97話:怒涛のヒルハイドタワー!マイティーダーク壊滅劇開始!!(part4)
文字数 3,255文字
ヒルハイドタワー15階、大広間――。
アルバートを庇いながら命を引き取ったジルバ……
手や服が汚れようともルドスは必死に彼の名を呼び続けた。
起きはしない事分かっている。それでも、ずっと一緒にいた大切な家族。
今までに見せた事が無い大粒の涙を零しながら
彼の手を握りずっと泣き続けていた。
ううっ。兄さん……
お願いだから起きてくれよ!
一人ぼっちになるなんてイヤだよ……!!
見るんだ、ルドス。
これがお前の兄ジルバの亡き顔だ……。
こじゃれた真似をするからこんな結果になったんだ。
恨むなら自分自身じゃなくアルバートを恨む事だ。
違う……、恨むのはヴィルゼートだ。
誹謗中傷にも程がある。人の頑張りを嘲笑いやがって……!
アルバートは必死に自分の体型と戦っているんだぞ。
あ? 全ては強さだ……
こんな贅肉だらけの身体で俊敏に動けるか!?
階段からコツコツ と不協和音を立てて
亡くなっているジルバ、そして寄り添って最期を見届けたルドスの元に
背筋が凍り付くような眼差しをして近寄っていくエディール……
邪魔なモノは廃棄処分しないとな。
さあ、早くジルバをヒルハイドタワーから落とすんだ……!!
ヒルハイドタワーは常に綺麗を維持しなければならない。
後はそこで横たわっているジルバを処理するだけ。
おい、そこを退け……!
い、嫌だ……。離れるもんか!!!
もう俺は戦わない。兄さんと一緒に死ねるなら本望だ……
そうか。その言葉、待ってたぞ。
さあ、歯を食いしばれ……。
その一瞬、エディールの腹部に目掛けて
得体の知れない物体が飛来し見事にクリーンヒットし、
苦しそうな顔をしながら口から血を流し、腹を押さえている……
う”っ。だ、誰だ……。
はっ。ノルドイドさん、上です……!
早くトドメを刺して……
自分の中に眠るパワーを解放し、渾身の力を振り絞り
上空から攻撃を仕掛けてきたのは元マイティーダークメンバーであるグレイザー。
善に戻ってしまうとスキルは無効化となる。
ただ、彼は分厚い筋肉を所持している為
頼らずに体力で圧倒的に強い彼等を翻弄し始めて行く……
はぁ…、はぁ……。
痛てえじゃないか、グレイザー!!
グレイザーさん、黙っていては分かりません……。
何か喋ってくれませんか?
…………。
誰だ、ジルバを殺した奴は?
ルドス、教えてくれ!!
グレイザーは15階大広間で血を流しながら亡くなってしまったジルバの
遺体を丁重に運ぼうと、赤ちゃんを抱き抱えるかの用量でしっかりと身体を支え持ち
しっかりと彼の有り様をしかと自分の目で確かめている……
ジルバ……、長い間辛かったんだろうな。
左眼負傷、そして刻印まで入れられて……
それにクロスピアで弟と再会出来た時、どんなに嬉しかった事か……!!!
安らかに眠ってくれよ! でも、ここじゃ寒いからな。
ちゃんと医務室まで運んでやるから安心してくれ!
ルドス、最後ぐらい兄が好きだった笑顔見せてあげたらどうだ?
そうだな! 兄さんも
天国で俺の笑顔を思い出してくれたら嬉しいな。
そうだな。それとアルバート、一緒に来てくれ。
辛いけど歩けるか?
は、はい……。何とか大丈夫です。
御気遣い頂きありがとうございます!!
