88話:過去との払拭!男エンディアの熱き誓いvsローウェン最終幕!!(後編)
文字数 4,450文字
前回のあらすじ
気絶したチーム「カインドフォース」のリーダー、エンディアは
自分の過去と直面し、″本当の強さ″ とは何か? と父親のアルヴァから
教えて貰った事を自分の胸に言い聞かせ、エバス、ハディーサの声援の中無事に復活を果たす。
ただ、血も涙もないローウェンにとって不都合な事が突如起きてしまう。
そう……、ブラストの登場により思わず古城の
名前を暴露してしまう。相当焦っている様子。
そんな中、執事として潜り込んだローウェンの身内が
長男シルディート、そして三男がオルームである事が発覚してしまう……。
でもまさか、貴方が古城の名前を知っていた理由……
確かに兄弟でしたら説明が付きますね。
もちろん。本当はお前も分かっているんだろ?
シルディートは皇帝直属の暗躍組織、
アンドルディシアのメンバー。そして……
あの時は知らなかったけどな、オルームって言うのは
故郷エジェテールを崩壊に導き、俺の両親まで虐殺された……!!
…………。
そうか。だから俺も悪になる事を誓ったんだ……
家族3人でこのクロスウッドを闇に染め上げる。自ら皇帝とゼルシードに近付き
兄弟バラバラで活動していれば、また何処かで必ず会えると信じて……。
その何処が悪いんだよ!!
ローウェンはずっと心に溜めていた事を全員に響く怒号のように思いを吐き出す。
それは家族が全員別々の形でクロスウッドを闇に陥れるという卑劣極まりない所業。
兄弟が ″悪の道″ に進んでしまっているのに
自分だけ何も出来ずにいたのをずっと悔やみながらも
ひたすら悩み続けていた……。
ただ、彼は方法を間違ってしまった。
自分もまた ″悪″ になる事で、家族の立場や状況を重々承知する為に……
ローウェンさん、何でそこまで兄弟の為に頑張れるんですか?
本当は悪になる事、躊躇っているの私には分かりますよ……
さっきも言ったと思うけど、もうシルディートとオルームは安全だ。
あの2人は良心を取り戻したんだ。要するに自分自身に勝ったと言う事……
それでも分からないなら、力ずくでも……
じゃあ、この状況どう説明すればいいんだよ……
俺はヴィーバを拉致監禁し、エバス宅に眠るロックダスターを二の次に狙い
その結果、エンディアまで気絶させて取り返しの着かない事をやったんだぞ……!!
泣き寝入りなど聞きたくない!俺はお前の本音が聞きたいだけだ。
ぐっ…、俺は……
本当ならしたくない。何処の誰かまでは知らないけど
シルディートの良心を取り戻してくれた事も感謝する。
お願いだよ……、エンディア。助けてくれよ……!!!
いや、オルームは無理に習得させられたスキルのせいで
エジェテールを殲滅させた記憶を失っているだけだ。
だからアイツは悪くないんだ。お願いだ、それだけは分かってくれ!!
と言う事は、オルームはしたくも無いのに
勝手過ぎる皇帝の思うがままに動かされていたのか!?
何ふざけた事やってるんだよ……!!!
心の中でいつまでも繋がっているから、家族なんだぞ……!!!ローウェンだってそうだろ? 何故自分も悪になろうと思ったんだ?
いくらでも方法はあった筈だぞ。お前は逃げていただけだ……
″人の不幸を回復させる笑顔の力″ を……。だよな、父さん!?
(ああ。お前の笑顔が大好きだったからな。
エンディア、立派に成長して父さんは嬉しいぞ……!)
エンディアの父親アルヴァ……。
彼の存在は偉大であり、尊敬する1人と掲げている。
ビージャックに襲われたあの日から虫捕りはもちろん、離れにある専用部屋で
一緒に切磋琢磨しながら、武術やトレーニング等と言った厳しい稽古を付けられていた。
そのお陰で、エンディアは著しい成長を遂げてエジェテールが殲滅されるその日まで
逞しい身体へと変貌していった。
そして共に父親と笑い合った日々を忘れる事なく、常に笑顔を絶やしているのも教えの1つである……。
ただ…少し、ローウェンにも ″とある変化″ が訪れていた……
うっ……、く、苦しい。
何なんだ、お前等。闇が薄れていくじゃないか。
何でそこまで俺を……!!
…………。
こんな俺でも友達になってくれるのか?
特にエンディア、お前を気絶させたんだぞ!!
どうせ不必要だと思ったら、いつか切り捨てるに決まってる!!!
痛みや辛さを知ってこその友達だ!俺はお前を助ける事を決めた。それの何が悪いんだよ!!
闇、それは決して陽の目を見る事がない世界……。
暗くてどんよりとした空気の中、必死にしがみ付きながら
皇帝やエディールの元で気を配りつつ、任務を執行する役目を担っていた。
例え悪事を働いていたとしてもエンディアからしたらもう立派な友達。
どんな人とも仲良くなりたい……、いや、今の彼は
″必死に闇を抜け出そうとしているローウェンを助けてあげる事″。
これがチーム「カインドフォース」のリーダーの役目。
本当だったら現在ヒルハイドタワーで暗躍している
マイティーダークのリーダー、エディールもメンバーになる予定だった。
しかし、皇帝による悪魔の囁きのせいで叶う事は無かった……。
ローウェンさん、確かに貴方は悪事を果たしましたけど、決して怒りはしません。
私もかつては同じ立場を味わいました……。そんな時に
エンディアさん、ハディーサさんにお会いしました。
お2人に会わなかったら今の私はいません……。
笑顔の力は偉大です。こういう時は笑って闇を浄化してみませんか?
