21話:運命の歯車!ヒルハイドタワーの過去(前編)
文字数 3,629文字
エディール様に黙って
ヒルハイドタワー15階で謎の動きを見せるブル、そして
ここは地下1階にある収容施設。クロスとネルフが何か壁を通して話をしている…
よし。後は俺が話した通りに行けば
ここを無事に脱出出来る! 安心しろ…。
エディールに一泡吹かせてやろうじゃないか!!!
さあ、ネルフ…。準備はいいか?
はい! クロスさんと一緒ならヒルハイドタワーから無事に出られそうです。
宜しくお願いします!!
けれども脱走しようとクロスは右手を振りかざそうとすると、
彼等の様子を見にエディール様が直々に地下1階まで不気味な笑いと共にやって来た。
元気そうですね…
クロスさん、その右腕は何ですか?
振り翳してこの檻を壊そうと思ったんですか?
お、お前がエディールか…!
ようやくボスのお出ましか。だよな、ネルフ?
ええ…。エディール様…
右目の負傷は彼の手によってやられた…
そしてこんな場所に監禁させられた…。
貴方がリオルドさん、リリカルラビットと共に逃げ出すからですよ…。
****
今から1カ月前の出来事…。
最上階にある装置にリリカルラビット4匹を入れてとある研究を行っていた。
もちろんその研究に携わっていたのはリオルドだが、
その横にはもう1人、シェリアというセクシーな研究員も手伝いをしている様子…
リリカルラビットの研究をしている彼等の
監視を近くでしている幹部「マイティーダーク」、そしてエディール様の姿も確認できる。
もう少しで基準値です。あのゲージの数値が80を超せば
リリカルラビットの…。ん、何だ?
おい、リオルド。
あの機械から煙が出てるぞ…。何かの合図か?
リオルド先生、大変です!
膨大なデータを一気に送ったせいで、パソコンが耐えられなくなっています…
このままでは、今までの私達の成果が…。
な、俺のやり方が間違っていたのか…?
そんな馬鹿な…。毎晩寝る間も惜しんでやった結果がこうなのか…
ヒルハイドタワーの最上階にある、あらゆる機械から煙が発生し
研究に使っていたパソコンも熱を帯びて爆発してしまう。
更にはリリカルラビット4体を入れていたカプセルも壊れてしまい、
中から出て来てしまう。要するにリリカルラビットの "とある研究" は失敗…
え、エディール様、申し訳ございません…
リリカルラビットの研究は失敗です。早くここから逃げて下さい!
爆発に巻き込まれてしまいます。
研究材料になっていたリリカルラビット4匹は
その影響のせいで喋れるようになってしまい、幹部達と研究者であるリオルドに話し掛けようとするが
誰が味方で誰が敵が分からない。ましてや実験の対象になっていた為
信憑性も低い。苦肉の策として近くにいる "善"の心を持つ方の脳裏に話し掛け始める。
(うぅ…、こ、怖いよ…。
もうこんな事しないで下さい…。早くここから逃げ出したい!)
(か、堪忍や…! お願いだ。わいを助けてくれはるか?)
(私、怖い…。お願いです。
もうこんな場所は嫌です…、お願いだから助けて下さい!)
(何でこんな事をするんですか…?
止めて下さい。私達だって動物なんです…! いじめないでくださいっ!!)
(え、えっ…。
リリカルラビットが喋った…!
ん? いや…、俺の脳裏に聞こえるのか。)
(ごめんな! もう大丈夫だ…。
俺はやっぱり幹部には向いてないな…。助けてやる!
そしてヒョードの元に帰るんだ…、必ず!)
何と言う結果に…。
とりあえず逃げればいいんですね。
それではリオルドさんはリリカルラビットの方お願いします…
次々と機械が爆発して、煙が立ち込める中、周辺には機械の破片が飛び散って
足の踏み場もない為、急いで30階である最上階からエディール様の指示通り1階に急ぐリオルドと
シェリア、そしてエディール様率いる幹部「マイティーダーク」。
その当時はまだネルフもメンバーの一人…。彼にもリリカルラビットの声が
聞こえたという事は "善の心" の持ち主。幹部を止める事を決意する…
****
ここはヒルハイドタワー15階。塔内には非常ベルが鳴り響く…
沢山の研究員やスタッフ達が慌てふためきながら各自資料を持って1階へと走る。
荒い息を立てながら最上階から降りてきた彼等がネルフがいない事に気付く。
はい? こんな非常事態になんでいなくなるのでしょうか?
