33話:思い出のファーニブル!グレイザーとユズキの約束!!
文字数 5,154文字
グレイザーは無事に妹であるユズキと久しぶりに再会をして和んでいる中
エディールの期待に応えるように幹部であるノルドイドとディゼールが、ユズキがビアンラボの
スタッフ…要するに彼等からしたら邪魔者な為、殺せと罵る。
必死に抵抗してスキル「枯渇」を繰り出すが、発動出来ない…
今のままでは危ないと判断をしてユズキを連れて逃げ出す。
はぁ…。はぁ…。
お、お兄ちゃん、待ってよー。
もう、いつも走るの速いんだからー!
ユズキの体力の事をきちんと考えないといけないのに…、こんな俺で済まん!!
大丈夫だよー。
お兄ちゃんの一生懸命な姿を見られたしねー。
ちょっと疲れたけど、全然平気だもんー!
もちろんブリジスとキルディー、ジルバの3人が
彼等に立ち向かっているけれども、猛攻を振り切って
いつグレイザーとユズキの二人の元に辿り着いても可笑しくない。
****
シチェード大草原。
ノルドイドとディゼールと対峙しているブリジス達。
地面が抉られていたり、木々が何本か倒れている様子から同等なレベルで戦いが行われている模様。
何故邪魔をする!?
グレイザー様は私達と同じ幹部ですよ…
邪魔をしないで頂きませんか? 妹だって彼の手にすれば楽勝です…。
俺達の計画を邪魔する奴は始末しないといけないんだ…
ブリジス、キルディー、そしてジルバ。
お前等もこれ以上やるなら同罪だぞ…。
グレイザーの妹に対する気持ちを踏み滲むつもりか?
ユズキだって大切な家族なんだ。
女の子なんだぞ! 少しは分かってあげたらどうだ…?
エバスに見捨てられてよくそんな事言えるな…。
知っているぞ。彼が今居る場所は…、ヒルハイドタワーの最上階。
****
ヒルハイドタワー、最上階。
クロスピアから姿を消したエバスは報告をしにエディールの元に向かうが
彼はシチェード大草原に向かっている事をゼロシードとスティードに伝えられ、待っている様子。
報告をしにエディール様の元に来たのはいいけど、御留守ですか…
ただ、まさかクロスピアがシャウトシグマの手によって消滅するなんて奇跡ですね…。
ああ、まったくだ…。
噂には聞いていたけど、本当にシャウトシグマが
善の心を持つ者に力を与えるなんてそんな空想話を俺が信じるとでも思うのか?
エディール様はもうすぐ
計画の最終段階に入るという事、そして
このヒルハイドタワーの中で不穏な空気が流れているのを呟いていた。
もうすぐ俺達の時間が来そうだ…
****
大陸「クロスウッド」は大きく4つの森林地帯で占めている。
東が木漏れ日の森、西がトライアスフォレスト、
南がミナージュフォレスト、北がデュードフォレスト。
今居る場所は西にあるトライアスフォレスト。周りにはビアンラボやシチェール大草原がある。
グレイザーとユズキは彼等の猛攻を振り切る為、必死にその森から上に逃げる。
辿り着いた場所は、グレイザーとユズキが両親と共に
住んでいた町「ファーブニル」。けれども今は廃れていて誰も近寄らない…
ああ…。俺達が住んでいた町だ。
けれどももう姿を留めてないという事は、親父達があの時切羽詰まっていた理由って…!
見てみろ、ユズキ。
あんな近くにヒルハイドタワーが見える…
という事は、この町を襲った影響に少なからず
リリカルラビットが関与している…。
おや、グレイザーさん…
それにユズキさんも。やはりここに来ましたか…
不気味な笑い、不気味な声…
静寂を物語るかのように突如として発生した闇の煙の中からエディールが現れる。
廃れた町に現れた事を意味するかのように、グレイザーとユズキに話し掛ける…
その声は、エディール様…。
まさかとは思うけど、この町が廃れた原因は…
さすが、グレイザーさん…ご名答です。
私達は一度だけリリカルラビットのとある実験を成功しているんですよ…
ただ、そのお陰で私に新たな力が芽生えました。
ここは私達が生まれ育った町なんですー。
リリカルラビットが関係しているなんて、嘘ですよー!
可愛いウサギさん達です。そんな事絶対にないです!!
