84話:エンディア緊急事態!迫り来るローウェンの圧倒的な判断力!!
文字数 4,343文字
床に落ちているローウェンの私物であるバイオリンの
高音を出すE線からG線までの合計4つの弦を両手の握力を使い
裂かれてしまった上、床に思いっ切り叩き付けられてしまい、テールピース、ボディに
自分の全体重を加えて平気な表情をしながら壊してしまう。
だったら教えてくれよ……。
書斎の絡繰り、お前なら知っていて当然なんだ。
エディールと繋がりがある事、覚えてるだろ?
お前の御宅にリリカルラビットにまつわる資料があるから、監禁させて貰った。
さあ、どうだ。言う気になったか?
そうだ。この家に雇われる前にエディール様と一緒に
旋律の館に出向いたのが懐かしいな。まだ幹部の皆さんが担当の地域に
出向いていない時の話。ああ、笑える。だって親子揃って捕まってるんだからな。
確かラディ―だった。今頃ヒルハイドタワーに居るんじゃないのか?
うるせえよ。この家に来たのは
先代が残した拳道具「ロックダスター」を奪取する為だ。
旋律の館の地下室、書斎の奥の扉……、全てお前の絡繰り師である曽祖父″ディル″が
施した事位調べているんだ。だからここに侵入した。おだて続け
ようやく信頼を得るようになった。さあ、教えてくれよ。あの扉に続く答えを……!
彼の目的は下調べ済みの拳道具「ロックバスター」を無理にでも奪取する事。
その為だったら何の感情もせず、普通にどんな場所でも潜入し馴染むまで徹底的、
そしてパーフェクトに任務に就くのが彼の流儀。
お宝に目を眩み、その魅了に取り憑かれた者の1人で
ヒルハイドタワーで全てを取り仕切るエディールとも何かしらの関係を持っている。
旋律の館の地下室、そしてエバス宅の書斎に施された絡繰りは
全てラディー、ヴィーバの曽祖父に当たる絡繰り師 ″ディル″ が施した細工。
彼の関係者なら先代の当主を通して何か言い渡されていた可能性もあると思い、追い詰めるけれど
決してヴィーバの口から語られる事はなく、交渉決裂……
早足で彼の元に近付き、全く何の感情も読めない状況で腹部目がけて
攻撃力マックスで避ける事が出来ないキックを真面に食らい、血を吐きながら
薄い床板を貫通し、物凄い音を立てながら1階にある書斎、本棚は見事に壊滅。
砂埃や板の破片が散乱する中、何のダメージも喰らってなく
そのまま嘲笑うかのように立ち上がるローウェン、そして倒れ込んで気を失っているヴィーバの姿。
時は同じく2階、応接間――。
謎解きのヒントを得ようとハディーサなりの推理で
本棚に置かれている本を事細かく″抜けている巻数″ や ″並び順″ に注目をして
注意しながら見ていて、本が苦手なエンディアは
気持ちを落ち着かせる為にソファで座っている時の出来事……
3階の隠し部屋の薄い床板をヴィーバ諸共
ローウェンの強力な攻撃により音を立てて、エバス宅の半分が轟音を成して天井から一直線に
書斎へと落ちて行き、ヴィーバは立つ事すらも儘ならない状況に陥っていた……
先に物音に気付いたのは厨房で
彼等に提供をしようとしていたサラダを食堂に配置していたエバスの家内、ニリア。
大広間に出て、書斎に続く扉が壊れていた為、部屋の中を確認すると
本棚が壊されていて、天井の板の破片が散乱。
砂埃が立ち込める中、ポツンと佇み、今までにした事が無い表情で見下すローウェンが姿を現して行く。
もちろん現在の状況を飲み込めない彼女は、執事である彼に問い詰めるけれど……
この家に執事として入って来たのも計画の1つだからな。
パーフェクトな人間ほど、完璧に任務も成功に導く事が可能なんだ……
ハハハ、信頼を得るなんて楽勝だったぜ!!!
ローウェンに説教をしているニリアの元に主人とエンディアとハディーサが駆け付ける。
しかし、こんな状況になっているとは
誰も予想をしなかった為、突如とたる事態に
戸惑いを隠せない上に、家を壊したなんて到底思えない。
この豪邸の5代目の当主。何故このような事をしたのか
話を聞くべく今度は彼がこの家を、そして彼等を守る番……
ヴィーバの身内、家庭環境、エバス宅に監禁した時の状況、
そして……、この家に眠る拳道具「ロックバスター」の情報。
彼はどんな任務をこなす前に、とことん完璧(パーフェクト)、そして徹底的に情報を
脳裏にインプットする。それはこの家で執事として働く事も同様。
以前に話したガタイが良い、所謂マッチョの食生活もまた然り……。
その頃にはもう次に配属される家が元スカラダークの首領である「エバス」の豪邸と判明していた。
彼の体格がそこそこ仕上がっていた為、これは好都合と思い、色んな情報を仕入れる事に成功。
要するに、エンディアの野太い口調は耳にしているけれど
ローウェンからしたら都合の悪い発言。軽く受け流しながらフフフと不気味な笑いと共に
壊れた本棚から1冊の本を拾い上げ、中のページをペラペラと捲りとある物が挟まっている事に気付く。
どんな強い相手にでも屈する事などない。それは人間誰しもにある弱み、所謂弱点がある事を
執事として色んな御宅を回って、接して来た家庭の事情から得た結果の1つ。
それを見極める能力を得たローウェンは屈強な身体を持つ
エンディアにも″本″が苦手な事を見極める事が出来た。
しかし、彼が見抜いたのはそれだけでは無かった……
そう、エンディアに投げるかのように本に挟まっていたモノとは……
全てのステータスに置いて優れているエンディアはものの見事にローウェンから
コックブロットを投げ付けられてしまい、彼の手から身体へとガサガサゴソゴソと動き回ってしまう。
鳥肌、いやそれ以上の反応を見せている……
フラッシュバックしてしまい、その場で汗を掻きながら気絶してしまう……。
それでもチーム「カインドフォース」のリーダーなのかよ、おい!?
強くて、優しくて逞しいだと? 笑わせるな……!!!
良いか、ハディーサ。お前も気付け。どんなに強い奴でも何処かに綻びがあるんだ。
それを見つけ出す事なんて容易い……。なあ、そうだろ?
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時は同じく、ここはエバスの豪邸門前――。
小町「エジェテール」の古城で氷漬けの状態で
捕虜されているタナトスを助けようとしているブラストの姿が確認される。