51話:全てを託した願い!舞台はヒルハイドタワーへ!!
文字数 5,590文字
前回のあらすじ
ニャタリウス…、ヒルハイドタワーの地下収容施設に閉じ込められていた実験材料の1匹。
猫のような姿をしているモンスター。亡くなっていてもマーブルは家族。
離れる事が出来ずに寄り添っている光景を嫌味に感じたエディールの
命令により、マーブルは血を全部飲み干されてしまい、ブルは意気消沈…
そのまま現実逃避をしてしまい、最上階である30階から
飛び降りてしまう…。
****
時は戻り、ここはビアンラボ――。
この話を聞いている限り、少なからずグラスも関わっていた事、
当の今まで忘れていたらしく、謝罪をして、深く反省もしている…
あの時は本当に済まなかった…
俺もあんな手段を取るなんて予想もしていなかった…
確か…、ニャタリウスだったよな。
そうだ…。忘れたくても
あの記憶だけは消す事が出来ない…。
そのせいで僕はエディール様に目を付けられ闇を注がれた…
話聞いていたけど…
皇帝は一体何を考えているんですか!?
もちろんエディールさんも…。楽しく生きている人だってクロスウッドにはいるんだ。
人の痛み、恨みとかって…。絶対にそんな物を味方に付けちゃダメなんだ…
その前にブル、お前どっちの味方なんだ?
エディール様に愛犬を殺されたならこっち側じゃないのか…!
なんとか言ってみろよ。まだ隠し事があるのか…。
クロスとジハイド所長がブルに必要以上に敵?あるいは味方か? を問い詰めて来る。
しかしながらヒルハイドタワーにてアルクの蘇生の計画を行おうとしている事は
誰にも言えない為どっちと捉えるかはまだ苦しい…
それにしてもグラスさん、ニャタリウスって一体何なんですか?
聞いた話だと、計画材料とおっしゃていたけど…
まさかこれから行う "計画" と何か関係が…!!
悪い…。俺はあの後すぐに
グライド研究所に行かされたから分からないんだ…。
それに一部の計画にしか携わっていない。済まないな…
クソッ…。奴等を阻止しないと行けないのに…
幹部のノルドイドの協力者だったオルガにも話は聞いた。しかしながら手掛かりはゼロ。
エディールの狙いが分からなすぎる。何処にも隙がない…
さすがマイティーダークを束ねるボスだ。侮れないな…
まるで保険をかけるかのように隅々まで策を練っているエディールに
踊らされているビアンラボのスタッフ一同。こう見えて体力面ではなく、頭脳面でも優れている為
現在マイティーダークや皇帝、そしてアンドルディシアの方が一枚上手(うわて)。
そんな中、取調室にオルガが汗を垂らしながら急ぎ足で入って来る。
どうやら切羽詰まっている状態…
ねえー、ヒョードくんにゼシアさん、それにルドスさんが
何処を探しても居ないんだけど…。何処に行ったか知ってる?
ルドスは医務室で寝てるんじゃないのか?
あ、さっき反省しろって言ったから屋上で寝そべっていたりしてるかも…。
落ち込んだ時はいつもそこにいるからな!
それ本当か、オルガ…?
弟が居なくなったなんて、今まで気付かなかった…。
一生の不覚だ、済まない…。ただ屋上には居ないぞ。
ずっとそこでレサリアと話していたからな…。だったよな?
はい、そうです…。ただ心配ですね…
それに屋上から見えたのはルドスさんがここから出て行くだけでした…。
何処に行ったのかは知りませんけど…。ん、ちょっと待ってください…
ネルフさん、彼…シャウトシグマ背負ってました?
あっ…! 背負ってなかった…。
それと同時刻にヒョードとゼシアが居なくなったと言うのか…。
この流れは、まさか…! あっ、クロスさん…今の話は無かった事に…
…………。
ネルフ、絶対に隠れてヒョードに連絡するなよ…!
ジハイド所長、俺の言いたい事分かりますよね?
ああ…。ネルフさん、申し訳ございませんが弟のヒョードさん、そしてゼシアさんは
シャウトシグマを奪取した可能性が高くなって来ました。
その理由は知りませんけど、確率は極めて高いです…
見つけたらすぐ捕獲するようにと各町に知らせますね。
同時刻に居なくなったのはルドスだけではない…
ヒョードとゼシアの姿が何処にも見当たらず、屋上にいたネルフとレサリアの証言により
シャウトシグマを背負わずにビアンラボを立ち去っていたのを目撃している。
一番怪しいのはこの2人。
もし彼等が本当に剣を奪ったのなら、何故そんな事をしたのか…その謎は分からないまま。
****
ビアンラボ3階、会議室――。
リオルドが居ない今、彼の為に持って来たリリカルラビットにまつわる
資料を見られるのはシェリアと妹のミア。ページを捲りながら隅々まで読み込む様子は
さすが研究者の性。しかしながら知らない言語で書かれている為、頭を抱えている…
やっぱり分かんないよ…
見た事ない文字だし、それに所々破れているよ…
これ、いつの資料なんだろう…?