誰か納得の出来る解答してくれる人はいますか…?
もしかして怖気付いたのではありませんか?
それとリオルドさんと何か喋っていたのさっき耳にしましたよ…
非常階段に急げ…! ネルフが裏切った。
始末するか、地下にある収容施設に閉じ込めろ…。
そこにリオルドもいる。いいな?
ネルフ…そして、リオルドがリリカルラビットを連れて逃げ出そうとしている事を
勘付いたエディールとヴィルゼートは裏切り者の二人に迫ろうとしていた。
****
ここはヒルハイドタワーの外にある非常階段。
リリカルラビットを連れてヒルハイドタワーを脱出しようとしていた
リオルドと共にネルフも手伝いをしている様子。
済まないな、ネルフ…!
でもお前、良いのか?
幹部を裏切るという事がどう言う事か分かっての行為なのか?
いいんだ…。
俺は弟の元に帰りたい! ただ、それだけなんだ。
それにこんな事やったらヒョードに何て言えばいいんだよ…。
兄として顔が立たないだろ?
素敵な事だぞ。愛されてるんだな…、ネルフ。
だったら早くここを逃げて、お前の笑顔を見せてあげな!
だが、そんな平和な非常階段での会話も一気に絶望へと変わる。
見つけたぞ、ネルフ、そしてリオルド…!!
さあ、俺と一緒に来るんだ!
物凄いパワーで非常階段に続く扉をパンチして吹き飛ばすヴィルゼート。
その扉に埋め込まれたガラスの破片がリオルドの左目に深く刺さり、とんでもない程の血液が飛び散る。
うわああああああ! 痛い…。誰かこの血を止めて!!
し、死んじゃう…!!!
何て事をするんだ…、ヴィルゼート!!!
どうせ俺が裏切ったからだろ? だったら俺を攻撃すればいいじゃないか…
よう、ネルフ!
それとリオルド…。お前等の身勝手な行為をエディール様が許すと思うのか?
彼からの命令なんだよ。始末、あるいは監禁だ…
ネルフは左目を傷つけられたリオルドを必死に守ろうと
自分のスキルを一時的に解放し、ヴィルゼートの顔目掛けて岩石砲を放ち、その破片が
リオルドと同じように左目に刺さり怪我を負ってしまい、そのまま非常階段で倒れこんでしまう。
そう、ネルフがゼルシードから貰ったスキルは「岩石」。
ああ…。お陰で助かった! い、痛いけどな…。
とりあえずここを離れなければ、命の保証はなさそうだな…
けれど、多分非常階段はマークされてる…。
それに1階には奴等がいる。ど、どうすれば…!?
その時、ヴィルゼートがやって来た扉から見知らぬ人が剣を背負ってやって来た。
おい、お前リオルドだろ…?
付いて来い! このヒルハイドタワーから出たいんだろ?
あぁ…! 話はここを出てからだ。
どさくさに紛れてこのブライドゼータを取り返した。
お前、幹部のネルフだろ。俺の前から消えろ!!! さもなければ…
いや、違う…。
お、俺は今日から… "元幹部" だ。
そうか。リオルドって言ったな!
付いて来るのか、来ないのかどっちだ!?
無事にこのヒルハイドタワーから出してやる! 俺はビアンラボのスタッフだ!!
リオルドが笑顔でネルフの手を差し伸べようとすると、1階に降りられる非常階段が
何者かに攻撃されて、ネルフはリオルドの手を握る事なく落下していく…。
その光景を見るリオルドは悔しそうな顔で彼にこう言う…。
(す、済まない…、ネルフ…! 助けてあげられなかった…。)
****
ここは無残にも壊された非常階段、1階…。
傷付きながらも倒れこんでいるネルフの元に
いくらたってもヴィルゼートからの報告が来ないので、自分自ら
薄気味悪い笑い方をしながら冷酷な足音を立ててエディールがやって来た。
おやおや、ネルフさん…
ようやく会えました。私に何か謝罪する事ありますよね?
お、俺は…、今日限りで幹部を辞めさせて頂く!!
そして弟の元に帰るんだ…。
でも、帰る前にお前には罰を受けて貰うぞ…。わりぃな、ネルフ…!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)