39話:ビアンラボ侵入開始!ジハイドvsライオット!!(前編)
文字数 4,089文字
ファーニブルに続いて、大陸「クロスウッド」から1つの街が消えた…。
名はシャランアゾール。ドロアが勤めていたBAR「ラブリーデイ」、ライトが初めて伺ったギルド
そして…幹部のブルが沢山の犬に囲まれて過ごした家があったが、
そんな思いも踏み滲むように圧倒的な強さで
この街を破滅へと導いてしまった…。
地面に大きな穴が開き、周辺に散乱している建物の瓦礫の近くに降り立つエディールとオルーム。
ざまあねえな。エディール様と僕が組めば
こんな街でさえ木端微塵に出来るんだ。どうですか、スキル「断割」のパワーは!?
さすがです…。けれどもオルームさん、貴方はまだ
上を目指せられますね。興味ありますか!? 練習次第で貴方も私に辿り着きます…
興味あるぞ!
エディール様の事を尊敬しているからな。
兄のレイディアから話は聞いている。貴方の闇は誰よりも深い事を…。
教えてくれないか、その深い闇…!!
深い闇か、良い表現をしてくれたな…、兄上。
やはりオルームさんは、素晴らしい人材ですね。皇帝もお墨付きの筈だ…
良いだろう。その敬意に表して貴方も深い闇に案内してやろう…!!
オルームは幼い頃から両親に虐待を受けていた為、常に闇を抱えて生きている。
エディールはグレイザーに続き、彼にも闇に引き入れる為
憎しみ、悲しみも全て闇へと変えるようにと指示し始める。
まずは普通に出せるこのオーラ。
先程オルームさんもやりましたね。準備してくれ…!!
ああ…。これで良いんですよね!?
この位だったら、誰にでも出来る…。この後どうすればいいんだ!?
全ての感情を捨てる…、ただそれだけだ。
貴方の心にある憎しみ、悲しみ…それを全て闇に置き換える。そうすれば…
自ずともこのようになる…!!
これが深い闇に辿り着いた証です…。
気持ち良いですよ。オルームさんの深い闇、興味ありますね…。
早くこっちに来てくれませんか?
エディールの悪魔の囁きがオルームの闇を更に染め上げ、彼の表情は一変する…。
闇が膨れ上がって来る…!エディール様、これが僕の深い闇です。どうですか…!?
良いじゃないですか…。
では質問をしよう。貴方にとってライトとリオルドはどういう存在だ…!?
僕を馬鹿にした…、敵。次会ったら殺す…! 殺さないと気が済まないんだ…
このエディール様から頂いたこの力で、必ずや仕留めてやる!!!
その通りです、オルームさん…。
ただこの爆発的なパワーを使うと体力が消耗する。ひとまずヒルハイドタワーへ戻りましょう…。
ビアンラボに関してはルディアさんに任せましょう…!!
****
ここはビアンラボに向かう上空。
皆を乗せたブリジスの星はなんとか滞空維持出来ているけど、
オルームとの戦いで喰らったダメージのせいか上手くコントロール出来ていないようで、
墜落するのも時間の問題…。
うっ…。オルームのせいで
昔負った傷が開いてしまった…。
い、痛いけど…皆を無事にビアンラボまで届ける指名が僕には…。
ぶ、ブリジスさん…。あまり無茶しないで下さい!
けれども、ここには皆を救う手立てがない…。
俺の砂塵、ライトさんの獣拳、ジルバさんの切断…、
スキルを組み合わせても不可能に近い。
一体、どうすればいいんだ!? 早くしないとビアンラボに魔の手が…。
シャランアゾールで繰り出したオルームの攻撃が、
昔ブリジスが負った箇所に触ってしまい、着ている洋服に血が滲み出して行く。
星は少しずつ高度を下げ始め、今にも墜落寸前状態…。
****
ビアンラボ、扉前。
ライオットの剛腕が数名のスタッフを倒して行く…
ふん。口ほどにもない…。
ルディアさんもビアンラボに入るんですか?
いや、入るのは貴方だけです…。
2人で侵入したらリリカルラビットを抑えられない所か
見つかる可能性が高くなるだけだ…。ほら、これをくれてやる!! 受け取れ…。
インプット完了…
貴方がライオットさんですね。初めまして…
刻印が入っているという事は、皇帝に認められし者。
アンドルディシアに栄光あれ…!
本が喋っただと…。ふん、なかなか面白い奴だな…!!
この本は
「ダークスコード」と言って、選ばれた人間だけが手にする事が出来ます。
我々アンドルディシアはもちろん、幹部「マイティーダーク」、
そして協力者である方達が持っています。けれども用心して下さい。
所持者が亡くなった場合…使用していた証拠隠滅の為、その場で燃えて無くなります。
死ななければいいんだよな…。だったら俺には楽勝過ぎる。
ルディアさん、必ずリリカルラビットを連れて帰って来てやる!!
その意気だ。何があったら俺を呼んでくれ…。
このダークスコードがあれば、何処にいても貴方と話が可能だ。じゃあ、宜しくな!!