もちろんです…。
私達が読んでいたのはリリカルラビットに関する資料です…
これを読めば多少、アルムさん達の正体が分かると思ったんですけど…
ティアラさん、分かります?
うーん…、ちょっと分からないですわ。
ごめんなさい…、お役に立てなくて…。
あら、構わないですよ…
やはり、この資料を読めるのはリオルドさん…彼だけですか…。
ここで暇してるのも退屈です。いっその事…
ヒルハイドタワー直々に向かって直接話そうかしら?
そこまでだ…!
ちょうどここにいるのは女性だけか…好都合じゃないか、なあ…セイラ。
普通に侵入出来るなんて前より手薄になったじゃないのか?
俺が居なくなったからか? 良い気味だな…。
その声は…、
元ビアンラボスタッフ…そしてエディール様の協力者…スティードさん…!
ここに来たのも久し振りだな…
なあ…セイラ。シェリアと言うアマからその資料を奪い取れ…そして俺によこせ。
読めないんだろ? エディール様に渡せば解読してくれる…。
あ、アマですって…。
見ず知らずの人にこの資料は渡しません…
エディ―ルさんでも分からない言語だったら、どうするおつもりなんですか…?
ふん。ヒルハイドタワーの地下収容施設にリオルドを匿っているんだ…
本人が黙秘を貫いても、意地でも聞き出す…!
それがエディール様のやり方だ。残念だったな…
それに、俺が1人でここに来るとでも思ったか…?
ここに来たもう1つの理由を教えてやる…。クロスの確保だ…!!!
聞こえるか、ゼロシード…。任務完了したか?
****
ビアンラボ2階、取調室――。
さっきまでブルとナギが座っていた椅子、そして机が壊れている。
形勢逆転したかのように、ブルは一目散にナギ…、そして
襲撃して来たゼロシード以外の腕を捕獲スキルで縛り上げる。
そう全てはエディール様の思惑通り…
ブルとナギ…、スティードとゼロシードによる2ペアが時間差でビアンラボを襲撃するというシナリオ。
シャウトシグマを破壊、そして皇帝からの指示によるクロスの捕獲。
否が応でもビアンラボのスタッフと戦う事になる。いざと言う時は負けを
認めて、同情を買って貰う。ブルが自分の過去を話した事も作戦の1つ。
ああ…、さすがエディール様が指揮しているだけの器はあるな!
お前等、ご苦労様…。もういいぞ…!!
クロスは黒鴉で捕らえた…。もう逃げられないぞ…
くそっ…、離せ…! お前のスキル…黒鴉って何だよ…!!
初対面のくせに強過ぎる…。それに何か重みもある…
聞いた事ないスキルだ…、詳細が分からないから対処も出来ない…。
ただ1つだけ言える事は、奴の身体には鴉(からす)が宿っている…
そう捉えていいんだよな、えっと…。
ゼロシードだ…。名前ぐらい覚えておけ…!
さあ、クロス…立つんだ。お前に会わせたい奴がいる…
もし抵抗するなら…、ここにいる奴等を全員始末だ。こう見えて暗殺者なんだ…
暗殺者…! お前等の仲間にオルームって言う奴いるだろ?
ああ…オルームだろ?
俺等と同じ幹部ではない…。けれどもエディール様の
崇高な部下でありゼロシードと同じ暗殺者…。
彼のパワーは計り知れないからな…。お前達が敵うような奴じゃないぞ…
時間のようだ…。
ナギ、ゼロシード、スティード…ヒルハイドタワーに戻るぞ…。
さあ、クロス…こっちの領域に来い…! シャウトシグマは破壊出来なかった…
しかし彼の捕獲は成功だ。エディール様に良い報告が出来るな…!
最後に1つだけ言わせてくれ…
ヒルハイドタワーの最上階にいるエディール様が、ビアンラボで任務中の4人を呼び戻そうと
スキル「禍闇」を使い、彼等の足元から突如として闇の煙が発生し、取調室から彼等の姿が消えて行く。
ただ、ブルの裏切り発言を予想出来ずにいたゼロシードとナギは…
ブル、これはエディール様への裏切りとみなすぞ…!
どういうつもりだ!?
この発言、しかと耳に入れた。
エディール様に通告する。ブル、お前それでいいのか…!?
もう悪い過去は捨てるんだー。
やっぱり笑っていたいんだもんー!!
クロスさん、大丈夫だよ。僕が命に変えても守るからっ!!
お前、良い奴なんだな…。
ブルか。俺だってスキルを持ってる!
いざと言う時はこの腕で守ってやる。
あのエディール様を裏切るんだろ? 気に入ったぜ…
こんなにお前を助けようとしている仲間がいる…。お前、幸せもんだな…
精鋭部隊を引き連れて必ず助けに行ってやるぜ…!