貴方ならきっと出来ると信じていますよ……!!
お願いだ、ローウェン……!
お前の本当の笑顔を見せてくれよ!!
笑い方まで忘れてしまったのか!?
こうやって、目を瞑って心の中で大好きな家族を思い出してみたらどうだ?
ハディーサの提案で少しずつ良心を取り戻していくローウェン。
しかしながら、まだ不完全状態……
悪になってしまうと心の中で自分の感情表現を封印してしまう。
もちろん皇帝やエディールもその1人。ブラストの証言により
兄弟であるシルディート、オルームはもう改心したと伝えた為、少し安堵を示しているけれど
いつの間にか笑い方を忘れてしまっていた……。
それでも、家族を思う気持ちは人一倍強い。
どんなに困難な道でも、自分の中にある悪を取り除く事を
決意したローウェンは笑い方を思い出している。
(ローウェン、お前が立派に成長して嬉しい。そうだろ、オルーム?)
(うん! だって僕のかけがえのない兄弟だからね!
ローウェンもシルディートお兄ちゃんも大好きなんだ!!)
頑張ってくれ……、もう少しだ!!
エンディア様、お願いだ。ローウェンを助けてあげてくれないか?
だったら、俺にお前の想いをぶつけてみろ。全部受け止めてやるぜ!!!
ぐっ……。大好きじゃない、俺は兄弟を愛してるんだ!!!
かけがえのない家族、いつまでも色褪せない絆に繋がってこその……
兄弟なんだよな。善の心か……エンディアさん、ハディーサさん、そしてエバスさん。
もうお前なんて言いません。貴方達の熱意が伝わりました!!
色々とご迷惑かけて済みませんでした……。
いいえ。まずはローウェンさんの笑顔が見られた事に感謝です。
それにきちんと謝罪もしてくれました。それが ″悪の道″ から抜ける第一歩です。
もう、心配しなくて大丈夫そうですね……。
いや、しかしエバスさんの家を半壊した事には変わりは……
良いんですよ。全然気にしなくて下さい。
私の知り合いに棟梁がいるので、その者に施工して貰うので大丈夫です。
ローウェンの笑顔、そう……彼は自分の心に潜む悪に打ち勝った。
もしかしたら1人の男性、そして1人の兄弟として ″本当に悪でいるべきなのか″ と
必死に戦っていたのかもしれない……。
ただ、事態は深刻。例え彼の良心が戻っても
古城フィンディルでずっと企み続ける皇帝達、そしてヒルハイドタワーで着々と計画を
実行しているエディール率いるマイティーダークを止める為にも
ブラストは会話の途中でもエバスに ″とある事″ を聞こうと決意する。
お取り込みの所、済まないんだけど……。
エバスさんにちょっと聞きたい事がある。古城 ″フィンディル″ に関してだ……!!
調べていくうちに色々分かった。
エジェテールの郊外にある ″あの城″ はキシャーロック一族の所有物件。
そして現在、その1人息子であるタナトスが
皇帝の手により監禁状態。もちろんエバスさんは
この一件を全て知っていますよね……。
もちろんです。キシャーロック一族の大黒柱、ブレンダ殿とは旧友ですので……
ただ、最近全く連絡がないので心配です。それと……
何だ? お願いだ! 事態はさらに深刻を増している。
出来る限り情報は多い方が良い……。
対策はいくらでも施せる。
うっ……!
何ですか、この闇が膨張していく感じ。ま、まさか……
この状況下に置いて、一番情報量が多いのは
かつて悪の道にいた元スカラダークの首領、エバス。
現在は良心を取り戻し、一等地ヴィバールにあるお屋敷で
家内ニリアを筆頭に大家族を纏めている。
そう……、彼は幸せな家庭を築いていた。
突然彼が居なくなり、組織に入って任務を全うしていたとしても
絶対に家族の事を忘れないでいたのかもしれない……。
けれども、フィンディルの話を切り出した瞬間、エバスの鼓動が早くなり
以前も経験した事のある瞳の変化も見受けられる。そう、この合図は……
城の話をされると困るんですよ……。
計画に支障を来すのは是が非でも避けたい。
私が皇帝に怒られます。だよな……
裏切り者のエバス……!!!そして見事にやられましたよ。チーム「カインドフォース」の皆さん。
更には良心を取り戻したローウェン。計4名の御方には
闇を味わって貰うしかなさそうだ……
止めろ、エディール!!
俺をきちんと見るんだ。何でそこまでする!?
お願いだ。本当はやりたくないんだろ?
エバスさん、ローウェンだって自分自身に勝って良心を取り戻したんだ。
エディール、本当に闇が全てだと思ってるの?
エンディア、ハディーサ……貴方達とは絶交。
これが私の答えです。もちろん受け止めてくれるよな?
エディールの闇の猛攻は止まる事を知らない……。
闇と言うモノは形を成さない。それは彼が1番知っている。
強いて言うならチーム「カインドフォース」より友達意識が強い。
そして彼がここに来た理由は、ヒルハイドタワーでの現状を語る為。
あくまで自分はボス。圧倒的な強さを誇り、マイティーダークのメンバーから信頼を得ている。
そう、エンディア達がローウェンに立ちはだかっていた中、皆の知らない所で
とんでもない急展開を見せていた……。
次回へ続く。
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