扉前で倒れているスタッフを横目に、侵入開始するライオット。
中へ入る様子を見たルディアは、扉が完全に閉め切っていた所を見計らい、草むらの影でずっと
2人の事を見ていたゼルシードの気配に気付き呼び付ける。
俺が気付かないとでも思ったか、ゼルシード…。何しに来た?
ライオットの事だ。
ルディア、本当に良いのか? あいつ自分の力に頼り切っているぞ…。
このままじゃ皇帝の力添えになる所か、自滅するぞ。本当にスキル渡さなくていいのか?
そんな事で来たのか…。安心しろ!
いくらでも時間はあるんだ。ヒルハイドタワーでもうすぐとある実験が行われるそうだ…
そうだ。ゼルシード、お前あの森で回収した例のモノ、どうなってる!?
その件は大丈夫です。現在ヒルハイドタワーの15階にて
ブルさんが管理しております。多分ですけど、
まだエディール様には気付かれておりません…
いざという時の保険。だと皇帝が言っていました…
まだアレは出番がなさそうですね。ゼルシードさんは持ち場に戻って下さい。
頃合いを見てブルさんの方…お願いしますね!!
****
ビアンラボ1F、通路。
ひっそりと開いている誰もいない給湯室、ロッカールームと移動しながら奥にある館内図を見る。
リリカルラビット、そしてシャウトシグマを持つルドスとその他大勢がいるのは3階。
外見からしたらデカい建物に見えるけど、実際はそこまで無さそう。
ふん。こういうのは大概最上階にいるんだよな…。
階段を直接上って行くのも良いけど、天井ブチ破いて行ってもアリだ…
まあ、親切に目の前に階段があるからな…。
階段を上って行こうとすると、近くにあったトイレから一人の男性スタッフが現れ、止めにはいるが…。
ふぅ…気持ち良かった…って、
だ、誰だ…お前。侵入者か!? ジハイドさんに報告しないと…!!
その前に一つ聞きたい…。
リリカルラビット、何処にいるか知っているか?
大丈夫だ。痛いようにはしないさ…。話次第だけどな!!
見ず知らぬの人に誰が教えるか…。
ここはビアンラボだぞ。どのような立場で言っている!?
もしこの場所に害を成すなら、容赦しませんよ…。それに今ここには
シャウトシグマを持つルドスさんも居るんだ。お前なんか…!!
近くにある植木鉢に生えてあったサンタジアを素手で抜き取る。
サボテンのような植物で、周りには棘が沢山生えている。
棘が手に刺さり流血させたまま、彼の顔を目掛けて殴りつけてしまいスタッフの顔から大量の血が…。
サンタジアって痛いよな…。
ただ、任務を遂行させるならどんな手段を選ばないんだ…。悪いな…
血ッ! だ、誰か止めて…!!
このままじゃ死んじゃうよ…!!!
****
3階にあるモニタールーム。
1階に設置された監視カメラ越しに映る
ライオットの非道さに目を瞑ってしまうスタッフと所長ジハイド。そこには全てのモニターを
一つずつ確認していたクロスの姿も確認できる。
うっ…。なんたる酷さ(むごさ)…!
あんなモノで顔殴り付けるなんて!!
ライオット…、お前どうして…!!
それに額にある刻印…、会ってない数日間何があった!?
あの刻印、まさか…。
ジハイド所長、ライオットさんは操られている可能性があります!
だ、誰にだ…! 教えてくれ…!!
あんなライオットは見たくない。俺達は友達なんだ…
サンタジアで顔を殴りつけるなんて…。
(あの場所だ…。けれどもこの事実を
どのようにジハイド所長に伝えればいいんだ…!!)
****
ブリジスが負ったダメージのせいでスキルのパワーも弱まって行き
上手くコントロール出来ず皆を乗せた星はビアンラボに行く事無く、別の方向に向かってしまう…。
よりによってブリジスさんがこんな事になるなんて…。
ライトさんは骨折、リオルドさんは大量出血…、このままだと…!
ガシャーンとガラスを割る音と共に、皆を乗せた星は何処かの施設に辿り着く…。
しかしながら、悲劇が周りの雰囲気を包み込むように
禍々しい空気を漂わせながらコツコツと足音を立てて
ブリジス達の所に向かい始める。
皆さん、ここを何処だと思っているんですか…?
ヒルハイドタワー…、最上階ですよ。ガラスを割ったら片付けてくれませんかね…。
皆さん…、ここが何処か分かってるんですか?
ヒルハイドタワーの最上階です。突然過ぎてビックリしました…
まだ死んでいなかったのか、ブリジス…。こんな場所にまで来るなんて、良い根性してやがる!!!
行く手間が省けた。
残りの奴、殲滅しよう…。良いですよね、エディール様…
駄目だ…。
修理完了した地下1階の収容施設に連れて行って下さい。
今度はそう簡単には壊れないようになっています…。ブルさん、捕縛の準備を…
ブルのスキル「捕縛」で皆を縛り上げようとすると、
一旦止めるようにとエディールが口を挟み始める。
ちょっと待って下さい…
ジルバさん、貴方はここに居て大丈夫です。
もちろんどういう意味か分かっているよな…。
平然を装っているみたいですけど、居るべき場所はそっちではありませんよ…
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