78話:リフィーとシルディート!手厳しい過去のジャッジメント!!(後編)
文字数 4,661文字
【前回のあらすじ】
リフィーの兄弟、オルガが幹部になったのには訳がある……。
原因を作った張本人である暗躍組織『アンドルディシア』のメンバー、名はシルディート。
ビアンラボに直接伺う様子は勇ましく、今は只彼女に謝罪をする事だけを考えている。
彼が語る過去にはまだ協力者としての
任務に就いていなかったアルク、グラス、セイラ、スティード……、そして
ボスのエディールや自分の身を決して明かす事がない皇帝の姿が見受けられる。
これから施行される計画をただ無視する事は決して許されない。そう、邪魔するモノも……
そんな中、アルクの兄妹である
オルガ、リフィーが現れて事態は急変する。
****
ヒルハイドタワー1階――。
見上げる限り高い建物、最上階が30階まであるなんて知る由もなく
その堂々たる塔の姿に圧倒されているオルガとリフィー。
それにしても高い建物だ……!
これ何階まであるんだろう?
リフィーが作って来てくれた
お弁当をお兄ちゃんの為に持って来た って言ったら喜んでくれる筈だ。
でも、さっきこのフロア見たんだけど何処にもエレベーターが無いんだよー!
歩いて昇るしか方法が無いみたい、グスン。
アルクの喜ぶ顔が見たいんだろ?
だったら尚更だぜ。大変と思ったら俺が支えるから安心してくれ!
笑っていられるのも今のうちです……。ただ、ヒルハイドタワーにせっかく来てくれたので歓迎致しましょう。
彼等の前に不穏な空気が流れ、不気味な煙が周囲を包み込む。
上から目線で非情過ぎる目で挑発的な性格は当時から変わらず……。
夥しい闇のオーラが1階のフロアに充満して行き
突然起きた出来事に2人で怯えていた。
フフフ と薄気味悪い微笑をしながら煙の中から見た事がない着物を身に着けた男性が目の前に現れて行く。
改めて、私の名前はシルディートと申します。
突拍子な質問をお許しください。貴方達はこの場所に何をしに来たのですか?
アルクお兄ちゃんに妹のリフィーが作ったお弁当を持ってきてあげたんだ。
シルディートさんですねっ!
えっと、アルクお兄ちゃんは何処にいるんですかー?
直接渡したいので、教えてくれると嬉しいです!
すみません。現在アルクさんは
この建物の最上階である30階で手が離せない状態です……。
私で宜しければ、届けさせて頂きます。多分、貴方達が渡したとしてもきちんと
喜んでくれるか不確かです。どうでしょうか?
そうか……。お兄ちゃん、手が離せない状態ならその方が良いのか。
じゃあ、リフィー。
シルディートさんにお弁当を渡して、俺達は帰ろうぜ。
お兄ちゃんの仕事を邪魔する訳には行かないからな!
じゃあ、シルディートさんっ!
お弁当、宜しくお願い……
さっきまでの優しい対応とは裏腹に突然態度を変え
リフィーから勢いよく奪取し、せっかく兄のアルクの為に丹精を込めて作ったお弁当を
フロアに叩き付け、中身が零れてしまい食べれなくなってしまった。
ちょ、ちょっと……! 何て事をするんですか!?
せっかく妹が一生懸命頑張っているお兄ちゃんの為に作った弁当なんですよ!
ほら、泣いちゃった……。
お願いします、シルディートさん。妹に謝って下さい!
…………!!!
何だ、言ってみろよ。
途中まで言って置いて止めるなんて礼儀がなってないなあ。
態度を急変した所で何も変わらないんだ……。
お願いします。妹に謝ってくれませんか!?
ここが何処か分かってるんですか? 悪の巣窟、ヒルハイドタワーですよ……。
もうアルクさんも既に色んな悪事を働いています。貴方達が思う兄の姿も御終いです。
お弁当と言う家族的なモノを食べている余裕などありません。
そんな事無い!
