106話:レイディアの決意!危機迫るエディールとヒルハイドタワー!!
文字数 5,312文字
ふーん。エディールさん
元の姿に戻ったんですね。過去の
記憶、そして自分が抱える闇と無事に……
いや、馬鹿言ってはいけねえな。
だって、この俺が……
小部屋でボソボソと小口を叩くかのように
罵るヒョード。
その様子を廊下を移動している最中に
壁に耳を当てて盗み聞きしていたのは……
唯一の切り札、エディールの
闇。
それを失ったら何を仕出かすか分からない。
今までスキルを使って来なかったけど
さすがに今回は不可避なのか。いや、まずは
この事態をエディール達にどう伝えるかだ。
ふん。仕方ねえな。
弟のピンチで立ち上がらない奴が何処にいる?
何が御免なのですか?
一字一句聞かせてくれませんか?
まさか、レイディアさん貴方……
よう皇帝。相変わらず
不愛想な仮面被ってるな。いつまで
それを身に着けているつもりだ?
自分に自信が無いのか?
そりゃそうだ。お前の登場シーンは
全てネガティブ発言だったからな。
性格って言うのは、口調も似るって言うぞ。
お、おっと。お前の正体知ってるんだぜ。
何なら今此処で大きな声で言っても可能だ。
仕方ない。名前を零される前に
貴方には死んで貰いましょう。
恨むなら今の発言を発した……
皇帝を誹謗中傷して誘導させたのはカモフラージュ。
ほんの一瞬のスキをついて、レイディアが所持する
禁忌スキル "忘却" を発動。
彼が持つ白蛇に噛まれると一瞬にして自分の記憶や過去を
抹消する事が可能。噛まれ方により時間は左右される。
禁忌と謳われる理由は記憶喪失に意図も簡単に出来るから。
咄嗟の判断で発動したけれど、白蛇は
皇帝の首筋を噛んでもビクともしない。
白蛇に置けるマッサージですか?
気持ち良かったです。最近首回りの痛みが酷くてね。
貴方達のスキルは全部把握してるんですよ。
対処を施してないとでも思ったんですか?
レイディアに届くように、
廊下の奥から殺傷能力のある鉄球を投げ付け
彼の足元に転がって行く。ただ、それはただの鉄球ではなく
その者の能力により、爆弾となった危険物。
逃げられないように即座に爆破されてしまったせいか
彼の身体のあちらこちらに痣が付いてしまう。
と言う事は、ドルシードお前か。
どうせ、顔に泥を塗った
私を始末しに来たんだろ。
ご名答。レイディア、お前さっきからどうした?
皇帝に対して敵意の目をしてるぞ。
恨みでもあるのか。聞いてやるぜ。
お前と皇帝の匂いが一緒なんだよ。
私は嗅覚が優れてるんだ。そんなの一目瞭然。
闇を求めてる奴の陰気臭さ。
ふん。くせぇな……
あ”ぁ!?
そんな事言ったらお前もじゃないか!!
侮辱すんじゃねぇよ。
調べは付いてるんだ。
悪事を犯した数によって匂いが変わる。
嗅いでみな。お前等とは違って私は微かな筈。
…………。
確かに、レイディアさんの闇の匂いは薄い。
と言うより、ほぼ無いに等しい。
しかし、何故だ?
お前もエディールと同じように父親に
酷い仕打ちをされた筈だろ。だったら同じ感情に……
何言ってるんだ、ドルシード。
確かに父親を恨んでいたのは確かだ。
だがな、1秒たりとも
殺したい衝動に駆られた事は無い。
何でか分かるか?
私含め3人を産んで、
育ててくれた大切な存在だからだ。
特にエディールを産んだ時、何よりも
笑顔をしてくれたのは父親エシャール。
天使から子を授かったと喜んでいたからな。
そんなエディールに
唆すかのように
悪事を勧めて闇へと引きずり込んだ。
悪魔のようなお前等を絶対に許さないと決めた。
だったら、いくらでも
引き止めるチャンスはあったんじゃないのか?
何処にも隙がない状況を作り出したのは
お前等だろ。合計3つの組織を作り
自分の手を決して汚さない状況を
作る。それがお前等のやり方だ。
カインドフォースは予定外だったけどな。
エンディア、奴は厄介だ。ん?
