62話:王座の間の戦い!磔と刻印のカウントダウン!!
文字数 3,759文字
【オルーム(シルディート)】
ようお前等! これから王座の間でクロスとドルシードのバトルが行われるぞ…。
クロスが勝てばシルヴィンとインバを連れて脱出…。
負けたら皇帝により磔(はりつけ)にされ刻印を入れる…。
どっちにしても避けられないバトルが始まるから見物(みもの)だぞ。
最後まで見ないと…どうなるか分かるよな!?
またこの物語の何処かで会おうな…。
さあ、本編開始だ…!!
【前回のあらすじ】
無事に牢屋を脱出したクロス達は、鎧兵の間を無事に攻略し、とある1室に辿り着いた…。
そこにはさっきまでシルディートを説教していたドルシードと張本人が居た。
彼は暗躍組織「アンドルディシア」の御意見番、そして尚且つ皇帝の父親と発覚したけれど
見つかった事には変わりはなく、無事にここから脱出することを
誓い、クロスはドルシードに戦いを挑もうとしていた…。
※ 今作のエピソードにグロテスクなアイコンが含まれています。
****
ここは王座の間――。
赤いカーペットが敷き詰められ、その奥にある玉座に座っている皇帝
横にはルディア、レイディア、アージェス…。暗躍組織『アンドルディシア』のメンバー勢揃い。
重苦しい雰囲気を醸し出しながら皇帝はフフフと笑い、赤ワインを飲み干す。
無事に牢屋を抜け出せたんですね…。
お見事です。ただ見逃すとでも思ったんですか?
ここから無事に脱出出来ると思ったんですか?
それこそ愚の骨頂…。ここからは決して出られませんよ…
狙いが俺なら、シルヴィンとインバは無事にここから脱出させてあげてくれよ…!
お前、こんな事して楽しいのか!?
言わせて置けば…!!
皇帝、こいつを仕留めていいか!?
ふざけるのも大概にしろ。皇帝のブランドを汚した事…
レイディアも見過ごせないぞ…。なあ…!!
ダメですよ、クロスさん…。
皇帝に向かって"お前"と言ってはいけません…
目上の人には敬語を使うようにと習いませんでしたか?
…………!
レイディア…、何処となくエディールに見えるような気がするが…
エディールは弟だ。私は3人の兄弟の中で1番上です…
髪型だけ全員一緒です。決して笑わないように…
可笑しかったら貴方を消させて頂きます…。
ガチャンッ
赤ワインが注がれてあったグラスを投げ捨て、床は赤く染まっていく。
無視して長話していた事が気に食わなくなった皇帝はドルシードを呼び付ける…。
ドルシード…、来るんだ。
私の事を無視してレイディアさんと長話していたクロスを痛め付けてやれ…。
はい、皇帝…。
貴方に褒められるよう頑張る所存です…。
確かどうすれば"アレ"解放出来るんでしたっけ…!?
僕が教えてやるぜ…!
エディール様直々に教わったからな…。
もちろんレイディア、アージェス、ルディアも全員出来るんだろ!?
見てみたいなあ…。さぞかし強いんだろ?
もちろんだ。ただ余計なオーラは
身体に負担がかかる…。いざという時にしか発動しないんだ。
それはオルームだって分かるだろ?
ああ…。だから手っ取り早くクロスを落とすんだ…。
良いか、ドルシード…。もちろんお前にも
心の何処かに闇がある筈だ。それを憎め…
こうだな…。
私は皇帝…、アンドルディシアを守る御意見番。
心に光などない…、あるのはただ1つ。闇のみ!!
それを更に1段階パワーアップさせれば自ずともこうなる…。
さあ、やってみろ…ドルシード!!
出来ました…。闇が湧き上がるこの感じ、素晴らしいですね。
さあ、クロス…。何処からでもかかって来なさい…、私が相手になりましょう。
退屈だけは避けたいので、宜しくな!!
避ける事は出来ない…か。良いだろう…!
さっさと蹴りをつけてシルヴィンとインバを連れてここから立ち去ってやる。
ただ、皇帝と言ったな。お前だけは全員連れてここに殴り込みに来る日まで待ってろ!!
膨大な闇のパワーがドルシードを包み込む。
そこまでして皇帝は心の何処かにある感情を"闇"に変えて容赦ない仕打ちをして来る…。
それは例え父親としても計画を成功させるにはどんな事でも手段を選ばない。
息子に付き合うのも親の役目…。と思い込んでいる父親には何歳も離れているのにも関わらず
とことん皇帝(息子)のお世話をするのが何よりも大好き。
そんな中、ドルシードとクロスの運命のバトルが始まろうとしていた。
両手を膨らませ、勢いよく地面をパンチして
王座の間に響くような轟音、そして地響きがドルシードの元に迫り出す。
その戦いぶりを見ていた皇帝…
城を壊す気か!?
