95話:怒涛のヒルハイドタワー!マイティーダーク壊滅劇開始!!(part2)
文字数 5,237文字
幹部「マイティーダーク」……
ノルドイド、ディゼール、ヴィルゼートの各3名から成る
ボスのエディールを筆頭に皇帝の元、結成されたリリカルラビットの捕獲を執行するチーム。
「クロスウッド」の中で一番の高さを誇っている施設であり
ビランラボ同様、大陸の平和を守るヒルハイドタワーを根城にしている。
他にもメンバーとしてグレイザー、ブル、ナギの3名も属していたけれど、
彼等の悪事を阻止するモノたちのお陰で
改心、そして脱退させる事に成功――。
ただ、ボスの闇は常に深まるばかり。計画も最終段階に入る為、
とことん邪魔する者を始末するマイティーダークの勢いは止まる事も知らぬまま
1戦目「ルドスvsノルドイド」
2戦目「ジルバvsディゼール」
3戦目「アルバートvsヴィルゼート」と言った
対戦カード形式での命を懸けた全面戦争が始まろうとしていた……。
そして現在、ヒルハイドタワーの他にもクロスウッドの割とあらゆる場所で様々な動きが確認される。
****
一等地ヴィバールにあるエバス宅を後にした3人。
チーム「カインドフォース」の男性メンバーであるエンディアとハディーサ。
そして兄弟揃って暗躍組織「アンドルディシア」のメンバーであり次男のローウェン。
エディールの手により再び闇に染まってしまったエバス、そして
良心を取り戻したローウェンへの逆恨みとして捕らえられたオルームを助ける為
ヒルハイドタワーへと向かっていた……
エンディア、ハディーサ……、まずお前達にお詫びをしなくてはいけない。
オルームの為に色々と動いてくれてありがとな!
ああ、言っただろ。全員助けるって……!
オルームやシルディートも苦しんでるなら尚更だ。
家族は大切にしてあげないとな!!
でも、エンディア様……。
両親の一件は全てオルームの仕業。そして
俺達の出身地エジェテールが一夜にして滅ぼされたんだ……
あれだけは忘れる事が出来ない……!!!
家族を代表して俺に謝罪させてくれ。ホントに済まない……。
あの時、オルームを食い止めていれば
こんな事にはならなかったんだ……。
物事にはちゃんと時間軸がある。そうだ……、アイツがエジェテールを崩壊した後
俺とシルディートの元に来たんだ。その時、俺自身何も出来なかった……
悔やんでも悔やみきれないんだよ!!!
****
時間軸で言うとエジェテールを崩壊し住民を1人残らず殲滅した後のお話――。
最後にオルームが仕留めたのはエンディアの両親。
彼の猛攻から逃げ出し、友達だったハディーサや
ユリシール、システィアの元に向かい始める。
ただ1軒ずつ確認しながらも、もう彼等の自宅も見る影がない……
皆、何処に居るんだよ……!
ハディーサ、ユリシール、システィア……。
お願いだから無事でいてくれよ!!!
その時、近くの建物の瓦礫の中から
「エンディア……」と
小声で誰かが囁いているのを耳にする。
1つずつ重たい瓦礫の破片を退かしていくのは
彼の友達であるハディーサ。そして運良くも彼の家に遊びに来ていた
ユリシールとシスティアの2人も無事でいる事を確認出来た事で、少し喜びの顔を見せていた……
【ハディーサ(私服)】
ふぅ……、突然過ぎたからビックリしたぜ。
ユリシール、システィア。大丈夫か?
【ユリシール(私服)】
ええ。急すぎる事態に対処出来なくて
済まなかったわ。えっと……
【システィア(私服)】
ユリシールお姉ちゃん、ありがとうねっ!
あっ、エンディアお兄ちゃんだー!!
よ、良かった……!! ハディーサ、聞いてくれ。
見知らぬ奴のせいで俺の両親が……。
エンディアが着ているシャツに滲み込んでいるのは
必死に逃げて来た汗だけでなく、目の前で両親が殺された事により流した涙も……
友達であるハディー達サは全く知る由もない為、自分の身に
何があったかを一字一句話し始める……。
****
時は同じ頃、古城「フィンディル」近くにある噴水――。
エジェテールの町、そして住民を殲滅終了し皇帝に完了の報告をしようと
戻って来たオルームの目の前に立ちはだかるかのように、まだ ″悪に染まってない″ 身寄りの兄弟
ローウェンとシルディートが彼の悪事を阻止しようと説得し始める……
1人残らずと命を受けたんだけどなあ……
まだ残っていたか。どうせ僕より弱いんだろ?
