66話:海に浮かぶクロスピア!ルディース奪還大作戦!!(捜索編)
文字数 3,658文字
【前回のあらすじ】
無事に古城を抜け出し、一本道の先にある行き止まりで詰まっていたインバとシルヴィン。
高い樹木に昇り、彼がこの小町『エジェテール」を囲む山岳地帯に隠されたとある真実に辿り着く…。
その頃、ヒルハイドタワーでは――。
ルドスはバトルトーナメントオーディションの件でまだ弟ゼシアに謝罪していない事を白状し
怒らせてしまったゼロシードと兄ジルバとのバトルが行われていた。
圧倒的なスキル技によりジルバが勝利。
そして彼等はゼロシードを改心させるべく、見事に彼を暗殺者の道から抜け出す事に成功する。
一方、北西の海に不時着した今にも沈没しそうなクロスピアの元に
チーム「カインドフォース」が到着し、ルディースを助けるべく気持ちを1つに…!
****
ここはビアンラボ――。
姉ミフィールをクロスピアに連れて行く為、父親であるエバスが受付で当館を
警備している男性スタッフが雇った体型がガッチリとした警備員と対峙しているけれど、
スキル「浮遊」の技に翻弄されて成す術なし。
これでおしまいか?
ガッチリとした割には動きが厳かですね…。
うるさい! 鍛えた分力になるんだ…!
筋肉は裏切らないんだぞ!!!
そこを退くんだ…。
私の浮遊スキルからしたら貴方達の攻撃は無効です。
いくら逞しい身体になっても無駄…。
立ち向かった罰として身を持って知って貰いましょう…
ズコッ バコッと壁が崩れる3発の耳に余る大きな音を立てて
3人の重量級な警備員はビアンラボの受付付近の壁を上半身だけ貫通して、戦闘不能と陥ってしまう…。
おやおや、こんな醜態を晒すなんて…
所詮私の敵ではなかったな。ミフィールを連れて早くクロスピアに
向かわなければいけません。ルディースさんが逃げ出す前に対処しなければ…
(エバスさん…。スカラダーク元指揮官の貴方でも
分かっていますよね? もしルディースを助けられなかった場合
貴方にはクロスピアと共に沈んで貰います。
事の重大さに気付くようにお願いしますね…)
****
北西の海――。
岩礁に引きずられて進水した為、クロスピアの1階が少しずつ海底に沈没するように傾いている。
地下1階にあるエンジン室はその際に爆発してしまい、牢屋と共に完全に立ち入る事が不可能。
早くしないと2階にある電気制御室も使えなくなる恐れもある為、水圧で壊された
1階にあるレサリアが使っていた執務室にある窓から入り、まだ浸水していない
王座の間へと急ぐように泳ぎ、何とか到着する…。
王座の間――。
浸水が速いな…。
このままだと全体のバランスを失い
いつ沈没しても可笑しくないぞ…。
ふぅ…、息継ぎが大変だった。
レサリアさん、ルディースが匿われている場所は何処だ!?
ルディースさんが匿われているのは
"指紋認証システム付"の部屋よ。
ここにいるのは私達だけだから、ここにいない指紋を持つ者が必要になるわ。
参ったわね…、事態は深刻よ…。
呑気に話していると、海中に潜む
「ディープシャーク」の群れがエンジン室の壊れた
壁付近を「ここは俺達の住処だ。部外者は出てけ!」と言わんばかりに
尾びれを物凄い勢いで叩き付けて、遂に王座の間も不協和音のよう浸水していく…。
少しずつ焦りを見せ始めるグレイス…
み、皆さん…大変です…。
ここも浸水始まっています!
早くルディースさんを見つけた方が良いですよ…!!
そうですね…。話は後できちんとしますので
今はとりあえず3階へ急ぎましょう…!!
****
ここは2階にあるコントロールルーム、所謂操縦室――。
傾き度から事態を察しているルディースは1階の王座の間から聞こえたエンディア達の声に気付く。
あれ…?
確かに今誰かの声が聞こえた気がします。
この事態に気付いた通りすがりの者が助けに来てくれたのかな…!?
余計な震動でも加えたりでもしたら、沈没するスピードが速くなるだけです…。
残念ですけど、あまり身動きが取れないのが悔しい…。
普段からあまりしない張り詰めた声で、自分のピンチを知らせようと館内に
響くように一呼吸を終え、今の思いを叫ぶように発する…。
****
嘲笑うように重量級の警備員を軽々と撃退し、ビアンラボの会議室に辿り着くエバスは
当館に知っている男性スタッフが居ない事を良いように徐々に攻め寄って行く。
さあ、ミフィール…私と一緒に来るんだ。
ミントはここで彩り溢れる女性達と一緒に待機していなさい。良いですね?