地響きなんて出しやがって…
ドルシード、早くとどめを刺しなさい…!
すみません…。急ピッチでやらさせて頂きます…。
そういう事だ…、皇帝を待たす事は出来ません…
私のスキル初披露です。準備はいいですか?
握爆(あくばく)…。実際にこの単語は存在しない造語の1つ。
効果は相手を握り掴んだ箇所から手に滲んだ汗が発火装置となり爆破させる事が出来る非情なスキル。
まさに禁忌と言わざるを得ない…。
クロスの元に物凄いスピードで走り
頭を掴み爆破させる。ヒルハイドタワーでエディールの禍闇の技を
喰らった時と同じように、再び頭から大量出血してしまい、前を向くことが儘ならない状態に…
はぁ…、はぁ…。くそっ…、くそっ…!!!!
ダメだ、こいつ等には敵わない…。
せめてこの最後の技でドルシード…
いや、皇帝の仮面を…外させてやる…!!!
右手だけを膨張させ、手を平行にして分厚い刃を玉座に座っている
皇帝に向けて発射するけれど、見えない壁に当たり全く微動だにしていない…
玉座に繋がる階段を禍々しい雰囲気で降りて来る皇帝の目に光など無い。
仮面で隠されているけれど、嘲笑っているに違いないと確信しながらクロスの元に近付く。
小声で聞き取れないんだ…。何か言ってみたらどうだ?
お前、ふざけてるのか…!?
クロスは戦闘不能に陥りながら、皇帝の指示に従っているドルシードに頭を掴まれてしまう…
もっと言うなら髪の毛を引っ張り上げられていて成す術ない状況になっていた…。
手袋を嵌めていた皇帝の拳が
クロスの腹部に目掛けて数発パンチを入れ始める。
オラッ!! もちろん痛いよな?
私に攻撃をした罰ですよ…。それ位当たり前です…
ぐはっ…!
もう気が済んだだろ…。
こ、殺してくれ…。お前の狙いは俺だろ?
お願いだ。兄の事は忘れてくれ…!!
ダメです…、私の偉大なる計画の為には犠牲は付き物です。
所詮貴方達は私の掌で踊っている駒です。
レイディア、磔の準備は終わっているか?
柱に縛り付けて、武器などを用いて公開処刑するのが磔。ただ、貴方には皇帝の指示で刻印を入れなければいけません…
いちいち2つの作業をやるのは面倒なので、1回で済まさせて頂きますね…
レイディアの鋭い眼差しが襲い掛かり、右手を翳し
クロスは丁寧に飾られている柱に縛られてしまい、額に刻印が入れられてしまったせいで
もがき苦しんでいる。さっきより更にダメージが畜産されてしまい吐血もしてしまう…
こ、殺せよ…!!
こんな姿、兄のグレイスに見せたくないんだ…。
ダメです。貴方は時が来るまで苦しんで貰いましょう…
シルディートさん。グレイスさんの元に向かって下さい…!
何処に居るかは知りませんけど、向こうも何かしらやっている事は間違いありません。
ああ…、良いぜ…。
ただクロス…、1発殴らせろ。
お前を襲わないと、変装出来ないからな!!
バコンッ
オルームの素早い拳がクロスの腹部に埋め込むように入り
さっきより大量吐血してしまい、しどろもどろ状態になってしまう…。
【クロス(シルディート)】
グレイスを襲えるな…。弱ってくれてありがとな!!
ただ刻印が入っていると敵だと思われるから、カモフラージュさせて貰った…。
あれ…。シルヴィンとインバが居ない…。殺そうと思ったけどまあ、いいか。
さあ、クロス扮するシルディートさん…新たに任務を与えましょう。
この大陸の何処かにいるクロスの兄、グレイスを見つけ次第殺すんだ…。
****
ここは小町『エジェテール』――。
クロスが磔にされている頃を見計らい、こっそりとシルヴィンとインバは颯爽と城を抜け出し
オルームによって崩壊させられた家の瓦礫を避け早足で郊外まで来ていた。
クロスが苦しんでいる時に、何にも出来ないのが悔しい…!
おい、戻るぞ…。助けに行くんだ…!!
ダメです…。いくらシルヴィンさんでも奴等には敵いません…
クロスさんに言われた通り、早く抜け道を見つけて
ヒルハイドタワーに向かいましょう。クロスさんの思いを踏み滲んじゃダメなんだ…
必ず人員を増やして、ここに戻って来ましょう…。
クロスさんは必ず生きて待っていてくれますよ…!
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