長い間、グレイザーはルドスといがみ合っていた。
以前ヒルハイドタワーからブライドゼータ所持者ビランの為に、例え悪を纏う剣だとしても
取り戻す事を約束した。その際にルドスと対峙して拳を交えつつ彼の頬に
傷を付けられた過去がある。ただ、善の心を取り戻した際に
自分の悪い思い出が全て無くなってしまう。
もちろん、それは所持している禁忌スキル「枯渇」にも影響が出る事。
しかしながら、実は以前その事に関してゼルシードに聞かされていた……。
それはもう少し先のお話。
ジルバの遺体を医務室に運ぶ。
目前で善の行為をしている彼達に苛立ちを隠せない
マイティーダーク。特にディゼールが瞬時に左手に溜めたパワーをエネルギー弾とし
彼の背中に向けて放つ。けれどもグレイザーは動じない……
もちろんだ。ルドス、お願いがある!
ジルバを下の階にある医務室に連れて行ってあげてくれ。
今度会えた時は、俺と一緒にトレーニングしようぜ。それまで……
****
場所は変わり、ここは古城フィンディル――。
裏庭に隠されたルートを使い、辿り着いた先に発見したのは
キシャーロック一族の主人ブレンダ、家内のレテール。
突如として煙内に姿を晦まし辿り着いたゼルシード、そして警察機動隊「セクションゼット」の署長
トランドは彼等の悪事を全て暴く為にこっそりと潜入したのも束の間
皇帝には全てお見通し。常に装着していたマスクを外し
彼等を確実に仕留め、城内へと案内されていた……。
あの部屋で何をしていたんですか?
特にゼルシードさん……、貴方にはちゃんと命令を下した筈ですよ。
スキルの事だろ?
もう既に指定された人に全部習得させたぞ……
まだ何かあるって言うのか?
確か資料だと……
クロスウッドではスキルと禁忌スキルに分類され
ゼルシードさんは″譲渡″の持ち主。当たってますよね?
そうだ。字の如く様々なモノを譲り渡したり、習得させる事が出来る。
たださっきも言った通り、禁忌スキルに関しては
過去に1回でも悪事を起こしたら
必然的に習得してしまうんだ……。
それと同時に各1人につき
″譲渡のエネルギー″ が畜産されて行く。
だから現在相当スキルパワーが溜まっている筈。そうですよね?
皇帝の前では全てお見通しなんだ。
包み隠さずに言った方が身の為だ!
どうやら言葉を詰まらせていますね。
正直に白状して下さい……。じゃないと……
な、何だ……?
言ってみろよ。ただもしトランドさんを
始末するようなら今までの一件は交渉決裂させて頂くぞ!
…………。
ルディア、ゼルシードを痛め付けてやるんだ。
そして意地でも彼が黙り通している事を聞き出す。良いですね?
お手柔らかに頼むぞ。
何処からでも良いから掛かって来い。
俺のスキル、見せつけてやる!!!
ああ……、俺も忙しいからな。
さっさと片付けてやるから覚悟しな!!
″譲渡″。ゼルシードが持つこのスキルには相手に譲渡、そして習得させる能力の他に
1人につき、様々なエネルギーを溜める事が出来る。
そう、彼はこの力を ″アルクの蘇生″ に
使おうとしている事、是が非でも皇帝やアンドルディシアの
メンバーに通告する事など出来ない為、意地でも守り通す事を決め
今、ルディアとのバトルが始まろうとしていた――。
****
場所は戻り、ヒルハイドタワー――。
15階の下の階にある医務室へ亡くなったジルバを抱えながら
大広間でルドスを見送ったグレイザーは、以前所属していた
マイティーダークメンバーと対峙していた。
お前も地に落ちたな……。
ジルバはもう亡くなったんだ。
遺体を処理したって別に困らないだろ……!!!
あの時のグレイザー様は何処に行ったんだよ!
全てを枯らし、邪魔する輩は全員排除して来たあの姿。
もう1回見たかったけど、それももう叶わないんだろ?
だったら、今度は私達がグレイザーを
始末する番です。何か言い残す事は無いか?
今だったら聞いて上げますよ……。
命の尊さを分からせてやる!!!!さあ、始めるぞ。今度こそマイティーダーク壊滅だ……。
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