貴方達の両親にはお世話になった…
確か父の名前が "グラント"、母の名前が "フルシア" でしたよね…。
裏切ったので私が殺しましたけど…。
やはりそうか…
家族を苦しめた気持ちは重いぞ…!!!
****
今から1ヶ月前の出来事…
時間軸で言うとバトルトーナメントオーディションの少し前辺り。
ヒルハイドタワーの最上階でリオルドとボスのエディール、他の研究者達がカプセルに入った
アルム/ユウマ/アル/ユメ、計4匹を使ってとある研究をしていた。
リオルドさん…、貴方のデータ作成力は素晴らしいです…
後はリリカルラビット4匹、ブライドゼータ、そして私の闇の力を調合させるだけです。
もう準備は整っていますよね?
ああ…。エディール様の為に
毎日寝ずに調合させて完成させた。ただ一歩間違えると
ここにあるシステムが誤作動起きてしまう。それを了承して欲しい…。
大丈夫です。失敗したらまた1からやり直しなだけです…
私はリオルドさんがこのクロスウッドで一番信頼出来る研究者だと信じています。
エディール様にそういう風に言って貰えるなんて光栄だ…。
じゃあ、データを注入してアンテナから
発射させて貰う。目標地点は何処にする?
その時、ヒルハイドタワーの最上階に警報が鳴り響く。
形相を変えてやって来た部下がエディールに事態を報告する。
す、すみません…。
グラントさんと、フルシアさんが大事な研究データを持って逃げてしまいました。
まさか逃げるなんて思ってもいなかったので、申し訳ございません。
おい、何してるんだ…。
リオルド…、ちょっと待て。まずは貴方のお仕置きが先ですね。
ようやく計画が成功を迎えようとしていた矢先の出来事だ…、
見過ごすわけにはいかないんですよ。
ああ…。このような部下は切り捨てるべきだ…。
出来損ないの部下さん。研究の邪魔だ、失せろ…。後はエディール様に任せます。
しかとこの目に焼き付けて置きます。貴方の素晴らしいスキルを…
リオルド…、お前の闇の発言吸収させて貰った。
さあ、制裁を始めましょう。もう逃げられないからな…
や、止めてええええええっ!!
い、痛い…。げほっげほっ…。え、エディール様…、も、申し訳ございません…。
部下はエディールの闇の力に圧迫されてもがき苦しむ中、上半身、下半身全てが
黒く染まり、何かに引っ張られるかのように骨も身体もまるごとバラバラになってしまう。
粉々に飛び散った部下の身体のパーツは闇の煙に包まれ消えていく。
その光景を間近に見るリオルド。
さすがです…。ただ、時は待っていてくれません。
グラントとフルシアの二人をどのように罰を下すおつもりですか?
貴方の事だ、もう策は考えてあると思うが…
そうですね…。現在の時刻は20時。
例のシステムを21時に設定しとけ…
リリカルラビットを使った研究成果を彼等に見せ付けてやる。
ファーブニルに行く…
あそこはここから近い。では、リオルドさん後は宜しくお願いします…
****
雪が降る夜、ヒルハイドタワーから割と近い町「ファーブニル」
両親の帰りを待っている中、グレイザーは料理が出来ない為暖炉の前で暖まっていて
ユズキはお兄ちゃん、そして両親の分の夕飯を作っている。
ユズキ、夕飯まだか?
俺、お腹空いた。いつものように味見してやるぞ…。
もー、そう言ってただ早く食べたいだけでしょー。
もう少ししたらお母さんもお父さんも帰って来るんだからそれまで待ってねー。
でも、さっきからお兄ちゃんの腹が鳴っている音
聞いてるからちょっとからかってみたんだよねー。
そうか。俺が料理出来ないばかりに…、済まんな。
今度お前が好きな公園に連れていってやる。約束だ!!
そんな時、荒い息を立てて形相を変えた父グラントと母フルシアの二人が帰って来る。
ただ夕飯ムードじゃないようで、切羽詰まった状態を物語っている。
おかえりー!
お父さん、お母さん、夕飯出来たよー!
一緒にいつものように食べようー。
【グラント】
悪い、ユズキ。ここから逃げるぞ!!
もうここでは暮らせない…。夕飯なんか食べてる時間なんて無いんだ!
えっ!?
せっかく作ったのに…。もうどうしたのー!?
