施すけれど、聞く耳持たない為全く無駄。反感を買ってしまい彼の攻撃の刃が差し迫るその瞬間…
ビアンラボの精鋭部隊が到着し、二人を救う為
アルバートの持つ弓矢、シドルフの樹木、そしてグラス達のサポートを受けながらも
スティードの鎖技に対抗しているけれど、押され気味でピンチを迎えていた。
はぁ…、はぁ…。スティードの鎖技、強過ぎる…。
いくら足元を木の結び目で足止めしても、
体重で何とかなっちゃうからそこを何とかしないと…
あの闇のオーラを何とかしない限り、スティードには勝てない。
油断も隙もなさ過ぎて、どこを狙えばいいのか分からない…!
それに放った矢は全て力技でねじ伏せられてしまう。
どうすればいいんだ!?
おいおいおい、何処見てるんだよ!そうだな…。まずはシドルフが持つ袈裟をぶっ壊してやる…。
さっきから大事そうに持っているからな。よっぽど大切な物なんだろ?
壊し甲斐があるな…! オラッ!!
右手に持っていた鎖を自由自在に操るスティードはシドルフの袈裟を
もう二度とは被れないよう無情にも真っ二つに割いてしまい、左手に隠して持っていた
ぐちゃぐちゃに丸めた鎖の玉を彼の腹部に当てる。
そして倒れるようにお腹を押さえて、痛みを堪えている。
うっ…。く、苦しい…
袈裟も壊された…もう僕には無理だ。
アルバートさん、後はお願い出来ますか?
えっ!?
シドルフさん…、しっかりして下さい…!
貴方しかスキル持っていません。まだ勝てますって…。
まだ勝つ気でいるのか。笑えるぜ…リオルドにオルーム、見てみろよ…!
お前等を助けに来たビアンラボの精鋭部隊も、結局はここまでなんだ。
倒れ込んでやがる…。シドルフも戦闘不能、さて最後はアルバート、お前だ…!!
闇に墜ちた生腐ったスティードの発言により、リオルドは衝動的にアルバートを庇いに走る。
さっきと同じく、両手に鎖の技を纏っていた為
今度はリオルド、アルバートの二人の腹部に見事に
クリーンヒットしてしまい、二人ともフロアの床に膝を付いた状態で大量吐血をしてしまう。
クソッ…。強過ぎる…!
ダメだ…無念。弓矢を持っていても無意味だ…。
め、目眩がする…。苦しいし、俺はもうダメだな。
オルーム。お願いだ、お前だけでも逃げてくれ…!
こいつにはどう足掻いても勝てない。
そうだろうな…。
俺には誰も勝てない…、分かり切った答えを言うな。
ただ、リオルド…、お前はあの時"例の計画"の邪魔をしたんだ。
悪いな。実はもう既にエディール様から始末命令は下されている。
けれど面白く無いんだよなあ。オルームに罪を被って貰おうかな…!!! ハハハ…
恨むなら、リオルドを恨むんだ…!!!じゃあな、オルーム。
オルームを家族のように接してくれたリオルドが
皇帝やエディールの研究を手伝っていた過去は決して消えない。
研究者としての性、どんな事も追求して結果を出す事が何よりも大切な職――。
自宅に居る時も常に研究熱心。それをずっと横目で見ていた
オルームも心の中で彼に会えた喜びとして"ありがとう"と言い、そっと目を瞑る。
スティードの心無い攻撃が徐々に迫るその時、ゼルシードともう1人見慣れない人物がやって来る…。
彼は右手を前に出し、標的物をゆっくりと下ろし始め、何とかオルームに当たるのを阻止する。
オッと間に合ったぜ!!!
こんな鎖、余裕で防げる…。スティード、お前地に落ちたな。
ふん。また邪魔に来たのか…!この、皇帝の裏切り者め! 何しに来たんだ?
何度でも言えばいいさ…!
何しに来たか…。お前を改心させるべく、オルームに新たな姿を授けに来たんだ。
えっ…、新たな姿ですか…!?
気になるけど、ちょっと怖い…。
新たな姿か…。興味あるぜ!良いだろう、15分待ってやる。その間にオルームを目覚めさせてみろよ!!
言われなくてもそのつもりだ…。
来てくれ、ソルノーゼ!!
【ソルノーゼ】
ああ…、かったるい。
ゼルシード、こいつがオルームか?
ああ。オルーム、ソルノーゼに挨拶してくれ!
自己紹介・アピールの2項目だ。
彼にその思いが伝われば"善"の力を最大限に引き出してくれるんだ。
あっ、はい! 初めまして、ソルノーゼさん。僕はオルームです。
とある記憶を失ってしまったんですけど、リオルドさんに助けて貰って以来
彼の自宅でお世話になっているので常日頃感謝の意を込めて、
様々な仕事をやらせて頂いています!