だったら数秒で片付けてやる。
やめろ、オルーム……!
お前、自分で何をしたか分かっているのか?
もうこれ以上はよせ!
ほんの数分でこんな事態を巻き起こすなんて……
本当のお前を取り戻してくれよ、お願いだ。俺の言葉聞こえないのか?
なっ……! 俺の事忘れてしまったのか?
オルームの兄、シルディートだぞ……。そんでもって
俺の横にいるのは次男のローウェン。お前の大切な家族だ……!
僕に家族なんているの?
シルディートとローウェンか。名前は覚えさせて貰った……
でもね僕の殲滅衝動は止まらない。ねえ、教えてくれない?
どっちの血が上手い?目の前に居るんだろ。殺してやるよ……!
兄弟である2人の声が全く聞こえない中、
非情過ぎるオルームの元に ″皇帝からのテレパシー″ が伝わる……
(オルームさん、まだエジェテールの住民を殲滅し切れていません……。
まだ数名の遺体を確認していないので、続行の程宜しくお願いします。)
ちっ。まだ生き残りがいたか……差し詰め子供と言った所かな。
ガキなら瓦礫の隙間に隠れる事も可能だからな。
仕方ない、僕の強さを示し付けてやる……。
行くな、オルーム……。本当にどうしたんだ?
お前、まさか記憶が無いのか……?
だったら俺達2人で何とかしてやる。
だから、戻って来い……!!
オルーム、聞いてくれ。
俺達はただお前を助けたいだけなんだ。
お願いだ、そこだけは分かってくれ!!
地面に自分のスキル「断割」を打ち付け
阻止する事が出来ない状況にする為、突如として彼等の足元から土柱を出し始め
身動きが取れないように体力をじわりじわりと減らしていく……
邪魔すんな、バーカ。
これで僕を阻止する事が出来なくなった……
また何処かで会おう。その時は全力で殺してやる。
せいぜい生き延びてくれよな、じゃあな!!!
まるで捨て台詞のようにローウェンとシルディートに向かって吐き、
オルームは自分自身に言い聞かすのように
皇帝に貢献する為、指示を全うしている。
そう、彼等が兄弟である事を忘れる位まで……
*時間軸の説明
この後、エンディア達の元にオルームが現れるけれど
彼の猛攻を阻止する為、エディールが命を張って彼等を助ける……。その勇気を
称えた皇帝が彼の奥底に眠る ″闇″ に興味を持ち掛け、古城へと案内されてしまう――。
****
時は現代――。
ローウェンの口から語られたのは自分の弟、オルームに関しての出来事。
たった1人の息子を守るのが長男・次男の役目。
何も出来なかった事を悔やんでいるけれど……、やはり熱き男エンディアだけは違った。
ローウェン、お前の気持ちよく分かったぞ。
自分自身を悔やむな。間違っているのは皇帝だ……!!!
で、でも……俺はオルームの保護者なんだ。
家族としてあんな姿見たくなかった。
顔を上げてくれ。ローウェン……
お前相当オルームの事が好きなんだな。
エンディア、これは俺達の良い所見せないといけないぞ!
ここは一等地ヴィバールから少し離れた草原地帯。
人気や動物の気配を感じ取れない事を把握し、
エンディアの握力95を誇る右腕の強力パンチを地面に叩き込む……
地響きと共に地面から出て来たのは
これから向かうヒルハイドタワーより大きく聳える岩場みたいなモノ。
エンディアとハディーサ、そしてローウェンは
それに乗り込み、ほんの数秒目を瞑り……
目を開けて彼が見た風景は
この大陸「クロスウッド」――。
リリカルラビットを巡る冒険はまだ終わらない。
終わりが来る冒険などないと誰もが思っている。それでもエンディアの願いは ″全員を助ける事″ 。
皇帝の計画を阻止し打破した後は、
皆で笑い合えるような仲で居たい。
これがチーム「カインドフォース」メンバーが笑顔を追求している理由。
どうだ、ローウェン……
ここから見える景色、綺麗だろ?