ねえ、お母さん! 何か言ってよー。
【フルシア】
ゴメンね、ユズキ。
お母さんとお父さんね…、裏切っちゃったのよ。
だからここも "あの方" に目を付けられちゃってね…
おい、親父!!
どういう事だ。ユズキがせっかく作ったご飯だぞ。
食べないつもりか? 切羽詰まった状態でもきちんと頂くのが礼儀じゃないのか?
父親のグラントは思わずグレイザーの頬にビンタをしてしまう。
これが家族との最後のやり取り…。
痛てぇじゃねえか…。
親父なんか嫌いだ。顔も見たくない。
こいつ等はもう家族じゃない。親が子供に手を出したらおしまいだ…
俺は料理を食べてくれなかったお前を絶対に許さない。ユズキ、こんな家ともお別れだ。
お兄ちゃん、お母さんもお父さんも事情があるんだよー。
別に食べなくてもいいからさー。
この家を出ようなんて言わないでー。私、この家大好きなんだよー!
おい、ユズキが泣いてるじゃないか…
泣かせやがって! それでも親かよ…。
もういい。俺達はこの家から出る。それでいいんだろ?
泣きながら荷造りをして家を飛び出してしまうグレイザーとユズキ…
それを家の中から見送る両親のグラントとフルシア。
2人はユズキが一生懸命作ったシチューの元に行き、お椀に入れて二人で食べる。
ユズキもこんなモノを作れるようになったのか。
2人には悪いことをしたな…。なあ、フルシア。
グレイザーとユズキには立派に育って欲しいのよ。
少し厳しく言っちゃったかしら。けれども、これでいいんだよね…グラント。
グレイザーとユズキの両親であるグラント・フルシアの元にどこか
寂しそうな音を立て、雪に足跡を残しながらまだ当初は幹部のボスでもない
ヒルハイドタワーの責任者として動いていたエディールがファーブニルにある自宅にやって来た。
ここですか…
こんな場所に住んでいたのですね。グラントさん、そしてフルシアさん…。
私がここに来た理由分かりますよね。早く研究データを返してくれませんか…?
いや、駄目だ…。
この研究データだけはお前に渡すものか。
お前達は間違っている! 何故リリカルラビットを使って悪事を働こうとする?
この大陸「クロスウッド」を支配しようとしている
"あの方" のお手伝いをしているだけです…。
個人的に興味あるのは "闇の力" です。あの方達もこの研究データが持ち出されると
困ると言っていたのでしてね…。もうすぐ時間のようだな…
絶望的で圧倒的な実力を当初から露わにしていたエディールは
家の中にある時計で21時になった事を確かめる。その時、ヒルハイドタワーの先端にあるアンテナから
リオルドが何かのシステムを発動する。その影響で闇を倍増させてしまい
エディールに新たな姿が加わってしまう。
良いですね…。この闇の力…
どんどん膨れ上がって行きます…。
グラントさん、フルシアさん、何か言い残す事はありませんか?
…………!!!
ない!!! 資料を渡すなら死んだ方がマシだ…。
残念です…。
暖かい家庭も、この町にあった様々な思いと共に消えましょう。
ダークネスフィアレス!!!
目を瞑るグラントとフルシア、彼等は幼少期からの2人を振り返る。
些細な事で父親と喧嘩したグレイザー、洋服を買ってと母親と駄々をこねたユズキ。
笑ったり、泣いたりした日々も両親からしたらかけがえのない思い出。それも今日まで…
闇に包まれていくエディールはグレイザーとユズキ、両親である
グラントとフルシアの家を吹き飛ばしながら、周りの家も全て薙ぎ払い、
雪が降る夜1つの町が終わりを迎えた…。
そして両親の姿も無くなり、2人を思いながら死んでしまった。
****
現在、廃れた町「ファーブニル」。
過去の事を話すエディールはグレイザーにもう一度問い始める。
これが真相です…。もちろん私の事憎んでいますよね…?
…………。
お前が憎い。よくもユズキを不幸にしたな…
それと親父達まで殺したとは、絶対にお前を許さない…。
グレイザーさん…、
シャウトシグマを握ったせいで、スキル「枯渇」が出来ない体勢になった。
ここに私が来たもう1つの理由はとある事を告げに来た…
二日間差し上げましたけど、もうキッパリ言わさせて頂きますね…。
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