お兄ちゃんは仕事が多忙でも必ず食べてくれるんだ。
シルディートさん、今の言葉訂正してよ!!
イヤです。どうだ、私が憎いか?
名はオルガ。アルクさんから伺っています……
お弁当を奪取し食べられなくしたんです。
もちろん兄思いの貴方でしたら怒るのはもちろんです……よね!?
ごめん、リフィー……。弁当を片付けて先に帰ってくれ!
お前…、だけは絶対に許さない……。
シルディートの嘲笑がオルガに迫る……。
そう、彼の企みは ″善の心を悪に変える″。
悪事を1度でも行うとスキルが ″禁忌″ になるのと同じように
目の前で苛立ちを起こすような出来事を目の当たりにすれば
人と言う物は冷静では居られなくなり、いくら優しい良心があっても怒り始めてしまう。
怒る事が悪の道への出世と説いた皇帝の企みにより、
彼にいくらどんな優しい言葉を投げかけても、悪の道へ進んでしまう結果となってしまった……
やはり私の目には狂いがありませんでした……。
オルガ、貴方を幹部「マイティーダーク」の
メンバー ″ノルドイド″ の協力者と任命させて頂きます。もう逃げられません……
さあ、立派な悪の道を進む私達のメンバーとなった。
貴方が怒った時点で貴方の負けは決まっています。
そう、ここは闇のヒルハイドタワー……。闇を抱えたメンバーが勢揃いしている。
さあ、ボスに会いに最上階へ行きますよ……!
散乱しているお弁当の具を1つ1つ片す中、
オルガの心の隙に生まれた悪を見過ごす事など微塵もないシルディートは
言葉巧みに彼を協力者に仕立てる事に成功。
これも全て皇帝やエディールの非情過ぎる作戦を遂行する為の手段。決して成す術などない……。
ただその瞬間、片す振りをしていたリフィーは
弁当の中に入れていたフォークを手に持ち今まで心に留めていた
想いを吐き出すかのように彼の左目に傷を負わせてしまう……。
ご、ごめんなさいっ……。で、でも。こうする事しか……!!!
オルガ、そしてアルクお兄ちゃんっ、必ず戻って来るから。その日まで待ってて……!
無茶な事をした事は分かっている。
しかしながらリフィーも兄弟であるオルガとアルクの無事を祈っていたい……。
このままだと自分も悪の道に進む事間違いないと確信したリフィーは
片していた弁当を放置し、そのままヒルハイドタワーの屋外へと
走るように逃げ出し、その場から居なくなってしまう……。
大丈夫な訳ないだろう。ちっ。女は怖いな……!
何を考えているのか全く分からない……。ただ、これで……
****
ヒルハイドタワー、最上階――。
エディールと皇帝は1階に仕掛けられた監視カメラを見ながら
暗躍組織「アンドルディシア」のメンバー、シルディートがオルガを
幹部「マイティーダーク」のメンバー″ノルドイド″の協力者に仕立てる
風景を見過ごす事なくガン見していた。
ノルドイドさん、貴方の協力者がオルガさんに決まりました……。
彼はアルクさんの弟です。もちろんいいですよね?
何だよ、俺の協力者はまだ少年じゃないか。
大丈夫なのか? 先が思いやられるぜ……!
安心して下さい、ノルドイド様。
何かあったら俺に言ってくれたら指示に従ってくれる筈……。
エディール様や皇帝に服従と同じように、オルガも兄の言う事は必ず聞いてくれるぜ。
そうか。有難いな……!
ちなみにアルクは誰の協力者になったんだ?
ふん。宜しくな、アルク!!!
ただ、裏切ったらどうなるか分かってるよな……。
いくら協力者でも ″枯渇″ で始末するからな。それを肝に銘じて置け!