ああ、そうだ。
カインドフォースを結成させたのはこの私。
エディールに過去の記憶を思い出して
欲しいと頼み込んだ。エンディアは
アイツにとってダチだからな。
そうか。じゃあ、最後に聞かせてくれ。
レイディア、お前何処まで俺等の
計画を知ってるんだ?
レイディアさん、残念です。
貴方とは分かち合う仲だと思ってたんですけど……
一体何処で歯車が狂ってしまったのでしょうか?
私はエディールを守る為に
自分を犠牲にしてこの組織に入ったんだ。
その時点で歯車は狂ってる。
そしてお前等の頭もな!!!
じゃあな。皇帝、ドルシード。
これを機にアンドルディシアを辞めて
新たな人生を踏み出してやるぜ!!
アンドルディシアのメンバー、尚且つ
皇帝の側近に近いレイディア。
積年の恨みをようやく晴らすべく、切羽詰まる状況にて
皇帝の悪事を全て話す為、全員が集まっている
ヒルハイドタワーへ向かい始める。
****
しかし、エディール。
いくら闇が無くなったと言えど
その恰好はあまりにも……
良いんですよ。
私の中にある闇は消え去ったんです。
その証拠としてあの黒い服を脱いで
皆に見せている訳ですから。
大丈夫だ、ハディーサ。
肌寒くなったら俺の鍛え上げられた
身体でエディールの羽毛布団になってやる!
えっ!?
どんな感じだろう?
毛むくじゃらのエンディア様……
これが別名ギャランドゥって言う奴。
僕、基本身体に毛が生えている人は
受け付けないんだよなあ……
ごめん。ちょっとお手洗い
行ってくるね。
ブリジスは何を思ったのか
勝手に、動物の毛皮ではなく
毛深い人が身体に生えるギャランドゥが草のように
なびいている姿を想像してしまい自己嫌悪に陥り
お手洗いへと足を運ぶ。
さてと、急で済まない。
事は一刻を争う。今一度聞かせてくれ。
エディール、お前はもう闇を持ち合わせてないんだな?
そうだ。ずっとお前の側で
リリカルラビットの研究をしていた。
憶えてないか?
すみません。
私がこの場所でどんな事をしてたのか
何も憶えてないんです。でも……
無理に思い出さなくて良い。
お前が辛い人生を過ごして来た事は
此処にいる皆が一番分かっている。
そうですよ!
エディールさんは一人じゃないんです。
ずっと君の帰りを待ってたんですよ!!
そうだな、オルーム。
記憶が無くなった事より、お前が
無事で帰って来た。それだけで俺は十分だ。
ただ、皇帝の計画が分からずじまい……
フィンディルで奴等は
何を企んでるんだ?
皇帝、ドルシードの猛攻を
掻い潜って
皆の前に姿を現したのはレイディア。
ヒルハイドタワーに到着すると同時に、
身に着けているマントを翻し
大切な弟エディール、そしてずっと
リリカルラビットの研究をしていた
リオルドと再会する。
クロスウッドの全ての生命体を守る
リリカルラビットの独占だ。その警告として
奴等は禁忌スキルを選ばれたメンバーに託し
破壊活動を行い、存在意義を示した。
おおよそそんな感じだ。
レイディアじゃないか!
お前、その事実を喋ったという事は……
はぁ……、はぁ……。
あの2人を撒くのは骨だったけど
何とか振り切れたぜ。
安心しろ。もう元アンドルディシアメンバーだ。
エディール、元気だったか?
兄さん……、
エディールはずっと深い闇と戦ってた
その犠牲の付き物で記憶を失ってしまったんだ。
多分、私の名前も……
えっ!?
私の名前覚えていたんですか?
でも、どうして……兄さんの名前が……
ま、まさか……
記憶が無いのは悪事を働いていた事実と人達。
ちょっと確かめてみる必要あるな。
お前等、来てくれないか?
何かを察し、
お手洗いから戻ってきたブリジスと
エンディアと談話を交わしていたブルを呼び出す。
済まない。エディール……
この2人の名前、知ってるか?
