82話:豪邸に隠された秘密!拳道具「ロックダスター」への入り口!!
文字数 3,510文字
【前回のあらすじ】
海産業会社「クランチャード」所長フロストの努力を無駄にするのは
出来ないと切に願ったブリジスの弟であるグリアは、彼がいるヒルハイドタワーに向かう事を決意する。
一方、その頃――。
エバスの自宅……、いや豪邸がある
クロスウッドでも有数な一等地「ヴィバール」に
彼の護衛に就いているエンディアとハディーサを連れて遂に到着。
2人にはこの敷地に入る事すらハードルが高いと思い、ちょっと後退はしたものの
御好意に応える為、少し緊張した様子で中へ案内される。
そして大広間で巡り合ったのは
家内、要するに母であるニリア。そして執事のローウェン……
ただ、彼が最後に言い放った「シルディート」。
この発言がエバスを含んだエンディア達にも影響を及ぼす事に。
****
ここは1階、家内のニリアが出入りしていた扉が入った所にある部屋「食堂」。
奥にある厨房で彼女は複数名いるシェフに向かって指示をし始める。
ほら、貴方達……!!
久しぶりの来客が来たんだからビシッとしなさいっ。全くだらしが無いんだから……。
ほら、お茶を出す準備とサラダの提供をお願いしますよ!
あ、それとたんぱく質豊富よ。伊達にここのシェフはやっていません……よ…ね。
何ですか、その言い方……?
作る料理にも感情が入るんですよ。それで美味しい、不味いが左右されます……。
ほら、いつまでのんびりしてるのかしら?
さっさと作って下さいね! では、また後で伺います。
す、すみません……。丹精込めて作らさせて頂きます!!
主人エバスの家内であるニリアもまた違った意味で
怒らせると怖い。クロスピアでミントとユズキの2人を連れて
食事した時も「常にシェフには美味しい物を振舞うように」と言い聞かせていた……。
それは彼女仕込み。料理を振舞うと言う事は
味わって貰いたい為、作り手の感情や気持ちが物や形となって現れる。
ダラしない態度を取っていたら、その分料理も不味くなる。
せっかくの来客に出すおもてなしを
提供をする以上、心を込めて作る習慣を身に着けるようにとシェフに教育をしている。
****
ここは先程ローウェンが大広間にやって来た際に出入りしていた扉の先にある部屋――。
エバスが常に綺麗であるようにと言い聞かせていた為、整理整頓されていて
隙間が無いように様々な工夫を施しながら本が片されている。要するに書斎。
う、うっ……。俺、本が苦手なんだ。読むと頭が痛くなる……
ジムトレの方法が書かれている雑誌とかあるけど、
そんなのには絶対頼らないからな……!!!
エンディア様、大丈夫ですか……!?
相当冷や汗掻いていますよ。
なんとか大丈夫だ。苦しいけどな……
そんな事よりローウェン。あの本棚の向こうに扉があるぞ。
あそこもよく出入りしてるのか?
いや。俺もこの部屋で整理整頓を良くするけど
あそこにどうやって行けるのか分からずじまいなんだ。
この書斎に眠る絡繰りみたいなモノがあるのかも微妙だしな……
本…、絡繰り……。ああ、マジ頭痛てぇ!
悪いんだけど早くこの部屋を出たい。いいかな?
とりあえず ″あの扉″ に関しては後回しだ。
分かりました。それでは次は2階の応接間に向かいましょう……
ガタイが良く、誰から見ても強そうな
チーム「カインドフォース」メンバー、名はエンディア。スキルは「轟炎(ごうえん)」
リーダーでありながらも親友のエディールを助ける為に常に優しい心を持つ事、
そして笑顔を大切を心掛けている。しかしながらそんな彼にも弱点がある。
それが ″本″と ″謎解き″。
要するに頭を使う事や、色んな情報を得られる本や新聞的な読み物が大の苦手。
自分が体力面で勝っているから、他の分野をハディーサやユリシール、システィアの3人で
補え合えている。それこそがメンバー間の絆が深い証拠。
ただ、それを引き裂くようにローウェンが怪しい雰囲気を醸し始めて来ている……。
(成程な……。エンディアの弱点は
″本″ と
″謎解き″ か……!