次々に幹部「マイティーダーク」のメンバーの協力者が決まって行く。
幹部「マイティーダーク」の協力者リスト。
グレイザー、アルク。
ノルドイド、オルガ。
ディゼール、セイラ。
ヴィルゼート、グラス。
そして…、最後に皇帝の口からエディールの協力者がスティードと発表される。
俺がエディール様の協力者ですか……。
これは有難いぜ。絶対的な強さを誇る彼の側近、感慨深いな。宜しく頼むぜ!
ああ…、スティードさん、宜しくお願いします。
私に言ってくれればどんな御方でも闇を活性化させてあげます……。
皇帝は闇に惹かれた人物。何しろあの言葉が好きだなんて口が割けても言えませんね。
その直後、幹部「マイティーダーク」は皇帝やボスのエディールの指示通り
木漏れ日の森、神秘の海、旋律の館、グライド研究所、そしてビアンラボへとそれぞれの協力者と
共に出向き、いずれ現れるだろうリリカルラビットを無理にでも奪取する予定だった。
それと同じ頃、グラスにはもう1つ目的をエディールから頼まれていた。
それが ″ブライドゼータ″。しかしながら奪取した奴が何処の輩(やから)が分からない為
彼の頭脳明晰な力を使い各エリアに協力者を配置したのも彼の作戦の1つ。
****
時は現代。
ビアンラボ、会議室――。
深々をお辞儀をして謝罪をするシルディート。
そして彼は1つの事をリフィー、そして女性陣の目の前で強く約束を交わし始める。
私こそオルガを協力者にし、
リフィーさんが作って来てくれたお弁当を台無しにしてしまった。
正直、悪事をするのは辛いんです……。本当に申し訳ない事をした。済みません……
シルディートさんの左目を傷付け、その場から逃げ出してしまいましたっ!
謝罪するのは私の方です……。本当にごめんなさいっ!!
あの時はきちんと見れなかったけれど、シルディートさんって……
…………!!!
そう言ってくれるのはオルーム以来です。分かりました。新たなる決意として
暗躍組織「アンドルディシア」は今日限りで脱退する事約束しましょう。それと……
どんな悪事を行ったり、罵詈雑言を浴びせても
謝罪したい気持ちと反省がある限り、必ずその想いは届く。
アンドルディシアは皇帝の指示で誕生した暗躍組織。
幹部「マイティーダーク」以上に厄介な連中が多い中、シルディートだけは違った。
もしかしたら弟のオルームのお陰かもしれない。誰よりも兄弟や姉妹に対する想いがある……
ずっと忘れていた″何か″に気付いたシルディートは女性陣と共に
思いもよらぬ言動を取り始める。それはもう少し先のお話……
****
ここはヒルハイドタワー、ビアンラボとは違い海産業で有名な会社「クランチャード」。
元々、麓町「オークステリア」にあったクロスピアが
南西の海に落下した時に偶然、近くを通りかかった社長が
その現場の写真を撮影する事に成功していて、
ずっと食い入るように拝見していた。
【????/社長】
兄さんだったら分かるのかな……。
ん、何だ。ちょっと引き延ばしてみるか……!!
だ、誰だこいつ……。怖すぎるだろ?
【???】
社長ー! どうやらリリカルラビットの冒険譚で
クランチャードを紹介する話に到達したみたいですよー!!
79話と80話の2話分でボク達と当社の魅力を語りましょうっ!!
そうだな。じゃあ、次の話も楽しみにしてくれると嬉しいな!
あ、1つ言わせておくれ。2話分と言ったけど
前後編システムじゃないからね。では、また次回も宜しくな!!
海産業会社「クランチャード」。グライド研究所と同じように海が見える近辺に設立された会社。
海で起きた事件の調査や、クロスウッドの近海で収穫される魚介類の研究も事業内容として
様々なスタッフが携わっている。その全貌をいよいよ公開――。
次回へ続く――。
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