37話:非情なオルーム!鳴り止まない殲滅衝動!!
文字数 3,805文字
前回のあらすじ
皇帝が潜む城内では、
クロスピアでアージェスが連れ去ったライオットの額に刻印が入ってしまい、
明らかになった暗躍組織「アンドルディシア」の思うがままに動かされてしまう。
時は同じくクオーツリミテッド…。
無事にリオルドと再会出来た喜びも束の間、オルームの裏切りが発覚してスキル「断割」により
リオルドの腹部に攻撃が突き刺さって大量出血…。
と、父さん…! オルーム、お願いだ…。
お前にスキルは使いたくない! 大切な家族じゃないか…。
だから何だ…。どっちにしても
お前を殺す事には変わりはない。だったらお前のスキルで
僕を殺してみなよ…! 家族だから殺せないのか?
生温いな…、その考え。哀れだ…!!
血を流しながら必死にオルームの足を掴むリオルド。
グレイザーとディザールの二人が自宅に来て、彼等に投げ付けた写真立ての中の写真を
見せて何とか思い止まって欲しいと願いを込めながら、弱々しい声を発する。
う、うっ…。お、オルーム…。
この写真覚えてるよな…! お願いだからまたあの頃みたいに笑ってくれないか…。
殲滅はやっちゃいけないんだ…。お前だって分かるだろ!?
オルームは見下すかのようにリオルドが持つ写真に目掛けて攻撃を繰り出し
右手を掠り、写真は真っ二つに割かれて地面へと落ちて行く。
その瞬間、彼との思い出も水の泡となってしまう…。
僕は人から零れ落ちる血が好きなんだ…。
どこまでも滴るリオルドの血か…、悪くない!
所詮僕の相手になる奴じゃないな…。弱すぎるんだよ!!!
許せないぞ、オルーム…。
よくも父さんを傷付けたな!
一度だけじゃなく、二度までも…。お前を意地でも止めてやる!!
殺すんじゃなくて、止める…か。
やはり僕を殺せないんだな…。
その考え…、改め直してやるから覚悟しろ!!
おい、オルーム…。
その衝動的な感情、どこから湧いてくるんだ…。
まさかお前、皇帝に何かやられたのか!?
僕は
アンドルディシアのメンバー…。
選ばれた人間なんだ!
皇帝の為だったら、死んでも任務を遂行させるのが使命…。それに…
僕には失う物など何1つない…!!!一人は逃げ出したけど問題無い…。さあ、殲滅再開だ。
まずは、ライト…お前からだ。
仕方ない…。ブリジスさん、ジルバさん…戦闘の準備だ…!
オルームを意地でも止める!! リオルド、こんな奴見捨てろ…。
お前、家族として付き合っていたのに慈悲もないのか…。最低な奴だな!!!
突然目の前からニヤリとした表情で消え去るオルーム、
その光景はまるで瞬間移動を見ているようで、ブリジス達は危険を察知し始める。
ふん…。何処見てるんだよ!
こっちにいるのが分からないのか…!?
突然目の前から消えるオルーム。誰も見えないような速さでライトの元に駆け寄り、
スキルを使わずにとんでもないパワーを誇るキックで、
屋上へ続く扉がある壁を意図も簡単に壊し、叩きつけてしまう。
崩れた壁の破片がライトの身体に突き刺さり、壁に叩きつけられたダメージと共に畜産されて
もう立てない状況に陥っている。
スキルを持っていても使えないんじゃ、無意味…!! ざまあねえな…。
くっ、オルーム!
と、止まれ!! 俺のスキルでお前を!!!
スキル「断割」でブリジス、キルディー、ジルバ…計3人がいる場所の地面に
下の階が見える程の深い亀裂を入れて足止めしてしまう。
邪魔するな…。聞こえなかったのか?
今からライトの骨折るんだから指銜えて見てろ…。
もう僕の事家族って言えなくしてやる!!!
くっ…。攻撃1つでこんな深い亀裂かよ…!!
つ、強過ぎる…。太刀打ち出来ない…
成す術ないのか…。断割のスキルは厄介だな…!!
リオルドはどうするつもりだ?
何言ってるんだ? 目の前で倒れてるじゃないか。
その時点で僕の視界から除外されるんだ…。
もう話し掛けるな…。ライトの次はお前等だからな!!!
倒れ込んでいるライトの元に嘲笑うかのように迫るオルーム。
彼の首を左手で持ち、さっきからずっと気付かれないように
パワーを込めていた右手を彼の背中に撃ち込む。
痛々しいライトの背中を折る時のボキッと言う音、そして
彼の苦痛がクオーツリミテッドの屋上に無情にも響き渡る。
オラッ! おい、ライト…。
これでも僕を家族と呼べるのか?
まだ言うなら攻撃を続けるだけだ…! オラッ!!