以前、断割と言うスキルを持っていました。
ほう。それじゃあ、アピールを聞かせてくれ。
そうだな…、お前は今誰に想いを伝えたい?
スティードさん…です!
闇に墜ちるっていう行為が間違っています。
ここに倒れている皆さんは貴方が一度でも一緒に接したビアンラボのスタッフですよ。
どんな過去を過ごして来たかまでは分かりません。
けれど此処はクロスウッドの平和を守る施設なんです。皆と築き上げなきゃ出来ません。
まだ15分経ってないぜ。
立ち上がるなんて反則じゃないのか?
あっ…さっき左眼負傷してしまったんですけど、大丈夫ですか?
ソルノーゼは"善"の力を最大限に引き出してくれるゼルシードの友達。
彼はこの大陸「クロスウッド」には住んでいないけれど、このままでは全員が幹部や協力者、更に
暗殺者にやられてしまうと判断して彼を強引気味に引っ張って来た。
またスキルとは違う次元の能力。
オルームに残る"善"を引き出そうと自己紹介・アピールをして貰い、いよいよ合否の時間が。
澄んでるな。お前は幸せもんだな…
ちゃんと事が終わったらリオルドや支えてくれた皆に感謝しろよな。
マスクを外すソルノーゼ。
オルームをしっかりと見始め遂に彼の見知らぬ能力が明らかに…
合格だ。よし、オルーム。
俺の眼をしっかり見てくれ。確か前はルディースって言う奴にやったな…。
まあ、そんな事はさておき、気を楽に。準備はいいか?
1階フロアに煙が充満して来て、オルームの身の回りには
希望に満ち溢れた彼のイメージカラーに合いそうな"水色"のオーラが漂い始める。
ソルノーゼが彼の目は澄んでいると評価を頂いたお陰で笑顔が零れている。
やったー。もっとリオルドさんの側にいたいな!
また皆で何処か遊びに行きたいな。
例え記憶がどんな辛い事で失われていても、善の気持ちが強ければ、絶対に悪に屈しない…。
それを胸に秘めたオルームの真の姿が煙の中から姿を現す。
こ、これが僕ですか…。
ん、あれ、服装が違う。
何か着慣れないな…。でも何か清々しいです。
ソルノーゼさん、ありがとうございます!
この能力って何なんですか?
このクロスウッドから少し離れた
リングノーツという大陸に伝わる"キューツ"と言う能力だ。
自己紹介が遅れたな。改めて、ソルノーゼだ。
口数が少ない事は許してくれ…、自覚はしてるから。
どうだ、オルーム。清々しいか?
はい。何か身軽になった感じで素早く動けそうです…!
なら良かった。後能力発動時にお前の過去を見させて貰った。
成程…としか言えないけれど、一つだけ助言させて頂く。
"後ろを振り向くな。"お前の中にもう悪の気持ちは芽生えてなかった。後は努力次第だ…。
ほら、オルームの周りにいるさっきまで倒れていた
ビアンラボの精鋭部隊の瞳を見てみろ。期待されているんだぜ。
リオルドさんを幸せにするなら、今目の前で嘲笑っている
スティードを改心させる事からだ。
オルーム、お前の姿カッコいいぜ。
キューツか、良いな。スティードを打ち負かして来い…。信じてるぞ!
オルームが逞しくなった。見違えたもんだな…
凄いじゃないか。ソルノーゼさん直々の能力か。必ず勝って来るんだ…!
多分、スティードさんも苦しんでいる筈なんだ…
本当はやりたくないんじゃないかな。
オルームさん、必ず善の姿を取り戻して上げて下さい。
彼が間違っている事をオルームさんの善の力で証明して下さい…。
自分を信じて、必ずスティードさんの苦しめてる物を引っ張り出しましょう…!
オルームにスティードを託す時が来たんだな…、感慨深いな。
彼はビアンラボでスパイをしながら悪事してたんだ。びっちり締め上げてくれよな!
オルーム、行って来い!
それと今日から俺がお前のお父さんだ。どうだ、嬉しいか?
立派に育ってくれてありがとな…。
あっ、え、えっと…ありがとうございます。その為には…
さあ、15分経ったぞ…。これがお前の"善"の力か。生温い。数分で圧し折ってやる!!!
いいぜ、何処からでもかかってこい…。
俺もお前と一緒に戦うぜ。さあ、オーラを解放してみろ。自然に出来る筈だ…
習得早いな…。さすがリオルドをお世話していただけの事はあるな。
使いこなせばどんな事にでも出来る"キューツ"。
さあ、オルーム。スティードを改心させるべき
2人で協力して阻止しましょう。準備はいいか?
(ライトさん、リオルドさん…そして皆さん。僕の頑張り見て下さい。どうかよろしくお願いします!!!)
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