俺はこの大陸クロスウッドが好きなんだ。だろ、ハディーサ?
ああ……、そうだな。
見てみろ。悪事を働いていたらこんな眺めの良い景色も
クリアに見えないんだぜ!! そうだと思わない?
俺の目には素晴らしい景色が見えています!
何か自分がやっていた事もちっぽけに感じて来ました……
そうだろ? やっぱローウェンの笑顔はいつ見ても癒されるな……
その意気だ。これならヒルハイドタワーに……
何かが上空からやって来る……!ローウェン、ハディーサ。隠れてろ!!!
あ、ああ……。
ローウェン、あそこの岩陰に隠れるぞ。
遥か上空を漂う飛空艇から2人の男性が各目的地に向かって飛び降り始めていた――。
そう、ヒルハイドタワー付近の岩場を目掛けて
飛んで来ていたのはエンディアと同じ熱き男であり
自分流のトレーニングで手に入れた肉体を持つ
機動警察隊「セクションゼット」のメンバー、フォザード。
エンディアの目の前に難なく着地する事に成功――。
ふぅ。あれがヒルハイドタワーか。
目標定めて飛んだつもりだけど、まあ仕方ないか……。
お前、エンディアだろ?
小町「エジェテール」出身。顔は行方不明者リストに
掲載されていたから覚えてる……。大丈夫だ。俺は敵では無い……
ふん。俺の素性知っている所が怪しいな……
だったらお前の事聞かせろ。名前、そしてもしあれば所属もだ!
ああ、分かった……俺は
″フォザード″。現在は他大陸「グランバード」で機動警察隊セクションゼットを務めている。
フォザードの名前を聞いて
突如として岩陰から出て来たローウェン。
そう、この2人にはとある″繋がり″が……
何だ、ローウェン……お前居たのか……。
フィンディルを追い出された時はどうなるかと思ったが、
その様子だと無事のようだな。良かった……
ローウェンは過去に俺等
キシャーロック一家の執事を務めていたからな。
あ、そうだ。お前、ブレンダから″アレ″ 預かってないか?
ああ、持ってるぜ……。
皇帝はこれを欲しがってるんだろ?
よし……、オッケーだ。
これをお前が持っている以上あの部屋には入れない……。
その前にヒルハイドタワーでマイティーダークの計画を阻止する。
エンディア、お前の力も借りたい。良いか?
良いぜ。俺は全員を助ける!!!
警察隊だろ? もちろんお前の願いは……
″クロスウッドを守り、悪い奴等を全員改心させる事だ″エンディア、ハディーサ、そしてローウェン。俺に捕まれ……!!
ヒルハイドタワーに突っ込むぞ!!!!
【エンディア/ハディーサ/ローウェン】
おう、いつでも来い!!!
****
そして時は同じ頃、リオルドが古城フィンディルや建物の崩壊ざまを覆い隠すかのように
施した山岳地帯のホログラムがシステムダウンした事により
姿を現した小町「エジェテール」。
皇帝は想像通りと予想していたけれど
たった1つだけ、隠し通さないと行けない場所が露わになっていた為少しだけ焦り気味……。
ここは古城フィンディルの地下――。
裏庭の井戸からしか入る事が出来ない。
機動警察隊セクションゼットの署長トランドが見ているモノ……、それは……
こ、これがキシャーロック一家の
主人ブレンダ、そして家内の……
リテール。ぐっ……、突然何が引っ張られたかと思ったら
こんな場所に来てしまった。煙って言うのは怖いんだな……
あ、貴方は確か指名手配犯の……
名前は確か、ゼルシード。ここはどういう場所なんですか?
心して聞いて欲しい。
ここは皇帝が捕らえたブレンダとリテールの監禁部屋。
見てみろ、あの2人に繋がれている機械。要するに……
あの装置さえ壊す事が出来れば、ブレンダとレテールは眠りから解放される筈…、だ……
よくこの場所が分かりましたね。
それではお二人には……
な、何だと……
皇帝の正体ってお前だったのか……!
確か、名前は……。
突如として煙の中に誘い込まれた先に見つけたキシャーロック一家が捕えられた監禁部屋に辿り着いたゼルシード、そして……機動警察隊セクションゼットの署長トランド。
彼等の悪事を暴こうと奮闘するけれど皇帝の目の前では……
成す術無し。(次回へ続く)
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