あ、犬の被り物しているけど本物じゃないからな。
すみません。
分からないです……
さっきから笑顔で振舞ってくれるんですけど
本当に思い出せなくて。
お前等、済まなかったな。
でも、これで分かった事がある。
いくら善に戻ったとしても
1回でも悪事を働いていたブルとブリジスの
名前を憶えていなかった。これは周知の事実。
でも、確か闇の数値が深淵に近付く程
記憶のレベルが左右される筈……
確かエディールの闇の数値は
8。
そんでもって10が最大値。ずっと
間近で見ていたから確かだ。身内やダチの
関係性は覚えてる。と言う事は……
その時、床の隅っこで
丁寧に畳まれている黒い衣装の内ポケットで
眩しい程強い光を放つ "とある物" に気付く。
決してブルや、ブリジスは
エディールが2人の名前を忘れていたとしても
少しずつでいい。と決して後ろを見ずに
名前を思い出して欲しいと切なる願いを
胸に抱き、彼の洋服に近付き
中に手を入れると……
そこには "懐かしきあのアイテム" が。
ブル君、それはダメだよ!
多分彼のお守りじゃないかな。
あっ。
これ、俺が枯らした木漏れ日の森で
見つけた……確か勾玉だったかな。
リリカルラビットの失われた記憶の断片……
確かにその形、
鑢で丁寧に
削られているからにして、あの時
旋律の館で見つけた勾玉。
リリカルラビットの記憶が
エディールに反応して、闇を抑えてた。
そんな解釈で良いのか?
それとも、他に……
"嘘であってほしい"
"そんな馬鹿な!"
決してあってはいけない事だけど、今
レイディアは現実を目にしている。そう、それは
遂に皇帝の膝元で父親を務めているドルシードが
ヒルハイドタワーへと襲来した事。
お前、誰だよ!
レイディアに指1本でも触れたら
エンディア様からの制裁が下されるぞ。
エディールに記憶の断片を持たせて
正解だったな。それとレイディア、ずっと
お前に黙っていた事があるんだ。
聞いてくれるか?
何だよ。もし私の仲間達に
手を出して見ろ。全力で捻り潰すだけだ。
聞くだけ聞け。良いか。
皇帝はリリカルラビットの独占が目的じゃない。
とんだ勘違いをしたもんだな。
此処に居る奴等全員に教えてやる。
皇帝の本当の狙いは……
クロスウッドの滅亡だ。その為にエディールが必要だったのに、
お前等が邪魔するから何も意味も成さなかった。
馬鹿言ってるんじゃねぇよ!!
アイツを何だと思ってるんだ。
お前等の道具じゃねぇんだぞ!!!
成功させたい目的?
父親といがみ合いながらも毎日
楽しく過ごして来たエディールに求めるなよ!
どんだけ今まで苦しい記憶と戦って来た事か。
それに、クロスウッドの滅亡だと。
そんな事俺等が黙ってるとでも?
そうだ。この土地を滅ぼすんだよ。
もし止めて欲しいなら、エディールを渡す事だ。
えっ!?
貴方が誰か分からないんですけど
行った方が良いなら……
おい、邪魔すんなよ!!!
行くって言ってるんだから良いだろ。
エディール、駄目だ。
奴等の言い成りになんてなるな。
利用だけ利用して、後は用済みで殺される。
気持ちは素直なのに、
足が前に進まないんですよ……
行っちゃダメだと分かってるのにな。
ああ、もちろんだ。
此処に居る全員で答えをはっきりと言ってやる。
せーのっ……
交渉決裂だ。仕方ねえな……
お前等に天罰を下してやる。
皇帝、出番です!!!
ヒルハイドタワー、最上階――。
此処に居る全員が目に見える範囲内。
そう、無能集団を仮面の下から冷めた表情で見つめる皇帝。
一気にさっきまでの空気が重苦しくなり
再びヒルハイドタワー周辺の空が
暗く染まって行く……。
あ、アイツが……
全ての元凶。このクロスウッドを
地に落とし滅亡させようとする存在。
エディールを闇に墜とし、
俺等3つの組織を形成しては雲隠れするかのように
自分の手は決して汚さない……
ようやく此処に来る事が出来ました。
皆さん……、お見知り置きを。
次回、皇帝の計画を阻止する為に立ち向かう男性陣。
そして、第2の被害者が……。
抗え、立ち向かえ運命に――。
決意のシャウトシグマ編(第2章)、完結まで残り2話。
107話へ続く。
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