えっ、何でよー。
私も行くっ! お姉ちゃんばかりずるいよー!
私達は家族よ。妹を連れて行かないなら私も行きませんっ!
どうせまた危険な場所に連れて行くんでしょ?
どこまで私をコキ使うつもりなの? 信じられない…!
何だと…。ミフィール、父親に向かって口答えするのか?
良いだろう。口で無理なら態度で示すしかありませんね…。
言葉だけで浮かせるのもエバスの持つ『浮遊』スキルの効果の1つ。ガラガラッ と音を立てながら窓を開け、目の前にある絶望を味わって貰う事で
姉であるミフィールに向けて父親の言い分を果たそうとしている。
さあ、目を開けろ…ティム。
落ちると痛いだろうなあ。これは私に逆らったミフィールへの罰だ。
こ、怖いよ…。誰か助けてよー!!
な、何でこんな事するのー?
ちょっと…、ティムに何やってるの?
早く離して下さい…。いくら貴方でも絶対に許しませんよ!!
何度でも言えばいい…。この両手を降ろせば、そのまま落下する仕組みになっている…
さあ、ミフィール。私と一緒に付いてくるんだ。
お前次第で、ティムの運命は変わる…。どうだ?
わ、分かったわ…。
ただ、ちゃんと用事を終えたら私はビアンラボに戻る。約束できるかしら?
両手を降ろさずにエバスのスキルによって
窓の外まで浮かせたティムを助け出す、ティアラ…そしてティーネ。
また目の前から居なくなるミフィールに対して、寄り添うミントの目から少量の涙が溢れていた。
グスン。お姉ちゃん、ちゃんと帰って来てよねっ!?
本当に心配なんだよー。正直言って会えないのは辛いんだ…
もちろん帰ってくるわ。
そんな悲しい顔しないって前決めたでしょ!?
妹の為なら私頑張れるんだからっ!必ず帰って来る事、約束するわ。だから、涙を拭いてミントの笑顔見せてくれない?
父親の言う事は絶対服従…。
その一字一句を噛み締めるミフィールは「それが家族の在り方なの? 間違っている!」と
自分に言い聞かせながらエバスと共に北西の海にあるクロスピアに向かい始める。
ただ、ルディースはもう既に部屋を脱出している事、知る由もない…。
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クロスピア、2階――。
慎重に3階にある研究室の横にある部屋へと向かっている最中…
グレイスは何かを感じ取ったかのようにこの通路の奥にある部屋をジッと見つめ始める。
レサリアさん、この通路の奥には何の部屋があるんですか?
えっと…、コントロール兼操縦室ですね。
緊急時におけるシステムが搭載されてあったり、
クロスピアの割とあらゆるデータが集約されています…!
それがどうしたんですか?
グレイス、もったいぶらずに教えてくれよ!!
何を考えているんだ?
3階に行く手間を省くかも知れません!
もしかしたらそのコントロールルームにルディースがいると思います…。
ただ、確信はないんだ。
ルディースさんの性格からしたら多分ジッとその部屋で
待つと言う事はないと思う。非常事態と受け止めた時、まず最初に行く場所は…
刻一刻と地下1階から徐々に浸水しているクロスピアは
更に轟音を成して、ちょうど執務室の真上にある電気制御室の域に達してしまい
当館の電気システムが全て水没してしまいダウンしてしまう…。
パッ パッ パッと1つずつ廊下に飾られている電灯が消えて行く中
何かを察したグレイスは衝動を与えないようにゆっくりとコントロールルームに向かい
真正面にある扉を開けてみると…
やっぱり…、見つけました!
えっと貴方がルディースさん…ですよね?
安心して下さい…、助けに来ましたよ!!
【ルディース】
あっ…、ありがとうございます!
誰も助けに来てくれないかなと思ってたんですけど…、助かりました。
改めて自己紹介させてください。私はルディースと申します…
どうぞ宜しくお願いします。
やっぱりエディールに似ているぜ。
ルディース、俺等に力を貸してくれないか!?
彼等の悪事を暴きたいんだ。唯一お前だけが悪の道に走ってない事を知ってね…
えっ、エディールとレイディアの事を知ってるんですね…。
だったら尚更2人の事を知る必要あります。
その為にはまずここを抜け出す事を専念しましょう。計算上…
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