49話:ブルの過去!非情なるエディールの裁き!!(前編)
文字数 3,024文字
前回のあらすじ
ブルとナギ、二人による襲撃は
当職員であるアルバートとゲイミのお陰で何とか治まった。
しかしながら、自分の情けなさに嫌気が指し、
シャウトシグマを投げ捨て皆の前から姿を消すルドス…。
ヒョードとゼシアが怪しい動きを見せる中、ヒルハイドタワーとエジェテールの町はずれにある城でも
脱出を試みようとしていたインバとネシアの二人。
そしてブルの口から自分の過去について重い口を開き始める。
お前のせいでもあるんだぞ、グラス…。
よくも…エディール様と手を組んで俺の愛犬を殺したな。
俺が覚えてないとでも思ったのか…。
何とか言ってみたらどうだ?
いや…、心当たりがない…。済まない。本当に覚えてないんだ。
例えもしブルさんの愛犬を殺したのなら、謝罪は必ずさせて頂きます。
本当に申し訳ございません…。
俺……、いや僕はレシールと一緒で生まれは「オークステリア」なんだ…
****
麓町「オークステリア」
時間軸で言うと、エディール様が郊外にあるクロスピアに赴き
スカラダークを結成し、任務を遂行する為エバスがスキルを使い上空へと飛ばした後の出来事…。
常に滞空を維持出来てるのか心配になり、何度もオークステリアに出向いたエディールの元に1匹の犬が
現れる。その犬はエディールが履いている靴を舐めていた。
な、何ですか…。このワンちゃんは。人の靴を舐めるなんて躾がなっていませんね…。
ただ、安心して下さい。人間じゃないんで、私に歯向かった罰はしません…
動物を虐待するなんて、到底出来ません…
ただ、可愛い犬ですね…。
たまにはこういう時間も良いのでしょうかね…
毎日計画の事で頭一杯な私を、このワンちゃんは癒してくれそうですね…
えっと、飼い主は何処にいるんでしょうか…。
おーいっ! マーブル、何処~!?
あっ、いたー。あっ、また靴舐めたんじゃないのー?
ごめんなさいっー! 決して悪気はないんですよー。
お宅のワンちゃんでしたか…
名前がマーブル…、良い名前ですね。ちなみに貴方の名前は何て言うのでしょうか?
僕はブルって言うんだー!
宜しくねー。えっと…。お兄さんで良いのかなっ?
是非君の名前も知りたいなっ!!
私はエディールと申します…
ブルさんですね…、覚えて置きます。
では次の用事があるので、この辺で失礼します。では…
ゆっくりとオークステリアを後にするエディールを目にするブル。
それが彼との初めての出会い…また次会えるかな? と期待を込めて愛犬であるマーブルと共に家に帰る。
ただ、彼にはまだ知らなかった…
この直後、エディールは更に闇の力を手に入れ
グレイザーとユズキの両親と共に、彼等の出生地である
小町「ファーニブル」と共に姿を消してしまった。
彼が手に入れた深い闇の力の影響は少なからず、
オークステリアで過ごしたブルとの記憶までも蝕もうとしている事を…
****
時間で言うと翌日の昼。
小町「ファーニブル」を崩壊してヒルハイドタワーに戻って来たエディールを
出迎えたのは当時まだグライド研究所に就任…、いや協力者として出向いてないグラスの姿だった。
ああ…。
どうですか、これが私の深い闇の力ですよ、グラスさん…。
一言、あるいは感想を述べて貰っても宜しいでしょうか…?
素晴らしいです、エディール様。
さすがボスにふさわしい…。この上があるなら是非見てみたいです!
ただ、グラスさん…何故ここにいるんだ?
持ち場はここじゃないだろ。早くリオルドの元に戻って例の計画をいつでも
成功出来るように導くのが貴方の役目じゃないのか…。
いや。ちょっとエディール様のお力添えが必要なので、ここで待機していました。
俺に付いて来て貰っても宜しいでしょうか…。場所は地下収容施設です…!
何があったのか言ってみろ…
一字一句でも逃したらいくらヒルハイドタワーの優秀な頭脳を持つ
貴方でも計画対象外とし、闇の底へ落としますよ…。
つい先程、
一人の青年が犬を連れてここにやって来ました。どうやらエディール様に会いたくて…と言う
切望を訴えていた内容です。帰らすのも何なので、このヒルハイドタワーの事
全く知らなかったと言う事でしたから地下収容施設に閉じ込めております…。
いかがですか?
青年? 犬?
まさか、オークステリアで会った彼が来たとでも…
私に会いたいという事でしたよね…。丁重におもてなしをしましょう…
グラスさん、急いで最上階に向かってリオルドさんと合流するように…。良いですね?
****
深い闇をいつまでも維持するのは体力にも支障を来す。
手に入れた物をいつでも出せるような体質を持つエディールからしたら何の苦でもない…
通常の姿に戻りながら、地下収容施設に出向き捕らえられた収容部屋に行くと、
そこには犬を連れたブルと、愛犬マーブルの姿が。
あっー、エディールさんっ!
お久し振りですね。なかなか会えなかったので来ちゃいましたよー。
マーブル連れて来ましたよっ!!
確か…、ブルさんでしたよね…。
良くここが分かりましたね。ここがどういう場所が分かってるんですか…?
あ、あれっー。あの時と雰囲気違うよー!
もうエディールさん、ほらマーブル連れて来たよっ!! 是非触ってあげてー。
(不味いですね…。無断で入って尚且つ
ここで行われている事が彼の口から流出なんてしたら
皇帝に切り捨てられてしまいますね…。
そうですね…彼を口止めするにはあの手しかありません…)
皇帝からの指示は絶対服従。任せられている計画を成功する為なら
どんな事もすると心から決めたエディールは心を闇にしブルと接する事に…
そうですね…。
せっかくヒルハイドタワーに来て貰ったので
最上階へ案内します。マーブルも連れて来て下さい…
そこから見える景色は素晴らしいですよ…
あー、あの時のエディールさんだっ!
やっとだよー。戻って来てくれたー!!
(作り笑顔ってこんな感じで良いんでしょうかね…。)
ただ、もう既にブルの愛犬であるマーブルに迫るカウントダウンは始まっていた…。
そんな事知る由もないまま、作り笑顔で誤魔化すエディールは
彼を連れて最上階に刻々と迫って来ていて
そして運命の時が来てしまった…
****
ヒルハイドタワー、最上階―――。
高い場所からの景色を眺めるのはブルの趣味…。
堪能しようと足取りを軽くさせ、スキップしながら窓に近付こうとしたその瞬間……
さあ、到着しました…
ブルさん、ここがヒルハイドタワーの最上階であり…
貴方の死に場所です…!!!ヒルハイドタワーに無断で入った罰をしてやる…。
サイレントシャドウ…!!!
ブルに向けて数発、禍々しい闇を帯びた弾を発射したエディール…
ただそれに一目散に気付いたのは、ブルではなく愛犬マーブルで
ご主人様を助けようと必死に走り、自ら犠牲になってしまい、その様子を見てブルは
窓からの景色どころではなくなり、攻撃を喰らって倒れているマーブルの元に急いで駆け付ける。
必死にマーブルの身体を揺さぶる…。
ただ、エディールの攻撃を喰らった為、痣だらけ…
もう呼吸もしてない事分かってる。
初めて子犬の時に拾った時から今までの記憶は忘れる事は決して無い。彼の目から溢れんばかりの
涙が倒れて亡くなっているマーブルの身体に染み渡る。
そして無情にも彼の泣き声はヒルハイドタワーの最上階に響き渡る…。
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