エディール様、そして皇帝や悪い人は全員俺達が一掃していく。
ナギやゼロシード、スティードは取調室から嘲笑うように消えて行く。
クロスもビアンラボの職員やジハイド所長を信じているからこそ、ブルの気持ちも良く理解していた。
どんな時も笑顔を絶やさない…。いくらエディールに操られていても、
愛犬マーブルと一緒に過ごした思い出が彼が纏っている闇に打ち勝った。
そう、あの日ヒルハイドタワーの最上階から飛び降りた時は絶望しか感じなかった。
しかしながら、どんな辛い事や苦しい事があってもマーブルをずっと想い続けて来た。
そして…
僕、マーブルの為に頑張るからね。と笑顔で約束を交わす――
****
数時間後、ここはビアンラボの会議室――。
ジハイド所長を筆頭に医務室で休息を摂っていたシドルフも合流して
ヒルハイドタワーへ向かうメンバーに関して話し合っていると、思わぬ来訪者が現れる。
俺の名前はゼルシード。
ブルさんが捕らえられてしまったので、代わりに迎えに来ました…。
安心して下さい、貴方達の味方です…。
はっ? どういう事ですか…。
俺のスキルを奪ったのに、良く味方なんて言えますね…。
どういう事か説明してくれませんか?
貴方の元のスキルは枯渇…。
禁忌の1つだ。悪の心が芽生えてないと習得出来ない…。
それに皇帝の指示で誰にどのスキルを譲渡するかは決められている。
シドルフ…、過去に1回でも悪事を働いた事あるか?
え、えっ…じ、実は1回だけ…。
シャランアゾールにあるお食事処で食い逃げを…。
バレたくなかったので、ずっと袈裟を身に着けて放浪を続けていました…
食い逃げはいけませんよ…
ゼルシードさん、つまりは1回でも悪事を働くと
与えられるスキルは禁忌になるという事ですよね…。
確かに当時グレイザーさんはまだ幹部入りを果たしていませんでした。
だから、シドルフさんは元枯渇のスキル所持者だったんですね…。
ああ…。ただ皇帝に呼ばれ枯渇のスキルをグレイザーに引き渡すようにと命令が下った。
これ以上、シドルフには悪事を働いて欲しく無かったからな。
案の定、樹木というスキルが彼に備わった。
ちゃんと反省をして善の心に戻った証だ…。
そうだったんですか…。
誤解をしてしまってすみません…
ずっと奪ったと勘違いしてました。俺の事を思ってくれたんですね。
ありがとうございます…!!
樹木を使いこなせたら、どんな敵だろうが圧倒出来るんだぜ…
シドルフ、お前には期待してるんだ…!
クロスとルドスが居ない今、お前だけが頼りだ。
ヒルハイドタワーに行こうじゃないか、俺と一緒に…!
行くのはシドルフだけじゃないぞ…! 俺も行かせて貰う。
今のままじゃダメなんだ…。
けじめをつけて、エディール様に目の物を言わせてやる!
後行くメンバーはジハイド所長、ネルフ、レサリア、
オルガ、そしてアルバート…、計7人だ。良いな?
分かりました。じゃあ、すぐに出発しましょう。
ヒルハイドタワーに行く以上、覚悟を持って下さい…
もしかしたらもう戻って来られない可能性もある…! どうだ?
【ジハイド所長/オルガ/ネルフ/グラス/シドルフ/アルバート】
望むところだ…!!!
幹部「マイティーダーク」、暗躍組織「アンドルディシア」、そして黒幕は皇帝…。
敵は待ってくれない…。本気を出して潰しに掛かって来る。
けれども悪を打ち砕かないと大陸「クロスウッド」に平和は戻って来ない。
今、全てを奪還して未来を掴む為、最終決戦地の1つである
ヒルハイドタワーへ向かい始める…。
第1部:決意のシャウトシグマ編終了――。
****
ここはエジェテール、郊外にある古城――。
王座の間にある玉座に久々に皇帝が座り始める。
ここに座るのも久し振りだな…。
アンドルディシア…、全員居るか?
【シルディート】
居るぜ…。やっぱり玉座に座る皇帝は良いな!!!
【ルディア】
はい…。皇帝がやっと戻って来た…。待ってたぞ…!
【レイディア】
もちろんです…。皇帝が戻って来たという事は始まるんですね…
【アージェス】
ふん、やっとか…。待ちくたびれたぞ…!!
きちんと皆さん揃っていますね…。
それでは、始めましょう。リリカルラビットの…
エジェテールの古城に再び戻って来た皇帝の指示により
暗躍組織「アンドルディシア」が動き出す…。
次回、第2部:決意のシャウトシグマ編開幕。
いよいよ舞台は幹部達が根城にしているヒルハイドタワーへ…。
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