要するに俺のような博識が苦手。これは良い事聞いたぜ……)
****
ここは2階の応接間に向かう階段。
改めて大広間に掛かっているエバスの肖像画をジッ と見ながらも
それにしても完成度が高い事に気付き、驚きを隠せずにいる
2人はこの絵を書き下ろした ″絵描きのロイジャス″ の事を聞き始める。
ふーう、何とか落ち着いたぜ。
俺は二度とあの書斎には入らんぞ……。分かったか?
分かってますよ、エンディア様!
もしあの部屋に謎解きがあるなら、俺に任せて下さい!!
それにしても、このエバスさんの肖像画からは類まれなる努力が滲み出している。
トレーニングと同じでこれ位のレベルに達するまで相当頑張ったようだな。
一度でも良いからこれを描いた……、えっと誰だったかな?
当ても無く彷徨う事……、簡単に言えば ″歩き旅″ です!
そう言えば、ロイジャスさんが拠点にしていた場所が
時間は経つけれど、スキル「枯渇」の影響で全て枯れ果ててしまったようだ。
その前から彼は行方知らずだけど、今何処に居るんだ?
グレイザー!!!!枯れ果てた? ふざけんじゃねえよ、自然に謝れよ!
ハディーサ、俺は決めたぞ。エディールはもちろんだけど、グレイザー達も
絶対に良心を取り戻してやる。闇? そんなのこの拳で撃ち消してやる!
友達想い、さすがですね……。
そうと決まればエンディアさんに ″アレ″を託しても大丈夫そうです。
ずっと2階の応接間で自分の好きなワインを飲み干しながら
最近のクロスウッド情勢や、為替変動が記載されたこの大陸独自の専門誌を見ながら
執事のローウェンに連れられて2人が来るのを待っていた。
しかしながら、2階に続く階段に掛けられていた自分の肖像画付近から彼等の声が聞こえ
気になる事を呟いていた為、自分自ら足を運ぶ事に。
″アレ″ って何だ?
もったいぶらないで教えてくれ……!!
当家に代々伝わる武器のようなモノです……。
詳しい事は応接間で話させて貰います。体格の良かった1代目の主、要するに私の先祖が
この家に残した由緒ある物です。拳に嵌めて打撃力を更に高める……、名前は……
″ロックダスター″……。エンディアさんに必ず似合っている武器です。
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場所は変わり、ここはヒルハイドタワー正面入り口。
複数名の警備員が、海産業会社「クランチャード」からやって来た当職員グリアを
取り囲み、まるで事情聴取を受けているかのように尋問をし始める……
もうーっ! さっきから何度も言ってるのに
聞いてないなんてダメだよー。早く中へ入らせて下さいっ!
だーかーら、これからここでエディール様による
偉大な計画が始まるんだ。いくら子供のような素振りを見せていても
ダメな物はダメだ!! それに部外者だろ? さっさと帰れ!!!!
なっ、何だ……。く、苦しいぞ!
何かに締め付けられているようなこの感覚。一体誰の仕業だ?
お、お前だな……。さっさと解除してくれ!!
捕縛完了だよー、ブリジスくんっ!
ある意味スキルを返却しなくて正解だったかもねー。
あっ、いたよー。君が弟のグリアくんだねー!
初めましてっ! 僕はブルって言うんだー!!
可愛くて運命感じちゃうよー。
あっ、えーっと……
助けてくれてありがとうございますっ!
僕はグリアだよー。お兄ちゃんは……、あっ、いたー!!
グリア、来てくれてありがとねー!!
これでマイティーダークのスキル阻止が出来るよー。
ブルくんっ、ここの温泉覚えてるかなー?
うんっ! 確かエディール様とグレイザー様、
そしてオルーム君がお湯に浸かっていたら彼達の闇が一旦解除されたんだよねー。
多分効能や成分にヒントがありそうだ……
って、まさか……
ここの温泉の成分に関するスキルをグリアくんは持ってるのー?
僕も先日まで知らなかったんですよー。
お兄ちゃんから連絡が来て、まさか自分のスキルが
こんなに役に立つ日が来るなんてと思った位ですっ!
そう…、あの露天風呂を調べてみたら
″とある事″が判明したんだ……。
成分表に必ず記載されているのはナトリエアム。
それに共鳴して彼等の闇が解除された。もしかしたらマイティーダーク、
そしてエディール様を阻止する特効薬になるかもしれない。その上……
同じ効き目を持つスキルを所持しているのが僕の弟、グリアだ……
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