残虐非道の言葉に相応しいオルームは、戦闘不能な彼を更に追い詰め
背中の骨を未だに攻撃し続け、完全にライトを仕留めてしまう。
それでも彼は、あの時のオルームの笑顔を見たいと思い必死に抵抗をし続ける…。
まだくたばってないのか…。
仕方ないな…。お前等物共クオーツリミテッドも木端微塵にしてやる!
いずれはエディール様が壊しに来る予定だったが、良い報告が出来る…。
その前に星で逃げられないように、ブリジスの動きを止めてやる…!!!
彼の非情な目付きがブリジスの動きを完全に止める…。
石のように彼の足は微動だにせず、動きたくても一歩前に踏み出せずにいる。
スキル「星」で解除しようとするが、オルームの方が一歩上。何にも出来ずにただ固まっているだけ…
…………!!
スキルが使えない…。ここまでか…!
キルディー、ジルバ。お前等を救えなくて済まない…。
そ、そんな…。
ブリジスさんの星が唯一ここから出られる方法だったのに…。
スキルが使えなくなるなんて…!!
良いな…、この感じ。
僕を殺したくなったか? どうだ?
悪いけどもう時間だ。お前等はここでリタイアだ…。じゃあな!!
オルームの足元から音を立てて、
クオーツリミテッドの屋上から1階に向けて徐々に皹(ひび)が入り
全くその事を知らない残りのスタッフもその状況に戸惑いを隠せず、彼の思うがままに
崩壊が音も無く始まり、屋上で身動きが取れないブリジス達、大量出血中のリオルド…
骨がもう言う事を聞かないライトはそのまま瓦礫の中に消えて行く…。
崩壊したクオーツリミテッドの周りには砂埃が舞っていて、
重傷を負っているスタッフが横たわっている。
しかしながら、オルームは砂埃の中から無傷で現れて
次の目標を定めようと、シャランアゾールにいる住民を無差別に攻撃し始める。
彼の耳にはもう何も聞こえない。
慌てふためく声、逃げる為に必死になっている声…。
皆の叫び声がオルームにとっては大好物。
目の前で倒れ込んでいる住民に手を差し伸べて、とある事を聞き始める。
なあ? お前、ユズキ知らないか?
しらばっくれても無駄だからな…。僕のこの目を見くびるなよ!!
いや、知らない…!!
お前なんか怖くないんだからな…。そんな目して、どうせ弱いんだろ?
そうか。それがお前の答えか。
僕の攻撃を喰らった事ないくせによくそんな事言えるな!!
だったら、味わさせてやるぜ。僕のスキルを!!!
スキル「断割」のパワーを込めた両手が住民の腹部を貫通する。
目の前で一撃で仕留めて飛び散った男性の血が、オルームの身体に染み付いている。
ハハハ…。気持ち良いな…!!
やっぱり男の血は何処か生温い…。
何処かに女はいないのか? 美しい血も見たいんだよなあ…。
****
その頃、ヒルハイドタワーの最上階にいるエディールは
クオーツリミテッドでの出来事に一早く気付き、ゼルシードを呼び付けてオルームの話をしていた。
ゼルシードさん…、シャランアゾールのクオーツリミテッドで
オルームさんが暴れています。確か彼は暗殺者でしたよね?
そうだ…。皇帝の指示に従っているだけです。
彼に課せられた任務は "殲滅"。貴方達と同じ計画に邪魔する者達を消していく…。
ただ、オルームは自分の実力で成し遂げようとしていた。
そんな事不可能に近いと思った皇帝は、
彼に無理矢理にでもスキルを譲渡しろと言ってきた。そう、俺のスキルは「譲渡」…。
ただそのせいか、彼の一部の記憶が消えてしまった。それは迂闊だった…。
皇帝に貢献する…、素晴らしい事じゃないか…。
それでオルームさんが無くした記憶って何なんだ?
…………。
皇帝の正体、そしてその関係者だ…。
常に皇帝は仮面を付けている。外している時の姿を見た事があるのはオルームだけだ…。
****
場所は戻り、ここは住民が逃げ惑うシャランアゾール。
暗殺者オルームが次々に襲い掛かり、全滅状態。
周辺には大量出血した人の遺体が転がっていて、高笑いを始める。
バカめ…! 僕に敵う奴なんているのか…。
まあ、いい…。さっき殺した奴、ずっと家の前で立ち尽くしていたな…。
中に何かあるって言う事を物語っているじゃないか!! こんな扉ぶっ壊してやる…。
ズッタズタに右手で扉を切り裂き、冷酷な目付きをして中に入ると
そこには物凄く怯えているユズキの姿が…。
ビアンラボ職員、ユズキ…。
皇帝はもちろんエディール様もビアンラボのスタッフは始末する予定だった為、彼からしたら一石二鳥。
世に放たれた暗殺者オルーム。
彼の暗殺劇はまだまだ止まらない…。
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